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「江戸名所図屏風」と都市の華やぎ

開催期間 2018年7月28日(土)~9月9日(日)
月曜休館

展示概要

古来、交通の要所であったとはいえ地方都市のひとつにすぎなかった江戸は、徳川家康(1543 - 1616)の移封と開府をきっかけに、目まぐるしい発展をとげてゆきました。勢いを増す都市の景気は、絵画制作のかっこうの動機となったとみえ、その活況をとらえるいくつかの絵画が今日に伝わっています。
江戸の全容を眺めわたした絵画のうち、当館の「江戸名所図屏風」は、明暦3年(1657)の大火以前の城下をとらえた作例として、つとに知られます。画面のいたるところに描き込まれた人物たちは、さまざまな労働にいそしみ、あるいはにぎやかな歓楽街に集うなど、日々の生活を目いっぱいに謳歌しているかのようです。そのきわめて豊かで生き生きとした表現は、屏風の完成からおよそ350年を経たいまなお、鑑賞者の目を楽しませ、また人物とともに配された建造物や自然景観は、現代の東京に暮らす人たちにも身近な共感を呼び起こします。この屏風をめぐっては、近年、注文者や制作の契機について活発な議論が繰り広げられるようになり、平成27年(2015)に国の重要文化財の指定を受けました。
本展では、「江戸名所図屏風」のほか、江戸の町を題材にした絵画の数々をとおして、画面にみなぎる新興都市の活気をご覧いただくとともに、京都の姿をとらえた絵画(洛中洛外図)に替わる新たな都市景観図の成立と展開、絵画史的な意義や絵画そのものの魅力に迫ります。

江戸名所図屏風展 出光美術館

本展のみどころ

01「江戸名所図屏風」の謎解きに挑戦!

「江戸名所図屏風」(重要文化財)は、いつ頃の江戸を描いているのか、そして誰のために描かれたのか。本展では、最新の学説をわかりやすく紹介するとともに、それらを検証し、あらためてこの作品の意義や絵画としての魅力に迫ります。

02江戸の景色は、川の流れとともに

左右あわせて10メートルにも迫る長大な画面に、隅田川沿いに享楽的な情景を濃厚に描き出す「江戸名所図屏風」。この屏風絵が数十年のちに誕生する浮世絵の世界を先取りしていることを、きっと会場で発見することでしょう。

03京都の都市景観図と「首都」くらべ

本展では、「江戸名所図屏風」以前の京都の町を描いた絵画もあわせて紹介します。これらは「首都」を舞台とする絵画の先例というべきものですが、表現の意識は江戸の場合とは対照的。ふたつの都市図を比較し、それぞれの特徴を浮き彫りにします。

04浮世絵美人画への流れをたどる

17世紀後半、江戸に生きる女性の姿は、それ自体が絵画の主題になりました。浮世絵美人画の誕生です。本展では、とくに江戸の名所を背景とする美人画を特集し、都市景観図から単身像へ、江戸を舞台とした人物画の大きな流れをたどります。

展覧会の構成

第1章
江戸名所図の誕生 ─〈横から目線〉でとらえた都市の姿
第2章
都市景観図の先例 ─洛中洛外図と花洛(からく)の歳時
第3章
〈悪所〉への近接 ─遊興空間の演出
第4章
都市のなかの美人

各章の解説

第1章 江戸名所図の誕生 ─〈横から目線〉でとらえた都市の姿

17世紀のはじめ、徳川家康の移封と開府をきっかけに急発展した江戸の町。「江戸名所図屏風」は、その草創期の様子を伝える貴重な作品のひとつです。横方向に長く展開された大画面には、江戸を縦断するようにして上野・浅草から品川までの範囲がとらえられ、そこに描かれた2千以上の人物が新興都市にいっそうの熱気をもたらしています。ここではまず、都市生活を謳歌するかのような生き生きとした人々の姿に目を凝らし、そこにさざめく声に耳を傾けてみましょう。

第1章 江戸名所図屏風
第1章 江戸名所図屏風江戸名所図屏風
江戸時代 重要文化財 出光美術館

第2章 都市景観図の先例 ─洛中洛外図と花洛の歳時

政治の拠点が江戸へと移るまで、ながらくその中心を担った京の町。その市街地と郊外を一望のもとにとらえるべく、16世紀に誕生した洛中洛外図は、現存するだけでも100件を超えるポピュラーな画題でした。屏風の大画面に都市の全容を描き出した洛中洛外図の形式は、江戸を題材とする新しい都市景観図の誕生に、どのような刺激を与えたのでしょうか? ここでは、洛中洛外図と京の歳時を描いた絵画を、江戸名所図の先蹤(せんしょう)ととらえつつ、ふたつの都市図の表現を見くらべてみることにしましょう。

洛中洛外図屏風(洛中洛外図屏風
江戸時代 出光美術館
洛中洛外図屏風(洛中洛外図屏風
狩野宗秀 桃山時代 出光美術館

第3章 〈悪所〉への近接 ─遊興空間の演出

一枚の画面に都市の広い範囲を眺望する絵画形式は、やがて局地化され、特定の限られた場所のみが絵画に描かれるようになります。描かれる対象は、おもに江戸時代に「悪所」と呼ばれたふたつの歓楽地、すなわち遊里と芝居町でした。ここでは、とくに浮世絵創成期の画家たちによって描かれた遊興のさまをご覧いただきます。享楽的な空気が充満する「悪所」への親和なまなざしは、すでに17世紀の「江戸名所図屏風」のなかに用意されたものであったことが想起されます。

江戸風俗図巻(上巻部分)江戸風俗図巻(上巻部分)
菱川師宣 江戸時代 出光美術館

第4章 都市のなかの美人

17世紀後半に誕生した江戸の浮世絵は、都市生活のあらゆる局面を、実にいきいきと描き出しています。19世紀頃に流行した風景画は、すでに存在する美人画のジャンルと結びつき、数多くの魅力的な作品を生み出しました。ここでは、江戸各地の名所を背景に、女性たちの姿をとらえた絵画をご覧いただきます。これらの美人画を通して、江戸の都市景観図の新たな展開をながめてみることにしましょう。

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