空気で約30%体積が増した速い水玉をお尻に毎秒100発当てて、“強さ”を保ったまま、“たっぷり感”も高められたエアインワンダーウェーブ洗浄で、トイレの吐水技術は1つの完成形に到達した(前回、「ウォシュレットが発射する「最強の水玉」誕生の裏側」参照)。しかし、一方で“突然変異”のように、その進化の道筋とは別のところで画期的な「水玉洗浄」の技術が生み出されていた。最終回は、小惑星探査機「はやぶさ」搭載のテクノロジーにも匹敵する技術の誕生の秘密に迫る。
電磁ポンプがないのに水玉が!
これまで見てきたワンダーウェーブ洗浄、新ワンダーウェーブ洗浄、エアインワンダーウェーブ洗浄という吐水技術の進化では、常に、電磁ポンプのピストン運動によって水玉をつくり、その間の温水を間引くことで、毎分430mlという限られた水流量のなかで“たっぷり感”を実現してきた。
2012年に家電量販店向けのウォシュレットに初めて搭載された「バルーンジェット」という吐水技術でも、1秒間に70個から80個の水玉をお尻に当てることで、毎分430mlの水流量でも汚れをしっかり落とし、“たっぷり感”を含む十分な洗い心地を実現しているのは同じだ。
ただし、その水玉をつくる技術が全く違った。ワンダーウェーブ系の吐水技術では不可欠だった「電磁ポンプ」のような電気部品が、バルーンジェット技術にはない。驚くべきことに、アナログな部品である樹脂製 “小部屋”に吐水を通すだけで、水玉がつくられているのだ。
まさに“突然変異”とも言うべきバルーンジェットの画期的な吐水技術は、研究中の失敗から偶然に生み出されたものだった。