かごの大錬金術師 作:Menschsein
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王都リ・エスティーゼ。孤児院の一室。
「タブラさんですか?」
「……いえ、カシェバです」
「そうですか……」
何度目のやり取りであろうか。カシェバは、困惑していた。見るからに豪華な服装を纏ったアンデット。ただのリッチではない。というか、機嫌を少しでも害してしまったら、殺されてしまいそうだ……。
一緒の部屋に四六時中いるというのは、精神的に疲弊してしまう。
「あの……アインズ・ウール・ゴウン様?」
「どうした?」
「本当に俺の中にその……タブラ様という方がいるのですか?」
「……。恐らく間違いないだろう。これを見てみろ」と、アインズは何も無いところからポーションを取り出した。そして、その赤い色のポーションと、そしてその液体が入っているガラス瓶には見覚えがあった。
「そのアイテムは……」
「そうだ。お前の部屋に突然置いて合ったポーションだ。そして、このガラス瓶は、ドワーフたちでも造り出すことができない。そして、何より、このユグドラシルの金貨だ」
ポーションと同じく、カシェバには見覚えがあった。同じく机におかれていた金貨だ。
「これは、ユグドラシル金貨と言って、純度も高く、今の王国や帝国で流通されているものとは違う。それに、劣化しないポーションの製造はこの世界では失われている……。その意味が分かるか?」
「わ、わかりません……」
「そのポーションと金貨を持っていた人物は、”プレイヤー”の可能性が高いということだ。そして、アルベドが、タブラさんであると認めた。パンドラズ・アクターが化けてもそれが偽物であると分かるほどだ。ほぼ間違いないだろう……いや、そうであってくれと俺も思っているんだ……」
生物全てを殺し尽くしてしまいそうな外見のアインズ様が深く項垂れていた。よほどこのアインズ様にとって、タブラ・スマラグディナという人物は、大切な存在であろうのだろう。
「お、お仕事などはよろしいのですか?」
四六時中、一緒にいられると自分の気が休まらないというのが、カシェバの本音であった。
「タブラさんの方が大事に決まっている!」
アインズがその言葉を発した瞬間、背筋が凍りつくようであった。また気絶してしまいそうだった。
「ど……どのような方であったのですか?」
「今の俺があるのは、みんなのおかげだ。俺がユグドラシルを止めようと思っていたときだ。タブラさんや、たっちさんが助けてくれたんだ。そして、俺を仲閒へと誘ってくれたんだ……。それからの日々は、夢のような日々だった。楽しかった……」
カシェバは、アインズが語る昔話……というか、ほとんどドラゴンを狩ったり、レイド・ボスという名の伝説の魔物と戦うなど、神話の中の出来事としか思えないことを、アインズは語り始める。尽きることのない長い話だ。
それを、ただ、カシェバは黙って聞くことしか出来なかった。
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アインズがカシェバに対して
ナザリックの王座の間の前では、殺気だった者たちが集っていた。コキュートスは、己が持つ武器の全てを研ぎ澄ましていた。
セバスは、執事の格好ではなく、形態変化させ、いつでも戦える状態となっている。
パンドラズ・アクターは彼には珍しく無言であった。
シャルティアは、鮮血の乙女という名が相応しい程、完全武装だ。スポイトランスで、アインズ様を害した者のHPを全て吸いきる覚悟だ。
アウラは選抜したペットたちを王座の間に連れてきて、「アインズ様を殺した奴らと差し違えてでも……いや……死んでもその喉笛を咬みきるんだよ?」と言いながらそのペットたちの頭を撫でている。
マーレは、シャドウ・オブ・ユグドラシルを使って熱心に素振りをしている。
プレアディスの面々は、ハンカチで涙を拭いている。シズは、目から油が漏れているようだ。
ヴィクティムだけでなく、普段は溶岩の川の中に潜んでいる紅蓮も王座の間にいた。桜花聖域の領域守護者も王座の間に集っていた。
その姿を見るのが初めての者も多かった。だが、そんなことで動じるものはいなかった。このナザリックの絶対支配者、アインズ・ウール・ゴウンが死んだ……。それ以上に動揺することなどない。
空白の玉座の間の横に立っているアルベド。喪服姿であった。
全員が急ぎ集ったのを見て、言葉を紡ぐ。
「状況は、伝えた通りです。今から、アインズ様の仇を討ち、そして、シャルティアのようにアインズ様を復活させます……。ですがそのまえに、全員、