驚くべきことは、その場に警察が待機していたということだ。しかし、暴力を振るうデモ隊のうち、誰一人として現行犯逮捕された者はいなかった。警察が「今後は名分のある暴力であれば大目に見る」と宣言しているかのような現場だった。他でもない警察が「現政権とキャンドルデモ隊の標的となった者は街頭で集団リンチに遭っても仕方がない」と、見て見ぬふりを決め込む国になり下がってしまったのだ。これこそ無法地帯だ。そうかと思えば、コメント操作事件で特別検事チームに容疑者として召還された政権の実力者は、支持者たちによりばら色の洗礼を受け、まるで凱旋(がいせん)将軍のように手を振った。
また、ソウル市西大門区新村洞では「パク・サンハク、テ・ヨンホの収監」を主張するデモ隊が、街道で大手を振るった。自らを「逮捕決死隊」と呼ぶこれらデモ隊は、テ・ヨンホ前駐英北朝鮮公使を「未成年者暴行犯」「平和統一を邪魔する者」と訴えながら、刑務所に収監するよう求めた。これはほかでもない北朝鮮がテ前公使を批判する際に使用する表現だ。北朝鮮に対しビラをばらまいたパク・サンハク自由北朝鮮運動連合代表には「後援資金を横領する北朝鮮人権商売人」として、罵倒(ばとう)を浴びせた。
こうしたデモ隊の姿を見ると、ここが北朝鮮なのではないかと疑いたくなってしまう。マッカーサーの銅像に火を放った犯人は、警察ですぐに釈放された。反米集会が行われるたびに全国を回って顔を出す。左右の理念問題ではない。法を守らなければ無法社会となる。そのジャングルに住む猛獣たちにとって、餌の左右は関係ないのだ。
金基哲(キム・ギチョル)論説委員