山口県周防大島町で行方不明となった藤本理稀ちゃん(2歳)を捜索開始から30分で発見して、「時の人」となった尾畠春夫さん(78歳)。
スーパーボランティアと呼ばれるようになった尾畠さんは休む間もなく西日本豪雨の被災地である広島県呉市の天応地区でボランティア活動をしている。8月20日(月)、本誌記者も尾畠さんを追って、現地に向かった。
ボランティアが活動する被災地域に向かうと、尾畠さんの姿はすぐに見つかった。真っ赤なつなぎに「絆」「朝は必ず来る」などと書かれたヘルメットをかぶり、汗を流していた。
尾畠さんの姿を見つけるや、住民や他のボランティアが駆け寄って写真撮影を求める。尾畠さんは「10枚ならいいよ」と冗談を交え笑顔で応じていた。実際、接すると実にチャーミングなおじいさんであった。
取材の旨を伝えると、「遠いところからごくろうさんです、おやっさん。まぁ座ってください」と応じながらも、「でもね、ただの変わったおっちゃんですよ。自分なんて取り上げたら売り上げが落ちるよ」と笑う。尾畠さんは成人した男性のことを「おやっさん」、女性のことを「ねえさん」と呼び、「来る者は拒まず、去る者は追わず」が信条だという。
作業を終えた17時すぎ、避難所になっている小学校の校庭の端にある尾畠さんの拠点で、話を聞いた。木陰スペースにシルバーの軽ワゴン車をとめ、そこで寝泊まりしているのだ。
ちなみに、ここは撮影スポットにもなっていた。尾畠さんが活動で不在している日中は、住民やボランティアが次々と訪れ、車の中を覗き込み、記念写真を撮っていた。
尾畠さんが一人で拠点に戻ってくると、年配の女性が現れて差し入れの焼きそばを渡す。
「今日もありがとうございました。私は体が悪くて作業ができない。本当に感謝しています」
こう頭を下げる女性に対し、尾畠さんは「あれ、今日は泊まりに来たの?」とジョークを交えながら軽妙にやりとりする。尾畠さんが言う。
「善意を断るわけにもいかないでしょう。金銭は一切受け取りませんが、差し入れであればありがたくいただきます。ただ、どうお返ししていいのか。これが悩みです」
ボランティア仲間、住民、そしてマスコミ。自然と人を引きつける人柄はどこからきたのだろうか。尾畠さんに自らの人生を振り返ってもらった。