【ジョン・ミッチェル特約通信員】佐世保基地(長崎県)の米海軍が2014年以前、在日米軍に適用される日本環境管理基準(JEGS)に反し、施設内で起きた燃料漏れなどの環境事故を必要な部署に報告していなかった疑いのあることが分かった。本紙の情報開示請求に対し、米海軍は「14年以前の詳細な記録は存在しない」と回答。電子メールなどで報告した痕跡もなかった。
JEGSでは、環境事故は各基地の環境担当官に、また深刻な事故の場合にはこれに加え日本側の当局にも報告するよう定められている。
15年より前の記録は1枚の図に件数のみが記されており、それによると09年に40件、10年に13件、11年に10件の漏出事故があった。12~14年の件数はゼロだったが、別の文書から12年に少なくとも1件の漏出事故が起きていた。
同基地で環境事故が詳細に記録され始めたのは15年以降で、同年は15件の環境事故が記録され、16年に13件、17年に15件あった。これらの事故の大部分は燃料や油圧用のオイルのほか、内容不明の物質が海に漏れ出したとされている。
安全対策を軽視か
本紙が米国の情報公開制度で入手した米海軍佐世保基地(長崎県)の最近の環境事故報告書からは、同基地で常習的に環境安全対策が軽視されてきたことがうかがえる。
2016年3月27日、油状の廃液568リットルが海に流出した事故は、上官の監督を受けないまま夜間勤務していた兵士により引き起こされた。その除去作業に伴い770キログラム以上の有害廃棄物が生じた。
同年5月18日に起きた別の事故では、約2万2700リットルの排水やディーゼル燃料漏れが生じた。この事故は給油作業の際、乗組員が船の状態かを確認しなかったことが原因とされた。
12年9月に100リットルの塩酸が土壌に漏れたが、これはガスケット(管のつなぎ目に用いるパッキン)の劣化が原因。15年12月には、建設作業中の民間業者が地下のパイプを損傷させ、別の塩酸漏れが生じた。
15年に撮影された写真には、誤った位置にオイルフェンスを張り汚染物質を漏出現場から海に拡散させたことなど、汚染除去作業手順が日常的に徹底されていなかったことが記されている。