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ライチョウ 県内ベビーを 来春にも雌移送、人工繁殖

順調に成長しているニホンライチョウ=今年7月、石川県能美市のいしかわ動物園で(同園提供)

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 環境省などが進めるニホンライチョウの保護増殖事業で石川県能美市のいしかわ動物園に雌を移送し、六月に園内で人工ふ化した雄とつがいにさせて人工繁殖させる可能性が出てきた。早ければ来春にも実現する見通し。(田嶋豊)

 保護増殖事業は、環境省が日本動物園水族館協会などと連携して二〇一五年度にスタートした。

 本年度は、富山市ファミリーパーク、上野動物園(東京都)、那須どうぶつ王国(栃木県)など四施設で人工繁殖を試みた。大町山岳博物館(長野県)を除く三施設では、三ペアが計三十個産卵し、十二羽がふ化。富山で産卵した有精卵を移送し、ふ化した石川の雄三羽を含む計九羽(雄六羽、雌三羽)が順調に成長している。

 本年度は前年度に比べふ化率、ひなの生存率ともに向上した。野生下に近い産卵数にセーブしたことなどが奏功したとみられる。

 来年の繁殖施設もその中で議論されるが、環境省の担当者は「施設の容量など受け入れ可能かどうかの課題はあるが、飼育繁殖地を増やすことは技術の確立にもつながる」と強調。ライチョウは生後一年で十分繁殖でき、いしかわ動物園に雌を移送することも選択肢の一つになる。今年三月には大町から那須に、成鳥(一七年生まれの雄)を移送した実績もあり、他施設からの移送は「技術的に可能だ」という。

 環境省は近縁種のスバールバルライチョウで一〇年から飼育・繁殖に取り組んできたいしかわ動物園の実績を評価しており、人工繁殖の可能性は現実味を帯びている。感染症による死ぬリスクを軽減し、繁殖技術を確立させるためにも施設が増える利点は多く、関係者の期待も大きい。

飼育3羽、成育順調

 いしかわ動物園で人工飼育される三羽の体長は二〇センチ前後、体重はほぼ成鳥並みの五〇〇グラムにまで成長。餌を成鳥用に切り替えている段階という。

 昨年は一羽ふ化したが生後間もなく死んだ。今年はまず餌を食べることを覚えさせ、幼鳥時には体をつくるため栄養分の配合にも配慮した。成鳥の目安となる三カ月まで二十日間ほどあるが、担当者は「気を抜くことなく、まずは大人への切り替えを」と話している。

 

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