原子力防災訓練で情報収集に当たる関係者ら=8月25日午後2時55分ごろ、福井県おおい町成和の県大飯原子力防災センター

 関西電力大飯、高浜原発で注水が不能となる事象が発生―。直線で約14キロしか離れていない両原発で同時に事故が起きたとの想定で、福井県おおい町などで8月25日に行われた原子力総合防災訓練。安倍晋三首相が緊急事態宣言を出し、国や県などをつないだテレビ会議のやりとりは緊迫感に乏しく、シナリオ通りに淡々と進んだ。

 京都府北部を震源とした地震発生後、大飯3号機と高浜4号機で事故が発生したと想定。「原発の事象からして、住民避難が必要となる原災法15条事象になっていくことが否定できない」とし、原子力規制委員会・内閣府原子力事故合同警戒本部が午前10時4分、高浜、大飯それぞれのオフサイトセンター(OFC)を大飯に統合する―とのシナリオで訓練が行われた。

 県の災害対策本部には内閣府からOFC統合の知らせが電話とファクスで伝えられた。県危機対策・防災課は「伝達はスムーズで、特に問題はなかった」とした。

 大飯OFCには関係機関約310人が詰めて対応に当たった。現地事故対策連絡会議では「両原発とも事態の進展が予想より1時間早い」「舞鶴若狭自動車道小浜―小浜西間が交通事故で通行止め。高浜、おおい両町の住民は県内避難できない」といったやりとりがあったが、疑問点を尋ねるような場面はなかった。

 県庁では約70人が訓練に参加。本部長の西川一誠知事は官邸とのテレビ会議で、安倍首相らに「不測の事態に備え自衛隊などの最大限の支援をお願いしたい」と求めた。

 別の意味で不測の事態があった。午後2時55分ごろ、緊急事態宣言が官邸と大飯OFC、関係府県市町を結んだテレビ会議で流されたが、宣言する安倍首相の顔が映されることなく終了した。大飯OFCで対応に当たった内閣府の担当者は「まさか。想定外です」と顔を青ざめさせた。

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