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"Sky Riser", is tagged with「サイバネティクスウォーズ」「天ヶ瀬冬馬」and others.

「Cybernetics Wars ZERO ~願いを宿す機械の子~」CD発売お...

FIESTA

Sky Riser

FIESTA

8/30/2017 00:08
「Cybernetics Wars ZERO ~願いを宿す機械の子~」CD発売おめでとうございます!ありがとうございます!
少しでも賑やかしになればと思い、7/23のイベントで発行した本を1日限定で全文公開します。(ご購入頂いた方には申し訳ありません。1日だけですのでお許しを……)
ここをご覧でサイバネ&サイバネZEROをご存じない方はいらっしゃらないとは思いますが、もしCDについてはよく知らないという方がいらしたら、ぜひ公式の試聴動画をご覧下さい。
https://youtu.be/teirmWUZPS8

イラスト:FIESTA
ロゴ・装丁デザイン:地獄のデストロイ子さん(twitter/hell_destroy

----以下、イベント当日のペーパーより----
サイバネZEROのイベントストーリー最終盤で、まさかのリクとエンドーの繋がりが発覚したはいいけれど、恐らくめちゃめちゃ重い相談をしてしまうほどの縁とは一体どういうきっかけがあったのか、リクが初めから左上半身に義体部分があるのは何故か、警察であるP.G.Dとこれから設立されるというK.G.Dの組織的な関係は……など、湧き上がる疑問に自分なりに筋道を立てたのがこのお話です。結果としてZEROから前作へのブリッジ的なものに収まりました。
さらに2月に発行した「Beast Protocol Overload」にも繋がるように道夫に登場してもらったりしたのですが、お陰で「S.E.Mがサイバネに出てたら」というBPOのストーリーラインも構想が増えたので、また機会があれば書き上げたいと思っています。
 低重力の中、リクは思い切りステップを蹴って翔んだ。
 はるか高くに設けられたガラスのドームからは、ビル群と遠くかすむ山々の向こうへ落ち始めた光が差し込み、あたり一面をやわらかなオレンジ色に染めている。
 手足を伸ばして体いっぱいに空気の抵抗を集めて落下の速度を調節する。身体を捻ってわざと平衡感覚を狂わせると、自由落下に身を任せた。
 樹脂カーテンに滲んだ視界に広がる夕暮れの空と、各所で渦巻くエアーの音、ドームに反響するチームメイト達の声が、試合形式の練習で昂ぶった心を鎮めてくれる。
 親の仕事の関係で軌道ステーションで五歳までを過ごしていたからか、地上に造り出された低重力環境では満足できない。それでもこのクールダウンが好きで、周囲からは呆れられるほど繰り返してしまう。
「おーい! そろそろコントローラ止めるぞ!」
「うっす!」
 コーチの声に宙を蹴り、姿勢を変えた反動でベンチに向かって緩やかに降下する。ほとんど足音を立てずに着地すると、目の前にタオルが差し出された。
「ありがとな、エンドー」
「相変わらずだな。このドームは設備も景色も最高だし、気持ちは分かる」
「だよな。プロが使ってるとこで練習できるなんて……エンドーはここ、初めてじゃないんだろ?」
「ああ、俺は去年も来てるからな」
「それじゃカフェテリアの旨いメニュー教えてくれよ」
 自分を見上げて顔を輝かせる少年に、エンドーはにやりと笑ってみせた。
「教えてやるから早くシャワー浴びてこい」
「おう! じゃああとで!」
 リクは背中を向けようとして、ぴたりと足を止めた。
「このタオル、エンドーのか?」
「いや、備品だ。クリーニングバスケットに入れとけばいい」
「すげぇなぁ……おっ、それじゃあとでな!」
 まだ重力コントローラの効いている中、低重力下独特の歩様で遠ざかっていく年下のエース候補の背中を見送って、エンドーも自分のバッグを取り上げた。

