かごの大錬金術師 作:Menschsein
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「いやぁ〜。タブラさんもこの世界に来ているなんて嬉しいなぁ」
「『未来のことは、誰にも分からない。だからこそ、この再会が意味するように、無限の可能性があるんだ。これが……シュタインズゲートの選択なのですよ』、ってまぁ、現実世界で死んでしまったということなので、喜んで良いのか分かりませんがね……」
「え? 亡くなった?」
「アーコロジー間の戦争で。モモンガさんは違うのですか?」
「私は、ユグドラシルのサービス終了日にログインをしたまま、この世界に来て……。ログアウトも出来ない状況のままです」
「オンラインゲームで、ログアウト不可能ですか。なんだか、百年前の日本のライトノベルの設定みたいな話ですね。計画の背後にいるのは、
「え? 誰です? その
「モモンガさん、古典文学に触れておくことは教養を深めるために大事なことですよ? まぁ……それ仮説に過ぎませんが、そうなると私も生きているかもしれませんね。私が死ぬ直前、私は地下資源採掘用ロボットを
「ですが、今はタブラさんとまたお会いできて嬉しいですよ。正直、もう会えないかと思っていました」
「いやいや、ちゃんと私は『I will be back!』って言ったじゃないですか」
「そういえばそんなことを言われていましたが、それって何か元ネタがあるのですか?」
「なんと! モモンガさんはターミネーターを知らなかった。それにも関わらず私は、『I will be back!』なんてサムズ・アップしながら言っていた! なんということだ! 『認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを』……。いいですか、2029年にスカイネットという人工知能が人類に反乱を起こし、人類と機械との壮絶な戦争が起こるのですよ。しかし、人間側の指導者、ジョン・コナ—の活躍により、スカイネット側は敗北する。しかし、スカイネットは諦めない。過去にロボット、つまりターミネーターをタイムトリップさせ、過去のジョン・コナ—を殺害し、歴史を変えようとするのです……最近では、2029年にターミネーターの時代を記念して、『ターミネーター8』が封切りされたのですが、見ていなかったのですか?」
「あっ、ずっと空いている時間はユグドラシルをやっていたので……」
「そうでしたね。では、あらすじを『ターミネーター』から順に話していきましょう……幸い、『ターミネーター』シリーズは時系列となっているので、話しやすいです」
「あの…………。タブラ様……それにモモンガ様、旧交を温められることも大事かと思いますが……今は……」とアインズの後ろに黙って控えていたアルベドが言う。
「タブラさん、実は……ギルド長として恥ずかしいのですが……ナザリックが敵に奪われてしまいました……」
「まず、T−800をスカイネット側が送り、人類側はカイル・リースという人間を過去へと送るのです。実は、このカイル・リースという人物はですね……なんと驚くべきことにジョン・コナ—の……って? ナザリックが敵に奪われた? プレイヤー1500人でも陥落しなかったナザリックが? 私の想定よりもこの世界に来ているプレイヤーは多いということでしょうか? そいういえば、シャルティアが洗脳され、モモンガさんが一騎打ちで戦うと……? 無事だったのですか?」
「それはなんとか勝てました……。ですが……恐らく同じ勢力だとは思うのですが、どれくらいの戦力を保持しているのか目下不明です。判明しているのは、敵側は某かの
「モモンガさん……。『あきらめたらそこで試合終了』ですよ? 奪われたものは奪い返す。シャルティアを洗脳した人物と同じならば、『傾城傾国』を所持している可能性が高い。強敵です。ですが、モモンガさん、『負けたことがあるというのが、いつか大きな財産になる』んです。それに、『先生は今、失敗したんじゃありません』……」
「先生? タ、タブラさん……?」
「『経験を積んだんです』」
「……そ、そうですね。タブラさん……ありがとうございます」
「『はい。では授業の続きをお願いします』」
「じゅ、授業ですか?」
「いえ、なんでもないです……。『無職転生』は、ネットで無料で読めるので、お薦めです」
「えっと? タブラさん?」
「今後の作戦を練りましょう。まずは、こちらの戦力の確認をするべきでしょう」
「それは私からご説明させていただきます」とアルベドが口を開いた。
「現在、ナザリックが保有している戦力は……カルネ村に貸し出している、ドワーフたちのルーン研究を警護している
「そ、それだけで
「『ヒュギエイアの杯』と『幾億の刃』はデミウルゴスとコキュートスに所持させていました。ですが、今は『山河社稷図』の中へといるようです……」とモモンガが力なく答える。
「最悪、奪われているかもしれないと?」
「はい……」とモモンガとアルベドが同時に答える。
「どうやら……この世界線を越えるのは、容易ではないですね……ですが、希望はあります」