この記事ではクレアチンサプリメントの様々な効果についてエビデンスを交えながら紹介しています。
筋トレをしているけど、どのサプリを飲めば良いかお悩みの方の参考にされば幸いです。
クレアチンは筋肉の発達に役に立つ
クレアチンは筋肉の発達を促すことで有名なサプリメントです。
1990年台前半、陸上短距離の選手がクレアチンを摂取することで好タイムを出し、そこから多くのアスリートに広まりました。
1996年のアトランタオリンピックでは、参加した選手の80%がクレアチンを摂取していたという報告もあります。
クレアチンは近年、一般の筋トレ愛好家の間でも広まってはいるのですが、次々と発表される新しいサプリメントに若干押され気味です。
また、筋トレ愛好家の間では有名であっても、一般人にとってはクレアチンなんてサプリメントは見たことも聞いたこともないってことも多いでしょう。
そんなクレアチンサプリメントですが、筋肉を発達させるのに非常に効果的なサプリメントなんです。
クレアチンは筋肥大に効果のある数少ないサプリメントのひとつ
筋肥大に効果があるというサプリメントは数多く存在します。
ただ、エビデンスが十分に存在するサプリメントというのはほとんどありません。
少し古い研究ですが、1967年から2001年の間に行われたサプリメントと筋肥大・筋力アップに関する研究をまとめて解析した研究があります。*1
250種類以上のサプリメントを調査したところ、筋肥大と筋力アップに効果のあるサプリメントは2つだけで、そのひとつがクレアチンとのこと。
数あるサプリメントの中で、ほぼ確実に効果が期待できるサプリメントのひとつがクレアチンなんです。
最新のサプリメントに関する研究でもクレアチンは優秀との結果
前述の研究は2000年代前半と少々古めのものでした。
もちろんそれからもサプリメントに関して世界中で研究が行われ続けています。
そんな研究の結果として、2018年に国際スポーツ栄養学会(ISSN)からサプリメントに関する現時点での評価が発表されました。*2
評価は
- 効果を裏付ける強いエビデンスがあり明らかに安全
- 有効性を支持するための限定的または混合的なエビデンスがある
- 有効性および・または安全性を裏付けるエビデンスはほとんどない
以上の3つに分けて評価が行われました。
簡単な言葉に変えると、
- 安全でめっちゃ効果あるもの
- たぶん効果があるもの
- 効果がないか安全じゃないっぽいもの
という分け方です。
その発表によると、筋肥大に安全でめっちゃ効果があるサプリメントとして、
- クレアチン
- HMB
- 必須アミノ酸(EAA)
- プロテイン
以上の4つが発表されました。
クレアチンを摂ると4~12週間で1~2kg多くの筋肉が付くとのこと。
かなり大きな変化です。
また、パフォーマンスを高めるのに安全でめっちゃ効果のあるサプリメントとして
- クレアチン
- βアラニン
- カフェイン
- 糖質
- 重炭酸ナトリウム(重曹)
- リン酸ナトリウム
- 水とスポーツドリンク
以上の7つが発表されました。
クレアチンは唯一筋肥大にもパフォーマンス向上にも安全でめっちゃ効果のあるサプリメントとして認められているわけですね。
安全に関しても問題はなく、乳児から高齢者まで、健康な人から持病のある人まであらゆる人に対する安全性が報告されているとのこと。
ラベルに18歳未満はダメと書いてある場合があるが、サプリ会社が責任を逃れるために書いてあるだけとまで言い切っています。
まあ乳児が摂る必要はほとんどないでしょうけどね。
ちなみにオススメの摂り方は、
- ローディング期間として1日に体重1kgあたり0.3g以上のクレアチンを5~7日間
- その後はメンテナンス期間として1日に3~5g
摂るようにすると良いとのこと。
多くの実験ではローディング期間に体重1kgあたり0.3~0.8g摂っても特に健康に害することはなかったとのことなので、安心してクレアチンを利用すると良いでしょう。
クレアチンを飲むと筋肉(特に上半身)が発達しやすくなる
普段から筋トレをしている人は筋トレによる「伸びしろ」が少なくなっています。
そのような男性にクレアチンサプリメントを摂ってもらった場合の効果について調べています。*3
普段から筋トレをしている若い男性43人(平均年齢22.7歳)を
- クレアチンを飲むグループ
- ただの粉を飲むグループ
以上の2つのグループに分けて実験が行われました。
最初の1週間はローディング期として、体重1kgあたり0.3gのクレアチンを1日に4回摂ってもらいました。
体重が70kgの人なら21gのクレアチンを1日に4回飲むといった感じです。
