酒も飲まず、貯金もゼロ…スーパーボランティア尾畠春夫さんの生き様

私が被災地に行く理由【後編】
週刊現代, 齋藤 剛 プロフィール

小さくても長持ちする。そんな生き方をしたい

娘はいろいろと心配してくれます。携帯電話を持つように何度も言われていますが、携帯電話にしろ、パソコンにしろ、そうしたものに振り回されたくない。カーナビも一度も使ったことがありません。

孫といえば、忘れられない思い出があります。店をやめて1年後くらいかな。あるとき、一番年上の孫が突然うちに来た。当時、孫は高校生でしたが、真剣な顔で「話があるんだ。じいちゃん、タバコをやめろ」と言うんです。

65歳を過ぎると体力が急激に落ちるから絶対にやめろって。自分はヘビースモーカーで、ピースを2箱吸っていました。これはうれしかった。孫の言うことは天の声だと思い、その場ですべて燃やしました。ちなみに、この孫は登山をしています。私の影響だそうです(笑)。これ以上うれしいことはないですよ。

 

来る人は拒まず。もっとも、マスコミはすぐいなくなるでしょう。私なんて一過性のもの。日本は熱しやすく冷めやすい。自分のことなんてすぐ忘れるでしょう。僕は花火の中では線香花火が好きなんです。小さくても長持ちする。そんな生き方をしたい。

いつかは沖縄で遺骨収集したいと思っています。ガマってわかりますか。沖縄にある自然の洞窟です。ここには相当な数の兵隊さんの骨が残っているようです。その捜索をしたい。本当は今年実行する予定で、道具など準備をしていました。ところが、災害が続発して断念しました。いまはこちらが優先です。ただ、来年の春にも実現したい。

ボランティア活動の現場では、経験豊かな尾畠さんの存在感はやはり大きい。暑さで具合を悪くしたスタッフを見つけると、すぐさま水を飲ませ、休ませる。積極的にコミュニケーションをとろうとしないメンバーがいると、笑顔で話しかける。

最後に尾畠さんと握手したが、握力は78歳のそれではなかった。そのバイタリティ、行動力には感服するしかなかった。

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