 エアシュートは義体が普及する以前から行われていた世界的なスポーツだ。プロリーグも人気が高く、競技から離れ、アクロバティックな要素を突き詰めたショーもまた一般的な娯楽として浸透している。
 義体が普及し始めてからは厳密なクラス分けが規定され、リクとエンドーはゼロリーグとも呼ばれる『義体による運動能力補正等なし』のクラスに所属している。もっとも競技人口が多く、クラスごとに個別のリーグとなっているプロでも一番チーム数が多い。
 十年ほど前からは若年層の育成にも力を入れており、住む地域も年齢も違う二人がこうして集っているのは、ジュニア選抜チームの合宿に参加しているためだった。
 この合宿以前から面識はあったが、寝食を共にするのは初めてだ。一日目、訪れたこともない施設で所在なげに立ち尽くしていたリクに声をかけたのはエンドーの方だった。
 試合の時にはすぐに熱くなって相手に真っ向から挑みかかるのをよく目にしていたが、こうやって近しい立場になってみると、純粋さと人懐っこさをもったごく普通のミドルティーンだった。
 ただし、フィールドに出たリクはまったく違う顔を見せる。
 ――――スカイライザー。
 リクやエンドーが生まれる前に引退した伝説的な名プレイヤーの二つ名だが、リクのロングジャンプを見たオールドファンからは、思わずと言った様子でその言葉が囁かれる。
 ただ高く飛ぶだけならリク以上の選手はいくらでもいる。だが、その本領は降下に入ってからだ。自在に姿勢を変え、ディフェンスを躱してはその反動を利用し、あるいは味方のわずかな助力を得てより長く、遠くへ。その時、フィールドは全てがリクのための舞台となる。
 あんな風に翔べたらと誰もが願わずにいられない、天性のプレイヤーだった。


 リクとエンドーが知己を得たのは一年ほど前のことだ。
 エンドーはエアシュートの専用設備を持つ名門校の生徒で、所属するのも学校のクラブだが、高価な設備を持つような学校は少ない。練習試合となると、日帰りできる距離の地域に遠征してそこの地元クラブと行うのが常だった。
 いつも通りの遠征、いつも通りの練習試合。常に低重力フィールドで練習できるクラブと、地域から集まる地元クラブでは試合と呼べるほどの白熱したものにはならない……そのはずだった。
 ウォーミングアップの段階で、監督が腕を組み、黙り込んだまま相手チームの選手たちを見つめている。
「どうしたんスか、監督」
「……八番を見ろ」
 言われるままにフィールドを見ると、まだ子供っぽさを残した少年が膝を抱えてくるりと回転しながらフィールドに降り立つところだった。
 すぐさまフィールドを蹴り、Lのステップに向かって横滑りするように移動する。逸れたように見えたパスを途中で掴むとステップを思い切り蹴って上昇した。
 ――――重心がブレてない。相当慣れてる。
「このあとだ」
 降下中のチームメイトが膝を曲げる。その選手のわずか一メートルほど手前でパスを出すと、正確に相手のニープロテクターを蹴ってジャンプの角度を変えた。一Gの下では見られない放物線を描くロングジャンプ。戻ってきたボールの勢いを利用して体の向きを反転させる。
「……これは……」
 姿勢の制御とスピードのコントロール、ボールや他のチームメイト達の行き先をすべて読み尽くしたような動きに魅入られる。
 いや、読んでいるのではない。考えているのではない。彼にとってはこれが当たり前なのだ。
「随分若い子が先発に入っているからどういうことかと思って見ていたが……あいつには気をつけろ。他は凡庸だ」
 いつの間にか周囲には他のメンバーも集まっていた。そのままマークの配分と作戦の変更点についてのミーティングが始まる。