これで体内のクレアチンの量を満タンにするわけですね。
その後メンテナンス期(維持期)として7週間、体重1kgあたり0.03gのクレアチンを1日1回摂ってもらいました。
身体の中で満タンになったクレアチンが減ってしまわないように少量を継続的に飲んだわけですね。
その状態で
- 月・木曜日:胸・肩・上腕三頭筋・お腹のトレーニング
- 火・金曜日:背中・上腕二頭筋・太もも・ふくらはぎのトレーニング
を行ってもらいました。
8週間後、筋肉量の測定を実施。
その結果、どちらのグループも筋肉量は増えていたが、クレアチンを飲んだグループは筋肉量がよりたくさん増えていたとのこと。
さらに、クレアチンを飲んだグループは上半身の筋肉が発達しやすかったとのこと。
ちょっと数字も見てみましょう。
ただの粉を飲んだ場合に比べてクレアチンを飲んだグループは
- 上半身:4.4倍
- 下半身:4.6倍
- 体幹部:3.0倍
筋肉が発達したとのこと。
また、クレアチンを飲んだ場合、下半身の発達に比べて上半身が2.2倍も発達しやすいという結果でした。
やはりクレアチンを飲むと筋肉が発達しやすくなるようです。
特に男性は上半身の筋肉にこだわる人が多いので、クレアチンサプリメントの摂取はかなりオススメです。
高齢者に対するクレアチン摂取の効果
加齢と共に筋肉は減少してしまいがちです。
筋肉の減少は日常生活動作や代謝機能に悪影響を及ぼし、健康を害することに繋がったりします。
高齢者にとっては筋肉が減らないようにすることが健康にためには何よりも大切と言えます。
先述のとおり、クレアチンは筋肉が増えやすくなるわけですが、あくまで若者を対象とした研究でした。
クレアチンの高齢者に対する効果はどうなのでしょうか。
高齢者の筋トレのみVS筋トレ∔クレアチン
ということで、高齢者に対するクレアチンの効果を調べた研究があります。*4
過去に発表されたクレアチンの高齢者に対する効果を調べた研究の結果をまとめて分析しています。
研究は高齢者を対象に筋トレを6週間以上併用したものを対象に結果のデータを調べてまとめています。
分析の結果、実験が行われた期間の平均は12.6週間で、平均年齢64.2歳。
筋トレだけを行った場合に比べ、クレアチンを摂ることで脂肪量には影響を与えずに体重、徐脂肪体重を増加させることがわかりました。
要するに脂肪は増やさず筋肉を増やすことができたということです。
また、チェストプレスやレッグプレスの最大筋力(1RM)も大きく向上したとのこと。
力が付いたということですね。
高齢者の筋トレのみVS筋トレ∔クレアチン その2
先述の高齢者に対するクレアチンの効果に関する研究は2014年に発表されたものです。
同じような研究が2017年にも発表されています。*5
過去に発表されたクレアチン摂取の高齢者に対する効果に関する研究のうち条件に当てはまる22の研究をまとめて分析しています。
まとめられたデータは、平均年齢57~70歳の男女延べ721人で、筋トレを週に2~3日を7~52週間続けられていました。
調査の結果、筋トレだけを行った場合に比べ、クレアチンを摂ることで徐脂肪体重の大きな増加が見られたとのこと。
筋トレだけの場合に比べて1.37kgも多く筋肉が増えたということです。
また、チェストプレスやレッグプレスの最大筋力の向上も見られたとのこと。
クレアチンが変形性膝関節症の女性の筋肉を発達させる
高齢者に多い関節の問題として変形性膝関節症が挙げられます。
膝が変形して痛みが出たりするアレですね。
膝に痛みがあるので無茶な筋トレはできません。
そんな変形性膝関節症で膝に痛みのある女性を対象にした研究もあります。*6
膝関節症の痛みに悩む女性を
- クレアチンを飲むグループ
- ただの粉を飲むグループ
以上の2つに分け、下半身の筋トレを行ってもらいました。
その結果、クレアチンを摂ったグループは
- 身体機能の向上
- 下半身の筋肉量の増加
- 生活の質の改善
以上の変化が見られたとのことです。
無理な筋トレができない関節症をお持ちの方に対してもクレアチンは有効なようです。
高齢者に対するクレアチンの効果まとめ
高齢者は筋肉量や筋力の維持が非常に大切です。
そのためには筋トレが必須なんですが、クレアチンを摂ることでその効果を大幅に高めることができるようです。
また、高齢者は関節を痛めている場合が多いのですが、クレアチンを飲むことで低い強度での筋トレであっても筋肉が発達し、健康や生活に良い影響を及ぼすようです。
クレアチンは若者だけのサプリメントではなく、高齢者も飲むべきサプリと言えそうです。
