かごの大錬金術師 作:Menschsein
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「アインズ様、大変申し訳ございません」
王都リ・エスティーゼにある孤児院。その一室で、タブラ・スマラグディナの出現を今か今かと待っていたアインズの元に、アルベドが駆け込んできた。
「ど、どうしたのだアルベド? そ、それに顔などが泥で汚れているじゃないか? お前らしくもない」とアインズは、
「無能な私にそのような御慈悲を……」
「どうしたのだ? 私はお前を信頼しているし、有能だとも思っている。自分を卑下することなど無いぞ」
「いえ……。私は守護者統括失格です……。ナザリックが……敵の手に墜ちました……」
「は?」
「申し訳ございません。どうか私に自害をお命じください……」
「な、ナザリックが墜ちただと? そんな馬鹿な……第1階層から第3階層までをシャルティアが守って……いや……フロスト・ドラゴンを使っての空輸網を構築する任務を与えていたな……。第四階層……ガルガンチュアは起動させていないから素通りされたか……だが、地下第五階層に……いや……コキュートスはリザードマンの村にいるのであったな……。だが、第六階層には、アウラとマーレが守護しているはずだ。まさか……2人が?」
「2人は敵の手によって……そして、『山河社稷図』も『強欲と無欲』も敵に奪われました」とアルベドが悲痛な顔をしている。
「く、くそがぁぁぁぁ! 直ぐに守護者を集めるぞ! ナザリックの奪還だ!」とアインズは怒りで我を忘れ、孤児院の床を蹴り、孤児院の木造の床に大穴が空いた。
「そっ……それが……」
「す、すまない。ど、どうしたのだ?」
精神が抑制され、冷静になったアインズはアルベドに報告の続きを促す。
「ナザリックが襲撃されたとの報を聞き、駆けつけた者達は『山河社稷図』の中へ……。ナザリックにいた者たちも全て、取り込まれてしまいました……」
「それはあり得ない。コキュートスやデミウルゴスには
「それが……ナザリックを襲った者達と戦うために、自ら『山河社稷図』の中へ……。私だけアインズ様にこのことをご報告するために逃げ延びてきたという次第でございます。申し訳ありません……。私だけ逃げてきたのです。守護者統括という地位にありながら……。アインズ様……私に罰を……」
「いや、アルベド……よくぞ知らせてくれた。よし、ナザリックへ救援に向かうぞ!」
「お待ちください! 危険でございます! 敵の戦力も今だ不明でございます。敵も、いくつか
「
アインズは、部屋の中をグルグルと回りながら、独り言のようなものを呟く。
「恐れながらアインズ様……」
「ん? どうしたアルベド。何か良い考えがあるのか?」
「私を創造したタブラ・スマラグディナ様なら、アインズ様に良いアドバイスをしていただけるのではないでしょうか……」
「そうだな。だが、このカシェバか。いつ、タブラ・スマラグディナが現れるのだ?」
「恐れながら……私も存じ上げません。ですが、ラナーが一度、そして私も一度会っておりますので、再びまたタブラ・スマラグディナ様が現れてくださる可能性は高いものと思います」
「待つしかないということか……。だが、下手に手を打っても、それが命取りとなる場合があるしな……。守護者たちは復活をさせれば良いし……奪われた
「アインズ様……。たとえナザリックが無くとも、私が愛するのは、アインズ・ウール・ゴウン……いえ……モモンガ様だけでございます。最後までモモンガ様に付き従います」
「ありがとうアルベド……。この状況……お前だけでもいてくれて良かった。そう心の底から思うよ……」
「こ、光栄なお言葉です。では、タブラ・スマラグディナ様が現れるまで、この場所でお過ごしになるということですね。