銀行が預金獲得に向け、いろいろとアイデアを凝らした商品を出している。ホールインワン定期や宝くじ付き定期、ひいきのチーム応援定期など数多くある。

低金利が続き銀行に預金をしても、ほとんど元本が増えないため、株式や保険などの他の商品に切り替える人は少なくない。そうした状況の中、個人客を少しでもつなぎとめようという作戦だ。

融資先はM&Aによる事業承継案件に

ただ集めた資金は貸し出さなければ金利差で稼ぐ銀行のビジネスモデルが成り立たなくなる。資金を集めるアイデアに知恵を絞るとともに、融資先についても知恵を出す必要がある。シェアハウス案件をめぐるスルガ銀行<8358>の不正融資問題はこうした事情が背景にある。

経済産業省は今後10年のうちに70歳を超える中小企業経営者は約245万人とみており、このうちの半数は後継者がいないと分析している。これら中小企業がすべて廃業すれば2025年ごろまでに650万人の雇用と22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があるという。

そこで、経済産業省が推進しようとしているのが、後継者のいない中小企業を第三者に売却するM&Aによる事業承継。この後押しのため2018年度からさまざまな減税措置が導入されており、今後中小企業のM&Aの増加が見込まれる。

株式売買が伴うM&Aでは売買代金確保のための資金需要がある。知恵を絞って集めた資金はこうしたところに貸し出すことで、日本経済の発展に貢献できるはずだ。経済産業省の予測では今後10年間で122万件のM&A案件候補が発生する。市場は決して小さくはない。

スルガ銀行は珍しいホールインワン定期を取り扱い

ホールインワン定期預金公式HPへ
スルガ銀行リクルート支店 ホールインワン定期預金 同行ホームページより

一方、銀行は預金獲得にどのようにアイデアを絞っているのだろうか。信用データを改ざんして実施した不正融資で揺れる、あのスルガ銀行は預金集めで珍しい定期預金を取り扱っている。

スルガ銀行のインターネット支店の一つであるリクルート支店が扱っているホールインワン定期預金がそれだ。3カ月の定期預金を預け入れ中に、ホールインワンを達成すると、通常金利の0.110%に最大1.0%を上乗せした特別金利で1年間預金することができる。預金金額は10万円から1000万円まで。

おもしろいのはホールインワンを達成し、特別金利枠を獲得した後でも預金の追加預け入れが可能なこと。まずは10万円を預金しておき、ホールインワンを達成したあと1000万円に増やすことができるのだ。ゴルファーにとっては楽しみながら預金を増やすことができるユニークな商品だ。