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広告ブロック対策、グレーゾーンは健在
海賊版サイトへの広告出稿を止める対策について、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が成果を報告した。JIAAは2018年7月10日にコンテンツ海外流通促進機構(CODA)から広告ブロック対象サイトのリスト提供を受けて会員に配布。この結果、ある海賊版サイトではJIAA会員5社が広告出稿を中止して0社となり、非会員1社だけの出稿に減るといった効果があったという。
慶応義塾大学SFC研究所の寺田眞治上席所員は、「違法サイトへの広告出稿は止められるのか?」について、業界内部の実態に即して分析した資料を提出した。
広告を主な収入源とする海賊版サイトは「特定のアドネットワークとグルであることが多い」(寺田氏資料)という。ただ、アドネットワークに広告を流すアドエクスチェンジ(ADEX)や、ADEXに広告を出す広告事業者がブラックリスト方式で広告を止めることは技術的に可能で「いわゆる表の世界からの資金流入は、ほぼ抑制できる」(寺田氏資料)。
その一方、(アダルト系など)表のメディアでは扱えない広告を扱う広告主、広告事業者、アドネットワークは別の閉域系エコシステムを構築し、海賊版サイトや必ずしも違法ではないグレー系サイト、青少年有害サイトなどを支援しているという。サイト同士が相互に広告主になっているケースも多い。「グレーゾーンは全くの別世界であり、過去から連綿と継続し、今後も存在し続ける」(寺田氏資料)。
DNSブロッキング回避手段、議論深まらず
DNSブロッキング回避手段についても引き続き議論の俎上に上った。
ドワンゴ取締役CTOの川上量生委員は、DNSブロッキングをエンドユーザーが回避するのを防ぐ手段として、外部DNSサーバーの利用を防ぐためISP(インターネット接続事業者)が53番ポートの通信をブロックする「OP53B(Outbound Port 53 Blocking)」の採用を改めて提案した。「技術的には迷惑メール防止のOP25Bと同じ。ポート番号を変更するだけだ」(川上委員)。
ISPがOP53Bを実施した場合、ユーザーがブロッキングを回避する策としてはユーザー自身がDNSサーバーを設置するか、VPNやDoH(DNS over HTTPS)、WiFiルーター、専用アプリを通じてパブリックDNSサーバーに接続するしか手段がなく、「(一般的なユーザーは回避できず)有効に働くだろう」(川上氏)とした。
DNSブロッキングと並行し、川上氏は国内のISPだけでなく、海外企業が運営するパブリックDNSもブロッキングの対象にすべきと指摘した。「具体的には、(主要なパブリックDNSである)クラウドフレアの1.1.1.1とグーグルの8.8.8.8を対象とすべき。日本のISPにはブロッキングを要望し、海外の事業者に要望しないのはおかしい。両社とも日本で事業を展開しており、『踏み絵』として(海賊版サイトへの)立場を明らかにしてもらう」(川上委員)。
これに対し、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の前村昌紀委員は「OP53Bは非常に大きなアーキテクチャー上の変更を伴う」として反対の立場を改めて表明。日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の立石聡明委員も「(迷惑メールの配信を抑える)OP25Bも1、2年かけて慎重に準備した。(外部DNSサーバーに接続する)53番ポートを止めるのはインターネットの破壊でしかない」と反論した。ただ、OP53Bの具体的な難度や費用については明らかにしなかった。