かごの大錬金術師 作:Menschsein
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「アルベド……。私はお前を……我が子のように愛しているぞ……。もちろん、他のナザリックの者たちも同様にだがな……。『燃え上がる三眼』……つまりスパイがいる……。タブラさんの勘違いであって欲しいと願っていたのだがな……。残念だよ……アルベド」
モモンガは寂しげに、そして悲しげに答えた。実際に、アルベドという我が子のように愛しているアルベドから、明確な意志を持って攻撃をされた。自分が
「『傾城傾国』が効いていない……。
『傾城傾国』は確かに発動した。だが、モモンガ様は自分だけを愛してくれていない。そして、モモンガ様が装備していた
「ま、まさか……」とアルベドは思い当たる。タブラ・スマラグディナの両手で持っている赤い玉。
「そのまさかだよ、アルベド。シャルティアには伝えたのだが、お前にはまだ教えていなかったな……。戦いにおいて重要なのは、虚偽の情報をどれだけ相手に上手くつかませるかだ。たとえば、いつも私が肋骨の下に大切そうに装備しているこの赤い玉が、さぞも貴重なアイテムであろうかのようにな。だが……頭の良いお前なら分かるだろ? 唯でさえ貴重な
期待していた言葉ではない。自分はただ、『アルベド、お前だけを愛している』と言って欲しかった。だが、アルベドは頭を回転させる。
「その赤い玉は
「その通りだ、アルベド。それに私はこれが
「あの……モモンガさん……。申し訳ありませんが、アルベドの初手を防げたというのは嬉しいことですが、私たちが不利な状況は変わっていません。不意打ちを防いでも、こっからアルベドが実力で来られたら私たちでは勝てないです。それに、ぷにっと萌えさんから仕込まれたことを、自慢げに語っている場合ではないですよ」とタブラ・スマラグディナは冷静に突っ込みを入れる。
これは、奇襲を防いだだけ。モモンガには次の行動に移って貰わねばならない。
「す、すみません」とモモンガは謝罪する。
モモンガからしたら、これらは自分の得意分野だ。それを説明するのは非常に気持ちが良い。
「そ……その通りです。まだ私が有利です。モモンガ様から
「え? 本当ですか?」とモモンガはアルベドの言葉を聞いて驚く。
「その通り血が代価です……ですが、モモンガさん! いつもたっちさんが言っていたでしょう? ”アインズ・ウール・ゴウンに敗北はない”のです! さぁ、モモンガさんは早く『山河社稷図』の中へ。アルベドが『傾城傾国』を装備している。アルベドが単独犯であることは確定です。ナザリックの者たちは『山河社稷図』の中で健在なはずです! ナザリック全てでアルベドと戦えば勝算はあります!」
アルベドが単独犯であれば、『山河社稷図』の中にナザリックの者たちは健在。タブラはそう考えていた。モモンガが『山河社稷図』の中に逃げ込み、全員でアルベドを倒す。
アルベドがモモンガを追って『山河社稷図』の中に行かなかったとしても、『山河社稷図』には必ず脱出方法が設定されているはずだ。それさえ見つければ、絵画の外へと出れる。実は、そちらの方が勝算が高い。なぜなら、ナザリックの玉座の間で戦えば、ナザリックの資金が尽きるまで、守護者たちなどを復活できる。総力戦を展開できる。より勝算が高くなる。
「タブラさん……」
モモンガは口を開いた。
「それって、タブラさんを見捨てて逃げろってことじゃないですか……。タブラさんは
「え? モモンガさん?」
アルベドの裏切り。それはタブラの想定内であった。だが、モモンガの反応は、タブラにとって予想外であった。