フリマアプリであらゆるものを売る若者たち

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 繁盛している小売店は、客の関心を敏感に察知して新しい商品を並べる。近ごろは、買う側がなんとなく眺める商品棚は「メルカリ」などのフリマアプリだ。つい最近も甲子園での活躍で注目を集めた秋田・金足農業高校の関連商品が出品され話題になった。買えないものはないと冗談交じりに言われるフリマアプリで、若者たちは、身の回りのものを何でも売ってしまう傾向にあるという。若者たちのフリマアプリ事情を、ITジャーナリストの高橋暁子氏が解説する。

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 身の回りのものを何でも売ってしまう若者が多い。自分が使い古した日用品や衣服を売るのは当たり前で、高校時代の制服やシューズ、使いかけのコスメなどを売るのも一般的だ。ところが、本来は売るべきではないものも多数出品されている状態だ。

◆友人のモノを売ろうとして失敗も

 たとえば、高校や大学のグッズは非常に多く出品されている。大学の講義で提出すると出席扱いとなる「出席カード」はまとめて大量に出品されている。このようなカードを購入して出席に替えることは、明らかに不正行為と言える。

 自分の出身校を偽るために活用するのか、著名高校や大学の卒業証書入れも多数出品されており、売り切れているものも多い。メガホンやファイル、タオル、グラス、お菓子の缶など著名大学グッズも人気だ。

 中には、大学の部活で使ったユニフォームや、高校球児のときの甲子園記念品なども売られていた。年度から見てまだ大学生になったばかりなのに売っている計算になり、自分の思い出の品や記念品を切り売りしていることになる。

 ある大学生に聞いたが、友人が母親の古いブランドバッグなどをメルカリで売っていたそうだ。「使っていないからバレてない。場所も取らなくなるしいいことばかり」とうそぶいていたという。一緒にいた友人の持ち物を写真に撮って勝手に出品してしまい売れてしまって大問題になった友人や、バイト先のキャンペーンで当たる景品をこっそり売っていた友人もいるそうだ。

◆スマホで稼ぐもったいない精神の世代

 若者はなぜ、本来は売るべきではないものまで売ってしまうのだろうか。まず、彼らにとってスマホでのお小遣い稼ぎが一般化していることが背景にある。

 10代女子を対象としたプリキャンティーンズラボの「お小遣い稼ぎに関する調査」(2017年3月)によると、「インターネットを使ったお小遣い稼ぎを行ったことがある」は29.2%と約3割に上っている。同調査によると、「ポイントサイトに登録してポイント交換」(40.3%)に次いで「不用品などを販売」(35.3%)が多くなっている。

 休み時間には自由にスマホを使える高校は少なくない。ある高校では、学校の休み時間にはスマホを使ってお小遣い稼ぎをしている子が少なくないという。「やっぱりお小遣いやバイト代だけじゃ足りない。プリクラも撮りたいしカフェとかも行きたいし服もほしい」。

 今の10代は不況の中で育ってきた節約世代であり、もったいない精神が強い。ブランド品でなくても、安くていいものに惹かれる傾向にある。その傾向がスマホアプリとマッチしたのだろう。同時に、親世代の収入の手取り額は年々減っており、お小遣い額が減少傾向にあることも影響しているのではないか。

 また高校生の場合、スマホ代が中学時代に比べて上がり、しかも保護者に払ってもらっている割合が高めだ。保護者はスマホ代を支払う代わりに、子どものお小遣いを抑え気味にしている可能性が高い。それ故高校生は、足りないお金をスマホで稼ぎ出しているのかもしれない。

 今の10代は少ない収入でやりくりできる世代だ。フリマアプリで何でも売ってしまうのは大人世代から見ると少々びっくりすることかもしれないが、彼らのたくましさの現れではないだろうか。