(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年8月24日付)
あの瞬間は、いつの日か、プロパガンダ芸術で称えられることになるかもしれない。
湖北省宜昌を流れる揚子江の霧が晴れ、卓越した技術力の誇らしい象徴である三峡ダムの上に習近平氏が姿を現し、中国は技術超大国になるべく独自の道を突き進むと宣言した、あの瞬間のことだ。
習国家主席が今年4月に行ったこの演説を直接聞いたのは、青色のつなぎ姿で満面に笑みを浮かべた作業員の一団だった。しかし、この発言の真の標的は、中国との貿易戦争のわめき声を発していた米ホワイトハウスだった。
「過去には、我々は生活を切り詰め、歯を食いしばり、2つの爆弾(原爆と水爆)と人工衛星を作った」
習氏はこう述べた。「技術開発に取り組む次の段階では、幻想を振り払い、自立しなければならない」
毛沢東以来の強大な権力を誇る最高指導者の言葉である以上、そこにはかなりの重みがある。しかし、目に見える隠喩としての三峡ダムは、習氏が認める覚悟ができていないことまでも明らかにしている。
ダムの壁は中国企業が作ったものの、発電するタービンは、少なくとも当初は、外国製だったということだ。