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【社説】

「国民」代表選 野党結集の道筋を描け

 一騎打ちとなった国民民主党代表選。党を取り巻く環境は厳しいが、立ち止まっているわけにもいくまい。積極的に論戦を交わし、自民党政権に代わる政治勢力の結集に向けた道筋を示してほしい。

 かつて政権を担った政治勢力としては、高揚感に乏しい党首選びと言わざるを得ない。国民民主党の代表選が告示された。津村啓介元内閣府政務官(46)と玉木雄一郎共同代表(49)が立候補し、九月四日の投開票に向けて舌戦が始まった。

 同党の国会議員は衆参合わせて六十一人。同じく旧民進党から分裂した立憲民主党の後塵(こうじん)を拝す野党第二党だ。党勢は五月の発足以来、低迷が続き、共同通信社が七月に実施した全国電話世論調査では、国民民主党の政党支持率は0・9%にとどまる。

 危機的情勢の中での代表選である。低迷する党勢の打開に向けた具体策が問われるのは当然だ。

 政権交代可能な政治勢力結集の核になろうというのなら、安倍自民党政権とは違う理念や政策を具体的に語りかけるべきだろう。

 同時に問われるべきは、野党勢力結集に向けた現実的な道筋をどう描き、実行するか、である。

 来年夏には参院選が予定され、それに合わせて衆院を解散する衆参同日選挙の可能性も取り沙汰される。自民党総裁選での三選が濃厚な安倍晋三首相率いる政権の命運や、安倍氏が目指す憲法改正の行方を左右する節目になり得る。

 そうした重要選挙で野党候補が乱立し、共倒れする事態を招けば与党が漁夫の利を得るだけだ。

 共同記者会見で、津村、玉木両氏は野党候補一本化の必要性では一致したが、津村氏は各党はあらかじめ候補者を決めず、話し合いの中で調整する必要性を強調したのに対し、玉木氏は各党がそれぞれ候補者を出し合った上で、一本化調整に入る意向を示した。

 どちらにも一長一短はあるだろうが、論戦を通じて最も効果的な擁立方法を見つけ出し、早急に具体的な調整に入るべきだ。

 安倍政権の誠実さを欠く政権運営や強引な国会運営は、野党勢力が分裂し、政権の「暴走」を止める力を持たないことが要因だ。この状態が続けば政権交代など起きようがなく、政治の変化を自民党内の「疑似政権交代」に託すしかなくなる。それは自民党の一党支配が続いた「五五年体制」への後戻りにほかならない。

 今回の代表選はその分水嶺(ぶんすいれい)である。両候補は歴史的意味をかみしめ、論戦に臨むべきである。

 

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