まだ緑色のクルミを使って、ノチーノという真っ黒いお酒を作ってみた。
果実酒といえば、梅、カリン、レモンなどを思い浮かべるが、イタリアには未完熟の青いクルミとウォッカで作る、ノチーノというリキュールがあるらしい。
試しにと作ってみたのだが、これが私の知っている常識と全く違う工程で、できあがった結果が不安になるほど真っ黒だったのだ。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。
前の記事:「へぼ(クロスズメバチ)を追う人に憧れて」 人気記事:「一番安い寝台車のシート、ノビノビ座席で寝てきた」 > 個人サイト 私的標本 趣味の製麺 5月22日 川原で若い木の実を発見5月後半のある日、なにか食べられるものはないかと川原を歩いていたら、見慣れぬ木の実が落ちていた。
梅にしては細長いようだが、なんだろう。 謎の青い木の実を発見。なんだか表面がペタペタしている。
上を見上げて、この実がなっている木の葉っぱなど確認して、ようやく理解した。どうやらこれは野生のクルミのようだ。 クルミというと茶色くて硬い木の実というイメージだが、木になっている段階ではそのまわりに果肉がある。ギンナンと一緒だ。これはその若いやつ。 そういえば若いクルミを使って、イタリアではノチーノと呼ばれるリキュールを家庭で作っていると話を聞いたことがある。日本でいったら梅酒みたいなものだろうか。 まだ青いクルミ、これが後のノチーノである。
その場で軽くネットで検索してみると、ノチーノは『聖ヨハネの日』である6月24日の深夜に仕込まねばならぬとあった。お茶を摘むなら八十八夜、みたいな話だろうか。
ノチーノを仕込むには、まだ実が小さいのかな。
宗教的な話はよく分からないが、ようするに収穫にはまだ1か月早いということか。
もしこれで失敗しても挽回のチャンスがあるということだと前向きにとらえ、これで先に進めてみよう。 青いクルミは黒くなる拾い集めた青いクルミでノチーノを作ることにしたのだが、詳しいレシピはあえて探さず、たぶんこんな感じだろうという予想を立てながら進めることにした。
外国人が梅干しや糠漬けをテイクイットイージに作るみたいな話である。その答え合わせをするかは未来の自分次第。 まず梅酒のように丸のままか、切って漬けるかで迷う。試しに一つを包丁で切ってみると、その断面があっという間に黒くなった。 内臓脂肪多めの人を胴体で輪切りにしたCT画像みたいだが、これが青いクルミの断面である。
これがクルミであることを忘れる謎の変色。ノチーノ作りのコツは、酸素と反応させて黒くしてアクを抜くことらしいという断片的な情報は知っていたので、この黒くなる変化はきっと正解。
黒くなるとアクが抜けるという理屈がまったくわからないが、きっとイタリアではことわざになるくらい常識なのだろう。 イタリアには「青いクルミは黒くなる」ということわざがあるのでは。
断面が変色するということは、黒くさせるなら切った方が良さそうだ。全部のクルミを半分にして、酸化(でいいのかな)させまくった真っ黒のノチーノを作ってやろう。
こうして作業をした指先が、なんとうかギシギシしている。これが例のアクだろうか。 まだ青いクルミが酸化する様子を動画でどうぞ。
クルミの汁が手につくと、全然落ちないので手袋必須。これがアクなら相当手ごわそうだ。
ウォッカに漬けてよく振るらしい日本で果実酒作りといえばホワイトリカー(甲類焼酎)が定番だが、イタリアのノチーノはウォッカを使うらしい。
ズブロッカみたいに香りのあるものよりは、プレーンタイプがいいだろうということで、アルコール度数40度のスミノフを買ってきた。 昔はカロリーオフみたいな意味合いで、スミロンオフって読んでいました。
この時点で氷砂糖を入れるべきか。また香辛料を加えるという説もある。とりあえず足りないものは後から足せばいいだろうということで、シンプルに105グラムのクルミと155グラムのウォッカをビンに詰める。
本当はウォッカをクルミの1.5倍にしようと思ったのだが、ちょっと計算を間違えた。 梅酒作りなら密閉して冷暗所で静かに保管するところだが、ノチーノ作りでは「酸化することに意義がある」ので、フタをしっかり締めてよく振って日向に放置が正解らしい。マジか。いや冷暗所に保管っていうレシピもあるらしいけどさ。 本当に振っちゃっていいのかな。
何かの拍子(発酵したり発泡したり)に破裂しないようにフタをうっすらと緩めて、ベランダのプランターの横に置く。そして毎日フタを締め直してはシャカシャカと振って、ビンの中で熟成だか酸化だかをさせていく。
異文化過ぎて、「本当に?」と正解を知っている誰かに聞きたいところだが、道しるべのない冒険もたまにはいいだろうと、ノーツイートですすめていく。 切ってすぐウォッカに漬けたので、断面はあまり黒くなっていない。
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