このお方をまだ紹介してなかったようだ。
あれれ?結構引用してたのに・・・。
僕は指揮者に例えると、チェリビダッケだろう。
本当は朝比奈御大になりたいし、本質的には御大の方が似ていると思うが。
とにかく口が悪かった。
他の指揮者の悪口を言いまくり。
「帝王」カラヤンを「コカ・コーラみたいに世界中で売れて良かったね!」とか、「オーストリア音楽監督」ベームを「麻袋野郎!」とか、もう言いたい放題。
ほとんど褒めることがなかった。
唯一尊敬の念を絶やさなかったのは、フルトヴェングラー。
彼は純粋だったのだと思う。純粋すぎて、お世辞のようなことは一切言えなかったのだろう。
終戦直後の厳しい状況にあったベルリン・フィルを若くして率いて、フルトヴェングラーを献身的に助け、彼の帰りを幾久しく待っていたのに、独善的(?)な振る舞いからオケの裏切りに遭い、ベルリンを追放された。
そりゃ捻くれるよ、当然。
この動画にもある通り、「なんでそんなにキツいビブラートなんだ?それがベルリン・フィルってか?」という強烈な皮肉は、このオケの歴史を知っている人間だからこそ言えるのだろう。
その代わり自分の美学を貫き、独自の境地を切り拓いた。
僕は必ずしも彼の音楽を好きではないが、その信念にはただならぬシンパシーを感じる。
特にこの動画の後の、ベルリン・フィルとの復帰演奏会は、唯一無二の感動的な演奏だ。
オケがちょくちょく「仕返し」しているのか、チェリの表情もたびたび「チクショウ・・・」と歪むのだが、その丁々発止のやりとりが見事な音響空間を形成している。
「政治」ではなく「表現」で闘うって、いいね。
クラシック音楽も、こんな瞬間はますます減っているだろう。
もう一度となるはずだが、彼の名言を記しておこう。
「音楽は美しくなければ」という考えは、とうの昔に捨てた。
確かに芸術は美しい。しかし美は最終目的ではない。
それは言わば、「撒き餌」のようなものだ。
美によって惹きつけられ、シラーが述べているように、美の後ろに真実があることを知るのだ。
真実とは何か?
それは定義しうるものではなく、体験するものだ。