ボイスブック大手でAmazon.com傘下のAudible(オーディブル)は8月28日、日本市場で同社のサービス体系を、ダウンロード販売型と新会員制度へ移行したと発表した。
このアップデートに伴い、日本から購入できるボイスブックは38カ国語22万タイトル以上に拡大。うち1万3000点以上は日本語コンテンツで、堀江貴文の『多動力』(声・片山公輔)といったビジネス書、新海誠の『君の名は』(声・朴路美)などの小説が追加されている。
“聴き放題制”からグローバル準拠の“コイン制”へ
同サービスは2015年7月の日本市場参入から2018年8月27日までの間は、月額1500円の会員制をとっており、ユーザーは加入していれば公開されているボイスブックを聴き放題で楽しめた。
一方、これまでは非会員によるボイスブックの単体購入は不可能だったが、8月28日のアップデートにより、ボイスブックの購入・鑑賞だけであれば、月額料金を払う必要はなくなった。
また、同社は会員制度も刷新する。新制度は旧制度と同額の月額1500円を払い続ければ、毎月1コインずつ付与される「コイン制」を採用。1コイン=オーディオブック1点に相当し、作品1点あたりの価格を問わず交換できる。コインで交換したデータは解約後も聴き続けることができ、購入後365日以内であれば返品も可能だ。
「Audible Station」は短い時間の作品が随時更新されていく。「通勤時やスキマ時間でコンパクトに聴きたい」という要望に答える物だ。
さらに、海外ニュースや落語といったショートコンテンツの聴き放題サービス「Audible Station」や単体購入時30%オフの価格優遇、年中無休のコンシェルジュサービスなど会員向け特典が提供される。
なお、これらの仕組みはアメリカやイギリスなどのグローバル市場と同等の仕組み。サービス開始から3年間が経過して、ようやく日本市場の仕組みも海外と足並みが揃った格好だ。
2019年度のマーケティング予算は2018年度の3倍
同社の現在のアクティブユーザー数は非開示となっているが、日本事業を統括する逢阪志麻氏は「参入当初は“ボイスブックとはそもそも何か”というような状態だったが、ユーザー数は年々堅調に伸びている」と話す。今回のグローバル準拠のサービス体系へ移行するきっかけも、「日本での成長にある程度、手応えを感じているから」ということだ。
実際、同社は日本に対する期待感をあらわにしている。同社本部広報は日本市場への投資規模について「2019年度の日本におけるマーケティング予算は2018年度の3倍にする計画。今後4年間は引き続き、投資を増やしていく予定」と答えている。
現在の日本におけるコアなオーディブルユーザーの年齢層は、20代〜40代。日本市場ではとくにビジネス、自己啓発といったジャンルに加え、ネイティブな英語で収録された作品が人気を集めている。逢阪氏は今後狙うターゲットについて「性別・年齢を問わず幅広い層にアプローチしたい」と話している。
日本は近年、アマゾンやグーグル、LINEといったプレイヤーによって、スマートスピーカー市場の存在感が増してきている。当然これらの製品と「聴いて読める」というボイスブックの相性は非常に高い(アメリカではすでにアマゾンの「Echoシリーズ」でオーディブルが聴ける)。
スマートスピーカーが徐々に日本のリビングを攻略しているように、ボイスブックの新しい読書体験は今後、スキルアップに積極的な日本のビジネスパーソンやイノベーターにとって当たり前の存在になっていくかもしれない。
(文、撮影・小林優多郎)