 試合が始まってみると、相手チームのほとんどは強豪校との対戦ということで固くなっている様子だった。
しかし件の八番はその中を縦横無尽に飛び回って確実にポイントを稼いでおり、なかなか点差が広がらない。
 その時、八番がウォーミングアップで見せたのと同じ動きをした。チームメイトの力を借りてジャンプを伸ばすのはエアシュートではごく当たり前のことだ。しかし、そこにエンドーの一年上にあたる先輩がカットに向かう。
 ラフプレーになり兼ねないが十分に距離はある。しかし、監督が言った通り、もしくはそれ以上に八番以外の選手たちは凡庸だった。
 本来ならばカットを受け流し、姿勢を整えつつ待ち構えねばならないその選手は、対応を誤った。体格のいいディフェンスが自分を狙って落下してくることに恐怖を感じたのかもしれない。
 体勢を崩し、ディフェンスからのカットをもろに体で受け、呻いた。八番もそれに気づいたが、接触を避けられる状態ではない。ボールを離すと体を丸めるようにして、もつれる二人に背中から突っ込んでいった。
 こぼれたボールはエンドーの手元に収まった。今、上空で起こっていることは反則でもなんでもない。こちらは一人多い状態だし、精密なシュートが可能な自分ならば、ここからでもポイントを狙える有利な展開だ。
 だが、試合に集中している自分とは切り離された冷静な部分が、三人の状況を分析していた。
 ――――一人が体当たりを受けて脳震盪をおこしているようだ。あと二人は問題ないが、意識のない身体を引き剥がすのに苦労している。先輩の体重が勝って落下速度が上がっている。そして落下先はステップの集中ゾーン……
 次の瞬間、エンドーは手にしていたボールを上空に向かって力いっぱい投げた。それを追うようにして自分も跳躍する。
 投げたボールは意識なくぐったりしている選手の下腕を弾き、先輩の脚に絡みつくようになっていた腕が外れた。先輩はすぐに身体を離すが、その反動で落下はさらに早まった。
「みんな離れろ!」
 エンドーの叫ぶ声をかき消すように試合中断のブザーが響き渡る。
 突然のことに動けないでいる相手チームの選手たちの位置を把握しながら、落下を続ける二人に肉薄する。
「八番!」
 声をかけると、少年がはっと気がついてエンドーに向かって左の拳を突き出す。その手首を無造作に握ると引き寄せ、もう片方の手でぐったりしている選手の襟首を掴んだ。
「投げてくれ!」
 少年がエンドーの行動を察して叫ぶ。その言葉通り、宙を薙ぐように八番の細い体を振り回し、誰もいない方に向かって手を離すと自分はそのままもう一人の背後に周り、速度を調整しながらステップを避けてそっと着地した。
「担架お願いします!」
 ベンチから一気に人が集まってくる。さっき放り出したはずの八番もすぐにそばに寄ってきた。
「……ありがとな」
 言いづらそうに視線を反らして呟いた少年に笑ってみせる。
「いいんだ。危なかったな」
 脳震盪を起こした選手は他に怪我も見られなかったが、念のため病院へ搬送されることになり、練習試合はそのまま中止となった。
 帰り際、施設の外で真夏の日差しを避けて涼んでいると、少年が駆け寄ってくるのが見えた。
「さっきは本当にすまねぇ。っていうか、試合も中止になっちまって……」
「しょうがないだろ。お前のせいじゃないし気にするなよ。誰かが怪我する方がよほど嫌な気分になるからな」
「そう言ってくれると助かる……俺は、リクだ」
 リクが片手を差し出す。その手を握って自分も名乗ろうとするのをリクは遮って笑った。
「エンドーだろ? 学生シュートのニュースで何回も見てるよ。あんたのすごいシュート、もっと見たかったんだけどな」
 予想外に自分のことを知られているのが面映ゆくて、喉も乾いていないのにミネラルウォーターのボトルを開けた。
「フェアプレイヤー賞とった時のも見たけどさ、今日はそっちの方が見れたから。あんたのそういうところもすごいぜ!」
「……俺の見た感じだけどな、そのうち一緒のチームでやることもあるかもしれない。そうじゃなくても、またやろうな」
「おう! またな!」
 破顔して駆け戻っていくリクの後ろ姿が見えなくなるまで、エンドーは手を上げて見送った。

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