今、相次ぐ水道管の老朽化に伴う工事費用の増加や、人口の減少などで水道料金が値上げを続けている。この現状を「日テレNEWS24」が報じたことで、ネット上では水道料金をめぐる議論が再燃している。

7月、東京・北区で水道管から水が漏れ出して道路が陥没し、浸水被害が発生。6月にも大阪北部地震で水道管が破裂し、大阪府内で約10万戸が断水した。いずれも水道管の老朽化によるものだった。さらに追い打ちをかけるのは人口減少だ。

青森・深浦町では、人口減少で水道料金の収入が9年間で約半分に落ち込んだという。維持費を補填するため、水道料金は全国平均の月3228円に対して、5292円と高額だ。このように水道事業での赤字を料金に転嫁せざるを得ない状況から、全国平均も年々上昇している。

厚生労働省によれば、水道管の法定耐用年数は40年。高度経済成長期に整備された施設の更新が進まない一方、投資額は近年減少していることから、老朽化がますます進行することを懸念。同省の試算では、このままの更新率だと、すべての水道管を更新するのに130年以上かかってしまうという。

背景には水道事業の収益の減少がある。日本の人口減少に応じて、有収水量は2000年をピークに減少の一途。水道事業は独立採算であるうえ、原則として水道料金で運営されているため、人口減少は経営状況に大きく影響するが、全事業者の約33%で、給水費用を水道料金では賄えていない状況にあるという。当然、経営状況が悪化すれば、水道施設などの投資が行えず老朽化が進行するという悪循環を招いてしまう。

7月で閉会した第196回国会で審議された水道法改正案では、水道事業の経営基盤強化を目的に、事業者に施設の計画的な更新の義務付けや広域・官民連携などを促す狙いがあった。

ネット上では水道料金に関する議論が勃発。特に民営化に関する声が多く、鉄道事業と同じく不採算地域は撤退するのではないか、さらなる値上げが起こるといった懸念が目立った。また、人口減少時代には市町村で経営するのは限界とする声もあった。一方で、民営化してもしなくても貧乏人は水が使えなくなる時代が到来するといった憶測も出ている。

新日本有限責任監査法人と水の安全保障戦略機構事務局が今年3月に発表した「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(改訂版)」によると、2040年までに水道料金の値上げが必要な事業体は全体の90%に及ぶと推計される。またこれらのうち、約4割は30%以上の値上げが必要とされるという。もっとも高い推計改定率となったのは福岡県みやこ町で409%、料金にして月2万2239円。事業体間の水道料金の単価格差は現在の9.2倍から19.6倍に拡大していくと予想する。

水道は生活に欠かせないライフライン。水道料金がウン万円なんていうことになる前に、老朽化したインフラの改修費用をどう賄うかが焦点となりそうだが…。

(山中一生)

■関連リンク
最近の水道行政の動向について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000203972.pdf
年々上昇“水道料金”トラブル相次ぎ将来は‐日テレNEWS24
http://www.news24.jp/articles/2018/08/21/04401950.html
「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(改訂版)」
https://www.shinnihon.or.jp/about-us/news-releases/2018/pdf/2018-03-29-01.pdf