学とみ子のブログ

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細胞の分化能と多能性の維持は、細胞の相反する方向性と言えるが、両機能を持つ幹細胞は、2i培地などの細胞分化を抑制する人工培地では、多能性を維持した状態で増殖することが可能である。

前ブログで紹介したように、さまざまな転写因子がカスケード的に働き、細胞分化を進ませていく。
一旦、体細胞になった分化細胞の初期化は、細胞分化とは逆の方向となる。
分化した状態の細胞から多能性細胞まで戻す手段として、iPS細胞のように人工的遺伝子挿入か、それを代用する化学物質のカクテルを用いて人工的に誘導することができる。

遺伝子挿入による初期化と同様の成果が出る方法を化学的初期化と呼ぶ。
近年、化学的初期化の手法が進んでいる。

遺伝子挿入で細胞が初期化する事実が発見された時は、驚きであったが、今、同様に驚きなのは、細胞は遺伝子挿入と関係なく初期化しうるという事実である。
それも、初期化に至る経路は、刺激の種類や、元の分化細胞ごとに異なることがわかったのである。

今、人は、強引に細胞を初期化させようと、その手技を競っている。
そうしたチャレンジの過程で、私たちの細胞は、多数ある初期化への道から、条件に応じて選ぶことがわかってきた。体細胞には、それぞれの独自の初期化道があるようなのだ。

つまり、細胞のリプログラミングムには、どの方法でリプログラミングさせるのか?、元の細胞が何であったか?によっても、初期化の経路が変わりうるらしい。

つまり、細胞が刺激をうけて自らが改変していく過程で、細胞自体がいろいろな経路を模索し、結果、関連する転写因子も違っていく。

化学的にリプログラミングムさせた細胞と、遺伝子の強制発現でリプログラミングさせたiPS細胞の両者間を比較した論文がセル誌に載っている。それぞれの細胞が、多能性細胞に戻るまでの違いを論じている。
この論文を、熊本大学に行かれた後の丹羽先生がCell誌の同号で解説しているので、丹羽氏の解説文を紹介してみることにした。

この丹羽氏紹介の論文によると、細胞が初期化していく過程で、細胞が留まるも進むも両方向の中間に位置する細胞が想定されている。

自然発生でも、そのような中間状態、あるいは中間細胞に近い細胞があるのではないか?と考えられていて、その候補がXEN細胞と呼ばれる細胞である。
XEN細胞が、中間位置した状態ではないか?と、Zhaoらがセル誌で発表している。

STAPをフォロウしている人たちにとっては、XEN細胞と聞けば、和モガ氏がご自身のブログ2018.02.18の記事を思い出すだろう。和モガブログは、独自の発想なるビー玉説でXEN細胞を引用している。和モガ氏もこのC、Zhaoの論文を読んでのビー玉説の発想だろう。
http://wamoga.blog.fc2.com/blog-entry-178.html

STAP論文は、酸浴後細胞がリプログラミングしたことを示しているが、酸浴による初期化は、酸浴に応じた初期化の道を歩むと思われる。
つまり、STAP細胞は、従来の遺伝子制御とは違う道を選んで初期化したと思われるのだ。その確率は高くない。細胞処理の手技が異なることで、初期化レベルが変わる。
これを独自にイメージ化させたのが、和モガビー玉説である。
こうした研究はこれからの研究テーマであったはずなのに、細胞の新現象を理解しない人たちによってSTAP細胞は潰されてしまったのである。

多能性を保持したまま増殖できるのが幹細胞である。
STAP実験でも、幹細胞としての性質を確認する実験は若山研究室で行われた。
幹細胞は作っただけということはないのである。

それでは、丹羽先生の解説文を少し覗いてみよう。
ここには図があり、これを確認するのがよいだろう。
青字

体細胞から多能性幹細胞へのリプログラミングは、複数のアプローチによって達成することができる。 高橋、山中は、体細胞が転写因子TF(Oct3 / 4、Sox2、Klf4、およびMyc)の遺伝子挿入により多能性幹細胞(iPSCs)に戻すことを実証した。その後、小分子化学物質を用いて転写因子TFを代用できることがわかり、最終的には化学的リプログラミングと呼ばれる化学物質のみによるリプログラミングが達成された(Hou et al、2013)。

化学的リプログラミングは、いくつかの利点を有するが、効率が低く、時間がかかり過ぎるという欠点があった。
そこで、C、Zhaoらは、Cell誌(2015)で、化学的リプログラミングの効率を有意に改善できる方法についての論文を出した。

体細胞から化学的に誘導される多能性幹細胞(CiPSC)において、TFリプログラミング(従来法)と、化学的リプログラミング法を比較しながら、それぞれの特徴の違いが論文にある。

以前に用いられた化学的リプログラミングの方法は、内胚葉関連遺伝子の一時的なアップレギュレーションに長い時間がかかっていた(Hou et al、2013)。
著者らは、特徴的な内胚葉マーカーが発現して、細胞に安定した中間状態が維持できることに成功した(図1)(Zhaoら、2015)。

化学的リプログラミングは、りプログラミングカクテル(化学物質)を用いることで、二段階で進むと考えられる。
二段階の過程で中途に位置する細胞がある。
これらの細胞は、中間状態を維持している胚由来胚外内胚葉(eXEN)細胞と極めて似ている。
eXEN細胞は、胚盤胞後期の原始内胚葉細胞に由来するが、eXEN細胞を胚盤胞へ注入すると、胚外細胞に寄与する能力を保持したまま増殖することができる(Kunathら、2005)。

化学物質により誘導されたXEN細胞をCeXENと表記する。
第一段階の化学物質により誘導されるXEN細胞がCeXEN細胞であるが、中間細胞に再プログラミングされており、キメラ胚における胚外細胞に寄与する能力を有する。

XEN様状態は、化学的リプログラミング作業中の中間に位置する性質と考えられるが、TFによるリプログラミングの中間体の状況とは異なる。

TFで誘導されるリプログラミングにおいては、XENマーカー関連遺伝子の一過性アップレギュレーションに類似した段階はない。しかしながら、Shuらは、 XENに関連するTF Gata4およびGata6は、Oct3 / 4を代用してリプログラムさせた(Shuら、2013)。

一方、TFによるリプログラミングのプロセスはまだ解析されていないが、XEN細胞様の状態は経過すると思われる。


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学さん

将来の研究に、とても夢のある情報を
提供して下さり、ありがとうございます

和モガさんのビー玉説の着目に繋がる
研究を丹羽先生が紹介なさっているとの
こと、きっと丹羽先生も何んらかの
アプローチで
研究チャレンジなさって居られるのではとうれしく感じました。 削除

2018/8/26(日) 午前 9:16 [ Ooboe ] 返信する

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