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東芝と東北大学東北メディカル・メガバンク機構は、既設の光ファイバー回線を使って、1カ月以上にわたり平均10.2Mビット/秒の鍵配信速度での量子暗号通信に成功した(ニュースリリース)。両機関によれば、10Mビット/秒を超える速度での量子暗号鍵配信を、実環境で実証したのは世界で初めてだという。
今回、両機関は、共同研究として、東芝および東芝欧州研究所傘下のケンブリッジ研究所が開発した高速量子暗号通信技術を、ゲノム解析データの通信を行うアプリケーションに導入したシステムを開発し、フィールド実証実験を行った(関連記事)。この実験では、東芝ライフサイエンス解析センター(仙台市青葉区南吉成)および東北大学東北メディカル・メガバンク機構(仙台市青葉区星陵町)に量子暗号装置を置き、この間約7kmに敷設された光ファイバー専用回線を介して通信した。また、配信された暗号鍵を管理する仕組みや、連携して動作するデータ暗号処理ソフトウエアなどを開発して組み込み、上記2拠点間でゲノム解析データを量子暗号通信技術によって暗号化し伝送するシステムを構築した。
さらに、上記敷設光ファイバー回線に無線センサーネットワークを取り入れて、年間を通じ温度変化・降雨・積雪・強風・地震などによって生じる敷設光ファイバーの振動等の通信外部環境変動を測定し、量子暗号通信性能との関係性について明らかにした。なお、今回開発した技術や実証内容の詳細は、2018年8月27日~31日に中国上海で開催される国際会議「QCrypt 2018」において発表する。
今後、東芝は引き続き、医療・金融・通信インフラ等の多様なアプリケーション・ユース・ケースでの量子暗号技術の実用化を目指した運用実証等を進めていく。東北大学東北メディカル・メガバンク機構は引き続き、ゲノム情報に基づいた未来型医療の実現に向け、安全・安心なICT技術の活用を推進していくとする。