'98(平成10)年、愛知県春日井市に第一号店がオープンした「豚旨(とんこく) うま屋ラーメン」。'18年6月現在、愛知県と岐阜県、三重県、滋賀県に直営店11店、FC店24店舗を展開する、地元で知らない人はいないほど有名なラーメンチェーンだ。
メニューの豊富さをウリにしているラーメンチェーンが多いなか、ここは「特製ラーメン」(写真上、580円)と「チャーシューメン」(700円)の2種類と、夏季のみ「冷やし中華」(780円)を用意している。
ラーメンスープは、「とんこつしょうゆ味」1種類のみ。ほかのメニューを開発するよりも、一途に味を追求したいというストイックさが伝わってくる。
「スープは、厳選した豚骨と香味野菜がベースです。骨を砕くところからはじまり、完成までに18時間以上はかかるのですが、各店舗で仕込んでいます。素材と製法にこだわったコクとうま味の“とんこく味”が特徴です。自家製のチャーシューやメンマもスープと同様に、各店舗で作っています」と、春日井本店の主任、中屋諒真さん。
厳選した小麦粉と岐阜県・長良川の上流水で打ち上げる麺は中太ストレート。スープの絡み具合はもちろん、のど越しの良さと適度なコシが自慢だ。
名物に偽りナシ! の大評判チャーハン
もう、ラーメンだけでも記事が書けそうだが、ここにはラーメンと双璧をなすメニューがある。
それは「名物チャーハン」(550円)。
ラーメンチェーンのチャーハンといえば、サイドメニュー的なポジションだが、ここは違う。チャーハンだけを食べに来るお客さんも数多くいて、その名の通り「名物」なのだ。
材料は、写真の通り。前列右から刻み玉ネギ、自家製チャーシュー、九条ネギ、後列右から秘伝の醤油ダレ、溶き卵。
秘伝の醤油ダレの中身について聞くというのは野暮ってもの。それ以外はとくに変わったモノは入っていない。それこそ、スーパーで全部そろえることができそうだ。
作り方もいたってフツー。熱した中華鍋にやや多めの油を入れてなじませたら、溶き卵を投入。しっかりと卵に油を吸収させたところで、ご飯と刻み玉ネギを投入してお玉でほぐして炒める。
そこに秘伝の醤油ダレと自家製チャーシュー、九条ネギをくわえて中華鍋を振る。
驚いたのはそのスピード。中屋さんは厨房に立つと、それまでの温和な表情が一転、真剣な眼差しで中華鍋を振るさまはまさに職人!
ものの2~3分(1人前)で完成してしまった。
「『名物チャーハン』は、パラパラではなく、しっとりとした食感が特徴です。秘伝の醤油ダレがきいた香ばしい風味もお楽しみください」(中屋さん)
レンゲですくって口の中に入れると、中屋さんの言うとおり、秘伝の醤油ダレの香ばしさが広がる。ふわっとしたやさしいものではなく、ガツンとくるのだ。
そして、ご飯一粒一粒に染み込んだ自家製チャーシューと九条ネギのうま味が後からやってくる。こりゃうまい! そりゃ名物になるわけだ。今まで食べたチャーハンはいったい何だったのかと思うほど。
ほぼ完コピの味! 冷凍版「名物チャーハン」
その名物チャーハン、なんと今年全国デビューを遂げてしまった。
「実は、今年2018年5月に冷凍の『名物チャーハン』が発売され、ご家庭でもお楽しみいただけるようになりました。ネット通販のほか、各店舗でもご購入できます。ウチのお店でも買って帰られるお客様が多いですね」(中屋さん)
冷凍「名物チャーハン」については、商品開発部主任の増田明弘さんにお話をうかがった。
「お客様の声をもとに、本格的なプロジェクトが始まったのは2年くらい前ですね。当初は食品製造会社に作ってもらう、いわゆるOEMを考えていましたが、全国の業者に打診したところ、まったく同じ味にするのは難しく、ほんとど断られてしまいました。それならば、自社でイチから作ってみようということになり、自社工場を立ち上げました」
自社工場というのは、冷凍「名物チャーハン」製造のために、西春日井郡豊山町に建てた工場である。ものすごい本気度じゃないか。
そして構想に約6年、開発に約2年かけてついに完成したのが、この商品だ。調理はいたって簡単。電子レンジ(500W)で約4分40秒(600Wの場合は約4分20秒)温めてから、軽くかき混ぜるだけ。
トレーに入っているので、お皿を用意する必要もない。値段は1袋380円。
見た目はお店で食べる「名物チャーハン」と何ら変わらない。
肝心なのは、味だ。私はこれまでさまざまな冷凍チャーハンを食べてきた。それこそ、新商品が出るたびに。しかし、納得する味に出会ったことがない。正直、どれもパッケージの完成イメージとはほど遠いのだ。
そんなわけで、この商品もさほど期待はしていなかった。
しかし。
レンゲですくって、ひと口……。
んっ、あれっ!? 秘伝の醤油ダレの香ばしさといい、ご飯に染み込んだ自家製チャーシューと九条ネギのうま味といい、さっき食べた「名物チャーハン」とまったく同じではないかっ!!
いちばん驚いたのは、最大の特徴であるしっとりとした食感までも完コピしてあったこと。
いやぁ、スゴイ。うまい。
春日井だけにとどまらせておくのは、もったいなさすぎる。
「まだまだ改良の余地はあると思っているんですけどね。気づいた点をすぐに改善できるのも自社工場の強みだと思っています」(増田さん)
取材終了後、私は冷凍「名物チャーハン」を買って帰った。仕事場で食事する際のレギュラーメニューになりそうだ。
お店情報
豚旨(とんこく) うま屋ラーメン 春日井本店
住所:愛知県春日井市下条町1147-4
電話番号:0568-89-3367
営業時間:11:30~翌4:00
定休日:無休
ウェブサイト:http://www.umaya.co.jp/
書いた人:永谷正樹
名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。