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「第3の対策」が登場
東京大学大学院法学政治学研究科教授の宍戸常寿委員は、法改正が不要で迅速に実現できる海賊版サイト対策として、「約款に基づくアクセス警告表示」方式を提案した。
海賊版サイトにアクセスしようとしたユーザーにいったん警告画面を表示し、それでもサイトにアクセスするかをユーザーに選ばせる。ユーザーの同意のもとでアクセスを遮断するフィルタリング、同意なしに強制遮断するブロッキングに代わる、第3の対策と位置付ける。
宍戸委員によれば、この案はマルウエア対策支援の官民プロジェクト「ACTIVE(Advanced Cyber Threats response InitiatiVE)」における注意喚起の仕組みを参考にしたという。
ACTIVEでは、マルウエアに自動で感染する恐れがあるサイトを対象に、アクセスした利用者に対してISPが警告画面を送信する試みを実施している。
こうした警告画面の表示も、利用者の個別的な同意なしに行えば「通信の秘密の侵害」に相当し得る点は、ブロッキングと変わらない。ACTIVEの場合、「通常の利用者であれば、マルウエア感染サイトへの警告画面を出すことを許諾すると想定し得る」と解釈することで、約款による包括同意で足りると整理した。
この論理を海賊版対策に応用するには、海賊版サイトにアクセスしたユーザーへ警告画面を出すことについて「利用者が許諾すると想定し得る」かどうかが焦点となる。この点について宍戸委員は「静止画のダウンロードが違法化されれば、通常の利用者なら海賊版サイトにアクセスしたくはないはず、と想定できるのでは」とする一方、「静止画ダウンロード違法化が絶対条件というわけではない」とした。
「第3の対策」について、コンテンツ権利者、ISP関係者の双方から「検討するに足る」との意見が出された一方、特段の異論は出なかった。
総務省消費者行政第二課が異例の意見表明
今回の検討会議では、総務省消費者行政第二課長が、郵便事業における通信の秘密(信書の秘密)の解釈について説明した後で、「通信の秘密の法律論、解釈論の議論を深めてほしい」と委員に要請する一幕があった。
特にサイトブロッキングについて「ブロッキングはユーザーの意思に反してアクセスを遮断する点で、これまで通信の秘密を担保にユーザーから信頼されてきたISPの立ち位置が、ユーザーの監視へと変わるということ。今後のネット社会のあり方が、監視へ進むのか、自由へ進むのか。この議論がクリアになって初めて、ブロッキングの方向性について議論ができる」(総務省消費者行政第二課長)と意見を表明した。
ただ、第5回会合では「通信の秘密」についてこれ以上議論は深まらず、次回以降への持ち越しとなった。