かごの大錬金術師 作:Menschsein
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「ここには誰もいない?」と、
「まぁ、ここはギルメンのホームポイントで、アインズ・ウール・ゴウンにとっては重要な場所ではありますが、ログインがない世界では、敵にとってはここを守る意味はないでしょうからね。ホーム・ポイントを占拠して、ログインしてくるプレイヤーを片っ端からハメ殺しにするのは美味しいのですがね。まぁ、待ち構えているとすれば、やはり玉座の間でしょう。なんといっても、玉座の間にはマスター・ソースがありますからね」
「そうですね」
「一ヶ月……。至高の御方がたが座られる椅子と机に埃が……。タブラ様、モモンガ様。大変申し訳ございません。管理の不届きの責任は、すべて私にございます」とアルベドは悲痛な面持ちで、
一ヶ月の間、一般メイドなども無く、まったく掃除されていない
「アルベド……気にするな。全部が終わったら、また掃除すれば良い」
「モモンガ様。寛大なお心に感謝を致します」
「さて……」とそのモモンガとアルベドの会話を複雑そうな顔をして見つめていたタブラは口を開く。
「ここは恐らく、『山河社稷図』の効果範囲内でしょう」
「えぇ。
「私も感じます。世界が二重写しになっているような感覚です」と、二人が答える。
「想定通りですね。では、これから私とアルベドが『山河社稷図』の中に乗り込みます。モモンガさんはここで待機していてください。万が一、敵が襲ってきた場合は、全力で逃げてくださいよ?」
「ですが……やはり私が行くべきでは?」
「モモンガさん。それは愚策です。モモンガさんが
なんて自分で言っていますが、敵はアルベドだけですね。『山河社稷図』の中には、閉じ込められたナザリックの者たちがいるだけでしょう。『山河社稷図』の中に敵がいるということ事態も、アルベドのフェイクです。虚偽の情報によって、『山河社稷図』の中に敵がいるかのように私たちに誤認をさせている。
「ですが……そんな捨て石にするような真似……。そうだ、コイン——」
「——モモンガさん。コイン・トスで決めるべきことではありません」
「わ、分かりました」
「では、モモンガさん……。しばらくの間、モモンガ玉をお借りしてよろしいですか? それがないと、私が『山河社稷図』の中に入れませんので……」
アルベドの目的は、モモンガさんを支配すること。その方法は、『傾城傾国』による洗脳。ですが、その障害となるのが、モモンガさんが装備している
モモンガさん、気付いていますよね? 大丈夫ですよね? 「燃え上がる三眼」という大ヒントで気付いてくれましたよね?
「も、もちろんですよ。私が持っていてよいというだけで、これは私のというより、アインズ・ウール・ゴウンのですからね」とモモンガは、肋骨の下に埋まっている赤い玉を取り出す。
その姿は、自らの魂を取り出しているように見える。
「ありがとうございます……モモンガさん……」とタブラは安堵しながらモモンガに礼を言った。
そして……タブラがモモンガから受け取った赤い玉を装備しようとしている時、
その笑い声は、アルベドのものであった。
「アルベド? 何を笑っているのですか? 淑女とは言えないような笑い方ですが?」とタブラは言う。
「いえ……タブラ様……いえ、私を捨てたタブラ・スマラグディナ! そして、私の愛するモモンガ様……。私の勝ちです!」
そうアルベドが言い放った次の瞬間、アルベドの装備は、チャイナ・ドレスへと変わっていた。
普段の白を基調とした服であるということは変わらない。
だが、普段の豊満な胸を強調するような胸元の開いたドレスではなく、詰め襟のある服へと変わっている。
腰から下も、フリルの付いた白い服から、横裾に切り込みがはいった、艶めかしい足が露出した服へと変わっている。
アルベドは、『傾城傾国』を装備していた。秘密裏にスレイン法国へと行き、法国から奪ってきた『傾城傾国』……。
「傾城傾国の我は願う。『在天願作比翼鳥、在地願為連理枝』 。モモンガ様。貴方の全て頂戴。唯愛し愛されていたいの」
『傾城傾国』は白色に輝き、そしてその光はモモンガに向けて放たれ、モモンガを包む。
「アルベド……何故だぁ……」
「モモンガ様……あなたは仰いました。『私のことも愛している』と……。『ナザリックの者達を愛している』と。ですが、『
円卓の間一杯に広がった白い光は、やがて治まる。
「さあ、モモンガ様。私だけを愛していると仰ってください。私も貴方だけを愛しています」
「アルベド……。私はお前を……」
GW終わった……