メートル法
メートルほう
metric system
長さにメートル,質量にキログラムを基本の単位とした十進法の計量単位系。現在は国際単位系SIにより代表されている。 18世紀のヨーロッパでは古代ローマから伝わった複雑な度量衡法が用いられ,しかも各国,各都市ごとに単位の大きさや名称が違い,非常に混乱していた。そこでフランス革命初期に成立した国民議会は 1790年「自然の標準に準拠し,永遠に世界で用いられる新単位系」の創造への着手を宣言した。この仕事を委託された科学アカデミーは十進法の採用と,地球の子午線の長さと水の密度を自然の標準にとることを決め,7年の歳月を費やしてバルセロナからダンケルクまで南北直線で約 1100kmを精密測量し,両地点の緯度の決定と測地基線の長さの測定を完了した。これに基づいて,パリを通る子午線の1象限の 1000万分の1の長さを 1m,最大密度の水 1cm3の質量を 1gとする新単位が決定され,99年に白金製の最初のメートル原器とキログラム原器が完成した。なお時間の単位は天文学者の慣習に従って平均太陽日の 1/24×60×60 を1秒として採用した。精密な原器を基盤としたメートル法は欧米の学界や一般社会へ次第に普及し,その国際化の高まりのなかで 1870年と 72年に科学者による「国際メートル会議」が開かれ,75年「メートル条約」が 17ヵ国の間で成立した。科学者会議の決定に基づいて作製された白金-イリジウム合金製の新しい国際原器が完成し,加盟国に配布される各国原器の準備が完了,99年に第1回国際度量衡総会が開催されて,国際メートル法が誕生した。日本は 86年にメートル条約に加盟しており,この総会で原器の配布を受けた。メートル法に対し初期は力学量の単位の国際統一におもな努力がなされたが,その後は電気量を含むMKSA単位系の確立,さらに温度,光度,物質量を基本単位に加えてほとんどすべての物理量を包括する国際単位系 SIへと発展した。なお日本の計量法がメートル法専用となったのは 1959年である。
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メートル法
メートル条約(1875年)により発効した国際的な度量衡制度。メトリック・システム、メートル制ともいう。加盟国数は当初17だったが、現在は51。日本は1885年にこの条約に加盟し、この制度を「メートル法」と称して普及に努め、1966年に公的用途での完全メートル法化を達成。メートル法設立の考えは、フランス革命直後の国民議会(1790年)におけるタレーランの提案に端を発する。科学技術面では、まず1889年に各国に配布されたメートル原器とキログラム原器によって幾何学量、力学量の標準が統一され、20世紀に入って電気、温度、光、放射線などの諸量の標準が加わり、精度向上のための改良が加えられた。今ではこれらを総合した国際単位系(SI)という形で国際的に普及している。
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メートルほう【メートル法 metric system】
度量衡の単位の世界的,永世的な統一を目標に,1795年にフランスで制定された十進法による度量衡単位系およびそこから発展した計量単位系の総称。フランスにおける制定の際,長さの単位をメートルmètreと呼び,単位系全体の基礎としたためこの名がある。 フランス革命以前のフランスの度量衡単位系はそれに含まれる多くの単位が古代ローマ時代に由来し,ヤード・ポンド法の単位とよく似た単位であって,それ自体複雑な体系であるうえに,度量衡の制定権を地域の封建領主が握っていたため,錯雑をきわめていた。
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メートルほう【メートル法】
メートルを基本単位の一つとし、十進法を用いた国際的な単位系。1795年、フランスで度量衡単位系として制定。のち、計量一般の単位系に発展し、その現代型である国際単位系( SI )では基本単位として、長さにメートル、質量にキログラム、時間に秒、熱力学温度にケルビン、物質量にモル、光度にカンデラを採用。
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世界大百科事典内のメートル法の言及
【単位】より
…時代は18世紀の末に近づいていた。
[メートル法の成立と普及]
18世紀末の時代の特徴は,自由,平等,博愛の理念やフランス革命の動向の中にのみみられるものではなく,イギリスからヨーロッパ大陸へ波及した産業革命の推移,それと並行する資本主義経済の成熟と広域化などとの関連においてもとらえられなければならないが,より具体的にみれば,交通(とくに航海)や通信の技術と運用制度の高度化が開始されて,多数の人の移動,大量の物資の輸送と交易,そして多彩な情報の交流が可能になった点などにも,この時代の特色を認めることができるであろう。地域,職域を超えた単位の統一という発想は,まさしくこれらの特色に呼応して顕現してきたのであるが,その実行にあたって,特定の先進国の利益に通ずる要素がきびしく排除され一挙に全地球的な構想がたてられたのは,史上まれな快挙であったと評してよい。…
【度量衡】より
…中国の伝統を受けついだ日本の史上の度量衡(尺貫法と呼ばれた)においても,十進法が優位を示していた。 十進法による度量衡の体系が全世界的な規模で論議され始めたのは,18世紀末のメートル法創始期になってからのことである。その理念は,現代の国際単位系(SI)普及という企ての中に結実しつつあるが,度量衡の体系を十進法に整合させるというこの全世界的な事業は,中国での史上の成功とは対照的に,今日なお貫徹されているとはいえない。…
【升∥枡】より
…一方,政府は85年メートル条約に加入した。以来,国の近代化のため,枡以下の度量衡器を支えてきた尺貫法に替わり,メートル法を採用する努力を重ねてきた。その間幾多の困難はあったが,ついに1959年1月1日を期してメートル法の完全実施を断行した。…
※「メートル法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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