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りゅうちぇるさんのタトゥーが叩かれるのも、称賛されるのも、全部おかしい

2018年8月25日 10時40分

ライター情報:勝部元気

写真はイメージ

タレントのりゅうちぇるさんが、両肩に妻と息子のタトゥーを入れたことに、批判が起こっているようです。

彼が公開したインスタグラムには、「りゅうちぇるがタトゥー入れてるのイメージダウンだな」「タトゥーを入れた父親なんて、子どもがかわいそう」「もっとしっかりしたパパだと思ってたのに」というコメントが押し寄せました。

話題は芸能界にも広まり、既に多くの人が疑問を呈していますが、私もりゅうちぇるさんがこの件で叩かれるのはおかしいと思います。彼が誰かの人権を侵害したわけでもありません。彼の身体は彼自身のもので、決して親のものではありません。どうデコレーションしようが個人の自由です。それなのに、なぜ他人から抑圧を受けなければならないのでしょうか?

女子生徒の下着の色を校則で規定する学校の問題がTwitterで俄かに話題になっていますが、安易に他人の身体の自由に介入するという人権侵害に対して、日本社会は意識がなさすぎだと思います。「自他境界」を理解できているとは思えません。

自己正当化に子供を利用しないでほしい


「世間の厳しい目が向けられるし、子供がかわいそう」という理由を持ち出す人が散見されましたが、その「世間」とやらはおそらく批判者本人のこと。自分の意見を正当化するために主語を大きくしないでほしいです。

そして子供を都合良く使わないで欲しいです。Twitterでは「うちの父親もタトゥーをしていたが、それで自分が可哀想だと思ったことはない」という意見もありましたが、結局は子供それぞれによって価値観は変わります。だから親は突拍子も無い非科学的なことを除けば、とりあえず自分の信念を貫けば良いだけです。

それに、自分が子供の立場として嫌だと思うなら、自分は嫌だと自分の親に言えば良いだけです。他人の家庭に口を出す資格も、リンク君(りゅうちぇるさんの息子)の代弁する資格も、赤の他人である非難者自身にはありません。

叩いている人はだいたい自己肯定感が低い


結局のところ、タトゥーを叩くのは、既婚者が独身者を叩くことや、夫婦別姓・事実婚を叩くことや、ベビーシッターに預ける親を叩くのと同じで、そのほとんどが自分の人生選択に満足できていないからではないでしょうか? 自分で人生を選ぶことなく、レールに沿うことが当たり前と自分に言い聞かせてきたから、レールに沿うことなく自由に人生を選ぶ人たちが許せない、そのために叩くのではないかと思います。

つまり、結局これも自己肯定感の問題なのでしょう。自己肯定感が高ければ「自分は自分」「他人は他人」で済みますから、いちいち他人が勝手にすることに興味は持ちません。いちいち他人のことに言及するということは、その人のアイデンティティーが「レールに沿っていること」に強く依拠しており、レールを逸脱する人をマウンティングしなければ、立っていられなくなるからではないでしょうか。

近年インターネット社会で「自己肯定感格差社会」が始まっているという指摘は以前から指摘していますが、ネットを触るリテラシーとして「人権侵害のケースでも無いのに、ネットで誰かを叩いている人たちは自己肯定感が低い」という事実は、国民全員が知っているレベルまで周知する必要があると思います。

ピアスだって昔は印象悪かった


「ダメとは言わないけれど、タトゥーは体を傷付けるものだから、印象が悪くなるのも当然だよね」という意見もあるようですが、タトゥーと同じで体に傷をつけるものとして叩かれてきたピアスの歴史を振り返ってみれば、その価値観自体ももう少し柔軟に捉えることができるのではないでしょうか?

宗教的な意味でのピアスはブッダの時代からありましたが、オシャレとしてのピアスが日本に広がりだしたのは1980年代頃と言われています。その後、1990年代半ばには中高生のピアスが「非行」の象徴のように扱われたこともありました。私も1999年の高校生の頃から今に至るまで、ピアスを8個ほど開けていますが、やはりそれだけで「非行に走った」と見なされたことは多々ありました。

ですが、1990年代後半には40代や50代の母親世代にも浸透したことで、次第に非行の印象は薄れ、2000年を過ぎると若い世代では採用する人が過半数を超えたとも言われています。今やアクセサリー売り場に行けば、イアリングよりもピアスのほうが圧倒的に多く、イアリング派が商品を選ぶのに苦労するほどです。

人の価値観なんて短い時間で変わるもの


今、ピアスをしている女性を見て、「印象が悪くなった!」「非行だ!」と言っているのは、20世紀の教育から抜け出せていない教育機関か、処女妄想の強過ぎる一部のアイドルのファンだけではないでしょうか? 男性はまだ悪い印象が残っている面が強いですが、女性に関してはほとんどなくなったことでしょう。

私の親も、私がピアスを開けた当時はとても幻滅していた様子ですが、今ピアスを開けている人に対していちいち幻滅することはありません。人々の価値観や文化というのは短期間のうちに変化するものです。

タトゥーに対して悪いイメージを抱いている人たちに対して、別に「そのイメージを変えろ」と言うつもりはありません。でも人間が持つイメージや価値観なんて、ピアスのように10年スパンでゴロっと変化するということは、頭の片隅に入れておいても良いように思います。

ライター情報: 勝部元気

株式会社リプロエージェント代表取締役社長。社会派コラムニスト。1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。専門はジェンダー論や現代社会論等。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。著書『恋愛氷河期』(扶桑社)。所有する資格数は66個。

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