8月22日~24日にかけて、神奈川・パシフィコ横浜 会議センターでCESAによる開発者向け大規模カンファレンス「CEDEC 2018」が開催されました。本稿ではセガゲームスの廣田隆哉氏による「増殖し続ける『コトダマン』キャラクターの煩雑な発注管理をスムーズに行う秘訣とは?」の聴講レポートをお届けします。セガゲームスのスマートフォンアプリ『共闘ことばRPG コトダマン(以下『コトダマン』)』は、さまざまな言葉を作って敵と戦う「ことば合わせRPG」。配信開始から3カ月で800万ダウンロードを突破する好調ぶりを見せています。YouTube:https://youtu.be/n_S7oWkO56s本セッションのテーマは、そんな『コトダマン』のキャラクター制作現場に、オートデスクによるプロジェクト進捗管理ツール「SHOTGUN」を導入したらどのように効率化されたかを語るというもの。セガゲームスの廣田氏とオートデスクの渡辺揮之氏まず最初に廣田氏は「SHOTGUN」導入前の作業工程から語りました。『コトダマン』は公称350キャラクターとされていますが、キャラクターそれぞれが"進化"して見た目やステータス、フレーバーテキストなどが変化するため、制作のために必要なデータは実質700キャラになります。その数々のキャラが生まれるまでの発注フローを図にしたものが以下の画像です。右下にある、口から魂が抜けるイラストがすべてを物語っているようです一見しただけでクラクラしてくるような複雑さです。一人のキャラが完成するまでに用いられるツールやソフト、サービスを上の画像から用途別に書き出してみると、次のようになっています。■コミュニケーション、レビュー、個々のセクションの進捗管理Mantis Bug Tracker(課題管理ツール)Skype(インターネット電話サービス)Lync(統合コミュニケーションプラットフォーム。現名称はSkype for Business)Outlook(電子メールクライアント)Cisco Spark(コミュニケーション用クラウドサービス。現名称はCisco Webex Teams)■データの受け渡しAspera(高速ファイル転送ソフト)Silver Bullet(高速ファイル転送ソフト)File Server(ファイル管理サーバー)■キャラシート作成、プロジェクト全体の進捗管理Excel、Exel Online(表計算ソフト)このように9種類ものツールやサービスで日々やりとりがされていたそうです。廣田氏はファイルベースの「Excel」や、「Googleスプレッドシート」などを経て「Excel Online」でプロジェクト全体を管理していましたが、『コトダマン』の規模の大きさもあって問題が山積みだったそうです。具体的には、以下のような点が挙げられました。■従来の管理方法の問題点チャットツール/サービスでのやりとり:ログが流れて見落としが発生してしまうメールでのやりとり:送信者間でしか情報を共有できない。担当者の退職でやりとりの履歴が消えてしまうMantis Bug Trackerでのやりとり:添付されたムービーやpsdファイルのプレビューができず手間がかかるファイル転送サービスでのデータのやりとり:容量が大きくなるほどアップロード/ダウンロードに手間がかかる。忙しさにかまけて「New~」、「New2~」などファイル名が適当になりどれが最新データか分からなくなるExcel Onlineによる進捗管理:クラウド上にある同一のデータを複数人で共有しているので、個々人が見やすいようにソートできない。最新の画像とプロジェクト管理/進捗を同一のデータで扱うせいで「データが破損してしまわないように…」などの気遣いから複製データが発生してしまいやすい「New2~」、「New_Old~」など、忙しいときのファイルネーミングは我々のクリエイティビティが遺憾なく発揮される箇所です、と苦笑する廣田氏作業効率化のためにしたことが、かえって進捗を滞らせてしまうことも廣田氏は当時の制作環境を振り返り「あちこちでどうしても見落としや連絡不行き届きが発生してしまった」と語りましたが、「逆に発生しない方がおかしいくらいなのでは」と思えるほどの複雑さです。ところが「SHOTGUN」を導入したことで、これが以下のように改善されました。「SHOTGUN」の導入で煩雑さが大きく改善上と同じ工程を、「SHOTGUN」を中心に据えて見せ方を変えたものまだExcelをはじめ、Cisco Spark、Silver Bullet、File Server……とツールが色々残っているように見えるかもしれませんが、キャラクターが完成するまでのやりとりのほぼすべてが「SHOTGUN」で完結しているので、Cisco Sparkでのやりとりはミーティングの日取りなどその他の連絡事項がメインになり、見落としが激減。Silver BulletとFile Serverに関しても、完成したデータをまとめて納品する程度になったので、これもやりとりする頻度は激減。廣田氏は「"ツールが9個から5個に減った"という言葉では言い表せないくらい、快適になりました」と強調しました。以前は大量のメールやログに埋もれて、自身のチェックバックを待つ成果物を見落として進捗を止めてしまうこともあったそうですが、「ディレクターチェック」のステータスがついたデータだけを表示するチェックバック専用ページを作ってそれも解消されました。「1日数回チェックして、このページにタスクが何もないようにすればいいだけなんです」。「このページを常に空にしておけばいい」という考えでかなり負担が減りました、と廣田氏「SHOTGUN」を導入するにあたって、廣田氏はオートデスクによるホームページ「AREA JAPAN」とYouTubeで公開されている約60分の動画「オートデスクによる基本機能デモ」を見て、AREA JANANでさらに数々のTipsを学び、さらに代理店が行うハンズオンセミナーに積極的に参加したとのことで、こうした方法や手順で学ぶのがオススメとのこと。また、AREA JAPANでは30日間無償で使える体験版が配信されており、データが破損してしまうのではというくらいの勢いでそれを使い倒すのもオススメです、と強調しました。YouTube:https://youtu.be/ZhiDBJJB-Ls廣田氏はセッションのまとめとして「「SHOTGUN」を導入しても、プロジェクトの進捗管理がすぐ劇的に改善するわけではないかもしれません。ですが、やればやるだけ、日々の作業時間を圧迫していた数々の細かい手間が解消され、確実に省力化されていきます」と使用感をまとめました。(C)SEGA(C)2018 Autodesk Inc. All rights reserved