パシフィコ横浜にて8月22日~24日にわたって開催の「CEDEC 2018」。ここでは、8月24日に行われたセッション「3Dリアルマップを用いたモバイルゲーム開発における課題とその解決方法」の内容をお届けする。
リアルマップと位置情報を用いたモバイルゲームが注目を集める中で、ドリコムの新規事業開発部門であるDRIP部が取り組むのが、位置情報と3DマップによるARスマートフォンアプリ構築プラットフォーム「AROW」だ。
講演の冒頭でドリコム DRIP部 部長の櫻井理映子氏より発表された本プラットフォームは、ゲームを主体としたスマートフォンアプリ開発で使用でき、位置情報とリアル3Dマップによってこれまでにない新しいAR体験を生み出すこと、そしてこれらの技術を用いたアプリ・ゲームをローコストかつ短期間で手軽に開発できる環境の提供を目指す。
サービスの概要が語られたところで、DRIP部のエンジニアとしてAROWプロジェクトに参画する広井淳貴氏より、本講演の本題でもある、3Dリアルマップを用いたモバイルゲーム開発における課題を紹介。そして、それをクリアするためのAROWでの取り組みについて触れていった。
まず一般のゲーム開発と比べ、マップゲーム開発における課題として挙げられるのが、マップに関連するフローが増えることで、多大な工数がかかってしまうこと。広井氏は両者を比較し、主に以下の3点がさらなる要素として加えられ、それぞれ各フローの一部として組み込まれると説明した。
- マップ関連データ設計・データ収集→レベルデザイン、コンテンツデザイン
- マップデータ変換→アーキテクチャ設計とコーディング
- 3Dマップ生成デザイン適用→アートデザイン
こうした要素をクリアするためには大きな工数が必要となり、それがデベロッパーに対する大きな課題になるが、その解決手段として提示されたのが、今回発表されたAROWだ。それぞれの要素に対して以下の解決策を用意することで、早く・手軽に・低コストでマップゲームを開発できるようになる。
- マップ関連データ設計・データ収集→マップデータ、POIデータ提供
- マップデータ変換→Unityで実装可能なデータに変換するライブラリ
- 3Dマップ生成デザイン適用→テクスチャ置換やモデル置換によりアートデザイン適用をサポート
AROWのメリットはデータ・機能の提供だけに留まらず、一定のMAU※(1万MAU程度までを予定)であれば無料で提供されるなど、個人デベロッパーでも気軽に使えるサービスを目指していくそう。
※MAU(Monthly Active User)…月間アクティブユーザー
なぜAROWが費用を抑えて提供できるのかについては、オープンソースのマップデータを活用し、足りない情報はAIを用いて推測情報を生成する点、そしてマップ・POIデータは開発者サーバーに格納する構成を検討しているためだという。
また、ゲームの世界観を簡単に3Dマップで表現できるという点も特徴のひとつ。AROWではマップデータに基づき、建物や道路などをUnityで3Dモデルとして生成する機能を用意。その上で、テクスチャや建物モデルを設定した3Dモデルを生成することが可能になっている。
また、先ほどから触れられている通り、AROWでは、ゲームに応じて必要なPOIデータを追加できる。これにより、特定のPOIの建物モデルを別オブジェクトに追加したり、POIの位置にある建物モデルに特定のゲーム機能を実装する、といったようなことも可能だ。今回は単純な置換にとどまっているが、ランドマークの情報を加えて特別な置換ができたり、開発者が細かく指定したりといったような環境を目指しているそう。
今後、AROWではオープンテスト版として開発者が利用できるバージョンを2019年度に開発・リリース予定。それに先駆けて、2018年秋にAROWサンプルゲーム「アニマルランランド」がiOS/Android向けにリリース予定だ。
リアルなオープンワールドゲームを作りたいという考えから、“AR Open World”をもじったサービス名となっている「AROW」。我々ユーザーが実際にどのような体験ができるのかについてはまだ先のことになるとは思うが、より多くのARゲーム体験が生まれることに期待したい。
AROW公式サイト(オープンβ版の事前登録を実施中)
https://arow.world/