<わたしは“本や”に本を探しにゆくのではない。なんとなく本の顔をみにゆく>のだから。詩人・長田弘さんは書いた。本の数は少ないけれどかまわない。大きな書店ではない“本や”という雰囲気を持った小さな店が好き・・・だと。
夜に、静かな店でまだ知らない仲の本たちと親密に話をするのは、いいものである。小さい店だから、ほとんど全部の棚をのぞき、そこには自分の関心の外にある本も、予期しなかった本もある。そして1冊を買う。
そんな場所は残念ながら、減る一方らしい。書店が地域に1店舗もない「書店ゼロ自治体」が増えて、全体の2割強にもなるという。
出版取り次ぎ大手の調べでは、2017年7月の時点で香川を除く全国46都道府県で420の自治体・行政区にのぼり、全国の自治体・行政区(1896)の2割強を占めた。
ゼロ自治体が多いのは北海道(58)、長野(41)、福島(28)の順で、沖縄(20)、奈良(19)、熊本(18)へと続く。人口減や活字離れがあるほか、書店の売り上げの6~7割を占める雑誌の市場規模は、その10年前の6割に縮小している。
紙の本の市場の1割を握るアマゾンなど、ネット書店にも押されている。紙の本はまだ読まれているにしても、購入はインターネットでの通販ということなのだろう。
本屋さんと同様に、DVD販売店も減っている。DVD自体が配信購入や聴き放題に押されているが、DVDを必要とする人もいる。知っている店へ行ったところ閉店していて、いくつか他をあたったがどこも廃業。仕方なしにアマゾンからネット購入をしたという話も訊いた。
車の技術開発もデジタルやネット利用の流れで、安全面の置きざりが心配である。
ブレーキやアクセル、ハンドルの操作にソフトウェアが関与する“自動走行”への過大評価を懸念・・・と、第一生命経済研究所の宮木由貴子さんも記事にしていた。
多くの人がその技術を正確にイメージできているかと言えば、そうでもない。自動走行技術は、制御内容で段階分けされているが、現状ではまだ“完全自動”のレベルに達してはおらず、完全自動走行の実現に向けた途中段階だ。
“自動ブレーキ”についても誤解が多いようだ。<人がブレーキ操作を行わなくても障害物の前で停止する機能>などと、過大評価している人が多い。
“自動ブレーキ”とは「衝突被害軽減制動制御装置」のことで、衝突を回避できるものではなく、被害の軽減にとどまるだけ。消費者に十分認識されないまま装置を過信すると、運転者がブレーキを踏まずに事故に至るケースもある。
「できること」と「できないこと」も消費者にはっきりと示さなければいけない。カーシェアリングなど所有せずに自動車を利用する人も増えている。自動車ごとに用語や定義が異なれば、事故につながりかねない。
車メーカー各社で共通用語をまとめ、だれでも読める本を作成したらいかがか。それはデジタルだけでなく紙の本も必要だ。