クレアチンのパフォーマンスに対する影響
クレアチンは競技パフォーマンスを高めるために陸上選手が摂り始めてから有名になりました。
クレアチンのパフォーマンスに対する影響も見てみましょう。
クレアチンが上半身の筋力を強化する
クレアチンはパフォーマンスを高めるサプリメントとして有名です。
ということで、クレアチンと上半身のパフォーマンスの関係について研究が行われました。*7
研究は過去に発表されたクレアチンとパフォーマンスに関する53の研究(延べ1,138人)のデータをまとめて解析を行っています。
その結果、クレアチンサプリメントの摂り方とかトレーニングの内容とかいろいろ違いはあるものの、3分未満の運動における上半身のパフォーマンス向上に有効であるとのことです。
上半身の筋力、パワーアップのためにクレアチンは効果的ってことですね。
普通の筋トレの場合は1セット1分以内で終えることがほとんどなので、筋トレ時のパフォーマンスも高まるでしょう。
筋トレを行う際のパフォーマンスが高まれば、結果として筋トレの効果も高まることが考えられます。
もちろんスポーツパフォーマンスにおいても有効です。
ほとんどの種目においては瞬発的な動きの連続になるでしょう。
その瞬発的な動きを高めるといことで、競技パフォーマンスの向上が見込めます。
逆に持久的に上半身を使うことになる水泳の長距離やオールを漕ぐボート競技に対してはクレアチンの効果はイマイチかもしれません。
クレアチンが脚の筋力を強化する
前述の研究はクレアチンと上半身の筋力に関する研究をまとめたものでした。
同様にクレアチンと下半身の筋力に関してまとめた研究もあります。*8
研究は過去に発表されたクレアチンとパフォーマンスに関する60の研究(延べ1,297人)のデータをまとめて解析を行っています。
その結果、先述の上半身に関する研究と同様、下半身も3分未満の運動に対する筋力を高めたという結果でした。
下半身の筋力というのは非常に重要で、スポーツのためにも健康のためにも欠かすことの出来ない筋肉です。
スポーツにおいては瞬発的な走る動作を繰り返すことが多いでしょう。
そういう局面でクレアチンは役立つでしょう。
日常生活においても階段を上ったり、物を持ち上げたりする動作は3分未満の短い時間の動きです。
クレアチンを摂ることで階段が登りやすくなったりといった効果が期待できそうです。
クレアチンの健康に関する影響
クレアチンは筋肉の発達やパフォーマンスの向上に効果があるとして注目されているのですが、近年の研究によるとクレアチンは健康にも良い影響を及ぼすようです。
クレアチンには抗酸化作用もある
近年の研究によると、クレアチンには抗酸化作用もあり、身体を酸化ストレスから守ってくれるようです。*9
64匹のマウスを
- クレアチンを摂るマウス
- ただの粉を摂るマウス
以上の2つのグループに分けて有酸素運動(水泳)を行いました。
その結果、クレアチンを摂ったマウスは運動による血液中・筋肉内の酸化ストレスが少なかったとのこと。
クレアチンに抗酸化作用があるということですね。
クレアチンがベジタリアンの脳機能を高めるかも
2003年に行われた研究によると、クレアチンを1日に5g、6週間飲み続けてもらったところ、脳の機能が高まったという報告があります。*10
ただ、ベジタリアン(菜食主義者)を対象とした研究なので信憑性としてはイマイチです。
ベジタリアンは肉を食べないので体内のクレアチンが少なくなっている可能性があるからです。
ベジタリアンではないけど、普段肉を食べることが少ない人や、肉は食べるけと鶏肉を食べることが多いという方はクレアチンが少なくなっている可能性があるので、クレアチンサプリメントを摂ると脳機能が高まるかもしれません。
クレアチンが脳機能を高めるかも その2
前述の研究は菜食主義者(ベジタリアン)を対象とした研究でしたが、最近の研究ではクレアチンは菜食主義者ではない人の脳機能にも良い影響を与えるようです。。(*11
クレアチンと脳機能に関する6つの研究データをまとめたところ、クレアチンを摂ることで短期記憶や知性が高まったようです。
ただ、効果は菜食主義者の人がクレアチンを摂った時の方が変化は大きかったとのこと。
やはりクレアチンを摂ると脳機能にも良い影響を及ぼすようです。
脳機能のためにクレアチンを摂ることはあまりないかとは思いますが、筋肉のためにクレアチンをとったらおまけに頭まで良くなったら嬉しい限りですね。
クレアチンのまとめ&効果的な飲み方について
クレアチンは筋肉の発達やパフォーマンスアップには間違いなく良いサプリメントです。
筋トレをするなら必須のサプリメントと言っても過言ではありません。
