中国の配車アプリ滴滴で再び乗客レイプ殺人——「永遠に業務停止しろ」と国民の怒り頂点に

中国最大の配車アプリ企業で、ソフトバンクと組んで日本進出を発表した滴滴出行(ディディチューシン)の運転手(27)が8月24日、乗客の女性(20)を殺害し、逮捕された。滴滴は5月にも運転手が乗客女性を殺害する事件を起こし、大きな批判を浴びたばかり。同じような凶悪事件が再び起き、今回はさまざまな方面から「滴滴は永久に業務を停止しろ」という怒りが起きている。

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事件を報じる中国国営テレビ放送。

YouTube CCTV中国国際

3カ月で2件の殺人事件

現地メディアの報道や被害者の友人のSNS投稿によると、浙江省在住の趙さん(20)は24日午後、友人の誕生会に向かうために滴滴のライドシェアサービス「順風車」を利用。乗車して少し経ってから、メッセージアプリの微信(WeChat)で友人に「運転手が山道を通っている。周りに車がなく、少し怖い」とメッセージを送った。その5分後には再び「助けて、助けて」と送信。その後、連絡がとだえ、電話もつながらなくなった。

25日早朝に地元の警察が運転手の身柄を確保し、趙さんの遺体も見つかった。警察は、趙さんが乱暴後殺害されたとみている。

滴滴の配車サービスをめぐっては、5月にも相乗りサービスを利用した20代の客室乗務員が運転手に殺害されたばかり。事件後に、容疑者が父親のIDや車を使って乗務を行っていたことや、乗客から何度かセクハラのクレームがあったのに、滴滴が適切に対処していなかったことに、大きな批判が起きた。滴滴は事件後、順風車サービスを停止したが、業務体制を改善したとして、一週間後に再開していた。

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今回の趙さんの事件を受け、滴滴は前回とほぼ同じコメントを出し、順風車の業務を停止した。

「事件に対し、大きな悲しみを感じている。順風車の運営を改善する中でこのような悲劇が発生し、責任を痛感している」

人の命より、運転手のプライバシーが大事なのか

カスタマーサポート

被害者の友人が滴滴とのやり取りを公開したことで、滴滴の切迫感のなさが露呈している。

しかし、社会の反応は、前回とは比べようもなく厳しい。

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5月の事件では、滴滴ユーザーの多くは怒りながらも、「滴滴を使わないと生活できない」と、どこか他人事だった。今回はさすがに、SNSでも「もう乗らない」との声が多い。

2回の事件が、どちらも「乗客の若い女性が運転手に乱暴され、殺害される」構図で、滴滴の「業務改善」が意味をなしてないことが露呈した上に、趙さんからメッセージを受けた友人が通報した際の滴滴カスタマーサポートの対応が、全く切迫感がなかったからだ。

趙さんの友人は、連絡が取れなくなったことで5月の殺人事件を連想し、滴滴のカスタマーサポートに連絡した。滴滴側は、「運転手と連絡を取ったが、その乗客は乗せていないと言っている」「警察に相談することを勧めます」と回答した。

友人が「警察にはすでに通報しているが、運転手の車のナンバーか連絡先がないと捜査できないと言われた。運転手の情報を提供してほしい」と求めると、滴滴側は「プライバシーに関わることなので、セキュリティーの専門家が対応します。1時間以内に返事します」と応じた。

このやり取りに「プライバシーと人の命とどちらが大事なのか」と怒りが渦巻いている。

友人の通報に、警察が「運転手の連絡先かナンバーが分からないと捜査できない」と答えたことにも、「なぜ警察はすぐに自ら滴滴と連絡しなかったのか」と批判が起きている。

有名人がアプリ削除、メディアも批判

ソフトバンク

中国では敵なしの滴滴、日本進出も発表した。

Kim Kyung Hoon reuters pictures

滴滴は2012年に設立。ぼったくりや乗車拒否が横行する中国で、透明な料金体系とすぐに車をつかまえられる利便性が受け、あっという間に国民的サービスに成長した。同業他社を飲み込み、Uberも中国から撤退させ、ほぼ独占的な地位を築いている。7月にはソフトバンクとともに、日本で合弁会社を設立した。

大連市の会社員女性(25)は「今度こそ、もう滴滴を使わないと皆言っている。改善しました、もう大丈夫ですと言ってすぐに同じような事件が起きて、本当に怖い」と話した。

現地メディアは今回の事件を大きく取り上げ、「大企業病」「滴滴は3カ月何をしていたのか」と糾弾している。

人気俳優の王伝君が滴滴のアプリを削除したと発表したほか、有名人もブログやSNSで次々に滴滴を批判し、被害者を追悼するコメントを公開している。

(文・浦上早苗)

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