厚生労働省は「寡婦控除」の対象に非婚の親も加えるよう財務省などに求める方針を決めた。2019年度の税制改正で実現を目指している。

 既に市町村では非婚でも寡婦とみなして独自に支援する動きが広がっており、国の対応は遅いくらいだ。公平・中立という税制の原則にのっとれば、法改正による不公平解消は待ったなしである。

 寡婦控除は配偶者と離婚したり、死別したりしたひとり親の所得から一定額を差し引き所得税や住民税を軽くする仕組みだ。現行制度では、さまざまな事情から結婚せずに子どもを育てるひとり親は対象とならない。

 控除拡大は、昨年末の与党税制協議会でも議論されたが、結論を持ち越した。法律婚にこだわり伝統的家族観を重視する議員が多い自民党内から慎重論が上がったためだ。もともと法律上の結婚をしたかどうかで線引きをする制度の根底にあるのも旧来の家族観である。

 13年、最高裁は結婚していない男女の間に生まれた子の遺産相続分を、結婚している夫婦の子の半分とする民法規定を「法の下の平等を定めた憲法に反する」と違憲判断を下した。その後、民法は改正された。

 「家族観が変わり、相続分を差別する根拠は失われた」との最高裁判断が導くのは、非婚の親に寡婦控除が適用されないのも合理性を欠く差別だということだ。

 税制に特定の価値観を持ち込むべきではない。子どもに選択の余地がない理由での差別は許されない。

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 非婚のひとり親も寡婦とみなして保育料や公営住宅の家賃などを軽減している市区町村は、16年8月時点で全体の2割に上った。「同じ所得で扱いが異なるのは不公平」という住民の声に応え、柔軟な対応を取ってきたのだ。

 ただ周知が徹底されていないなどの理由から、みなし適用の「取りこぼし」も指摘されている。せっかくの取り組みなのに利用が限定的なのは残念である。

 先行する自治体の後を追う形で、この夏から国は保育料や高等職業訓練促進給付金の算出などでみなし適用を順次進めている。

 だが法改正が必要な所得税や住民税などの軽減はなく、抜本的な課題は残されたままだ。 

 政府が旗を振る高等教育の無償化など多くの支援は、住民税非課税世帯を対象にしており、寡婦控除があれば助けになるケースも少なくない。

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 ひとり親世帯の子どもの貧困率は50・8%と極めて高く、実に2人に1人が貧困に陥っている。特にシングルマザーを取り巻く状況は厳しい。

 家族の変容や多様化を映しているのだろう。母子世帯になった理由で「離婚」の次に多いのが「未婚の母」で、数年前から「死別」を上回っている。しかし未婚の母の年収は母子世帯の平均よりさらに低い。

 子どもの貧困対策や福祉の視点からも、親の結婚の有無を問わない支援が急務である。