ついでに健康にも良いということで一石二鳥です。
クレアチンの摂り方としては、まず身体の中のクレアチンを満タンにするローディング期を取り入れます。
ローディング期として5~7日間、体重1kgあたり0.3g~0.8gのクレアチンを飲むようにしましょう。
ローディング期間が終わったらその量を維持するためのメンテナンス期です。
メンテナンス期として1日に3~5gを毎日摂るようにしましょう。
ローディング期を取り入れない方法もあり、3~4週間かけて体内のクレアチン量は増えるようですが、初期効果はあまり期待できないのでローディング期を設けた方が良いでしょう。
飲み方の基本としてクレアチンは多めの水で飲むようにしましょう。
クレアチンは酸に弱く、胃酸で変性してしまう可能性があるからです。
多めの水と一緒に飲むと胃酸も薄まり、胃酸の影響も少なくなるでしょう。
飲むタイミングとして、トレーニングを行う日はトレーニング中のワークアウトドリンクに混ぜて飲むか、トレーニング後に飲むようにしましょう。
トレーニングによってクレアチンは減ってしまうので、それを補充するという感じです。
また、トレーニングをしない日は食後に飲むようにしましょう。
食後に摂れば胃酸の影響が少なくて済みます。
一度に摂っても構いませんし、毎食後に分けて摂っても良いでしょう。
筋トレをしていてどのサプリを摂れば良いのか迷っている方は、まずはクレアチンを摂ってみると良いのではないでしょうか。
きっといい結果が得られますよ。
参考文献
*1:Effect of dietary supplements on lean mass and strength gains with resistance exercise: a meta-analysis. - PubMed - NCBI
*2:ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations
*3:Creatine supplementation elicits greater muscle hypertrophy in upper than lower limbs and trunk in resistance-trained men. - PubMed - NCBI
*4:Creatine supplementation during resistance training in older adults-a meta-analysis. - PubMed - NCBI
*5:Effect of creatine supplementation during resistance training on lean tissue mass and muscular strength in older adults: a meta-analysis. - PubMed - NCBI
*6:Beneficial effect of creatine supplementation in knee osteoarthritis. - PubMed - NCBI
*7:Creatine Supplementation and Upper Limb Strength Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis. - PubMed - NCBI
*8:Creatine Supplementation and Lower Limb Strength Performance: A Systematic Review and Meta-Analyses. - PubMed - NCBI
*9:Creatine supplementation reduces oxidative stress biomarkers after acute exercise in rats. - PubMed - NCBI
*10:Oral creatine monohydrate supplementation improves brain performance: a double-blind, placebo-controlled, cross-over trial.
*11:Effects of creatine supplementation on cognitive function of healthy individuals: A systematic review of randomized controlled trials. - PubMed - NCBI