アルシェの物語〜In the Beginning was the Word〜   作:Menschsein
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帝都は燃えているか 5

「まず、大きく分けて二つのことを説明しなければなりません」とデミウルゴスは、自らが掛けているメガネを拭きながら話し始めた。

 

「一つ目は、偉大なるモモンガ様が為そうとしていること。そう……世界征服です」

 

「世界征服?」とデミウルゴスとアルベド以外の守護者達から驚きの声が漏れる。

 

「えぇ。その通りよ。かつて、至高の41人の御一人。“るし★ふぁー”様は、『世界の一つくらい征服しようぜ』と公言されていましたわ」

 

「私を創造してくださった“ウルベルト・アレイン・オードル”様も、そうおっしゃっていました」とデミウルゴスもアルベドの言葉に付け加えた。

 

「あ! ”ベルリバー”様も、ブループラネット様と大浴場を制作されるということで、地下六層のジャングルを散策されているときに、そう呟いていらっしゃったよ。そうだよね! マーレ」

 

「うん……。巨大樹を見上げられながら、そうおっしゃっていたかな……」とアウラの言葉にマーレも同意する。

 

「”ばりあぶる・たりすまん”様も、ペロロンチーノ様にそう言ってらしゃったのを私も記憶しているでありんす」

 

「我ヲ創造サレタ武人建御雷様モ、来ルベキ日ニ備エテ剣ヲ日々磨カレテイタ。世界ノ頂点ヲ目指スト言ワレテイタノハ、世界征服ノ事デアッタカ……」

 

 守護者たちが口々にそう言っているのをデミウルゴスは満足そうに頷く。

 

「みなさん、思い当たることがあられるようですね。そうです。世界征服です。モモンガ様は、その至高の御方々の宿願を果される為に、動かれているのです」

 

「おぉ」と守護者達から歓声が上がった。

 

「モモンガ様だけではありません。ヘロヘロ様も、世界征服のために秘密裏に動かれているようです」

 

「ヘロヘロ様も? 中々“リアル”なる世界に行かれていて、ナザリックに居られる時が少なかったようにおもえんすが?」

 

「シャルティア。おそらくヘロヘロ様は、その“リアル”で世界征服の準備を着々と進められていたのです。そして、世界征服の悲願を成就する時がついに訪れたということなのですよ。モモンガ様は、ナザリックからお出かけになられる前、ヘロヘロ様と円卓(ラウンドテーブル)でお打ち合わせをされていたと、メイドの一人が言っていました。そうですよね、セバス」とデミウルゴスは後ろに控えていたセバスに話を振る。

 

「はい。それに、ヘロヘロ様だけでなく、久しくナザリックを訪れていなかった方々五名とも、モモンガ様はお打ち合わせをされていたようです」

 

「そうでしたか! ヘロヘロ様だけでなく……。至高の御方々が世界征服に向けて動き出されているということですね」

 

「それならさぁ、デミウルゴス。至高の御方々が世界征服の為に活動されているというのに、私たちはナザリックに居ていいのかなぁ」

 

「で、でもお姉ちゃん……。ナザリックを守護するよう守護者として僕たちは創造されたのだし……。それに、外は怖いかなぁ……」

 

「我々ガ此ノ地を守ッテイルカラコソ、至高ノ御方々ハナザリックヲ離レテ動クコトガ出来ルノデハナイカ?」

 

「確かにそう考えることができます。しかし、そうではありません。モモンガ様は私たちに酷く落胆されたご様子であられました。最後まで残ってくださっていたと私たちが思っていたモモンガ様が突然、ナザリックから御姿が見えなくなる。私たち守護者が、いえ、ナザリックの全存在が不安と絶望に打ちひしがれているであろうとモモンガ様は、わざわざ、このナザリックに足をお運びくださったのです! しかし、私たちの状態、そしてナザリックの惨状を見て、落胆されたのです! そして私たちを、『お前達は一体なんなんだよ!』と私たちを叱責されたのです……。セバス!」

 

「はい。なんでしょう」

 

「ナザリックの随所で、掃除が行き届いていない場所が散見されますが、それは一体どういうことでしょう?」

 

「申し訳ありません。プレアデス、エクレア、一般メイドたち、ついに自分達が至高の御方々に見捨てられたのではと思い、机を拭くにも、自らの瞳から落ちる涙を拭くような状態でして……。掃除が行き届いていないことは承知していたのですが、あまりに気の毒で無理を強いるのことができずにおりました」

 

「つまり、至高の御方々が滞在されるに相応しい準備が出来ていなかったと?」

 

「……その通りでございます」

 

「セバスが悪かったということでありんすか?」

 

「いえ。そうでははないわ。私も、守護者統括という地位に預かりながら、御身自ら冒険者に扮してナザリックに来られたのに拘らず、防衛体制が万全であることを示すことができなかった……。セバスだけを責めることはできないわ」

 

「私も、恥ずかしながら現実逃避のように、グリフォンやワイバーンの骨で、玉座を作っておりました」

 

「私も、守護領域の巡回をしないで、ペットたちと遊んでいることが多かったかなぁ」と気まずそうにアウラが口を開く。

 

「私も、ヴァンパイア・ブライド達とベッドに入りびたりでありんした」

 

「ぼ、僕も巨大樹の家の中で、本ばっかり読んでいたかなぁ……」

 

「我モ訓練ニ身ガ入ッテイナカッタ。主君ニ捧ゲルベキ剣ヲ錆ビツカセテシマッテイタ」

 

「上に立つべき私たちが、このようなていたらくであった。それを知ったモモンガ様は、落胆され、そして叱咤されたのです。そして、モモンガ様は、私たちに『お前達は一体なんなんだよ!』と問いかけられたのです」

 

「私の愛するモモンガ様から、自分自身は何かと問われたら、答えは一つしかないわ」とアルベドは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)に映っているモモンガに向けて膝を折った。

 

「守護者統括、アルべド。私は至高の御方々、特に愛するモモンガ様に絶対の忠誠を捧げる存在でございます」

 

「第七階層守護者、デミウルゴス。失態の汚名を灌ぐ機会をお与えになる慈悲深きモモンガ様。私は至高の御方々に自らの忠義すべてを捧げる存在でございます」

 

「第一、第二、第三階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン。私は、私の全てを至高の御方々に捧げる存在」

 

「第五階層守護者、コキュートス。我ハ至高ノ御方々ノ剣」

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。私は、絶対の存在であられる至高の御方々の手足となって働く下僕です」

 

「お、同じく、第六層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。お、お姉ちゃんと同じです」

 

「ナザリック地下大墳墓の家令(バトラー)。セバス・チャン。至高の御方々に忠義を捧げる犬でございます」

 

 守護者達、そしてセバスは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)に映っているモモンガに対して、それぞれ自分自身が何者であるか、それを次々と表明をしていった。

 

「皆がそれぞれ自分の存在意義(raison d'etre)を確認できてうれしく思います。さて、それでは、もう一つの大事な事をお伝えします。モモンガ様は、私たちに、その汚名を雪ぐ機会をお与えになってくださっているのです。至高の御方々の宿願を、我々にも参画を許してくださっているのです! これほどの喜びがありましょうか! 場所は、モモンガ様と一緒にいた小娘が言っていた国。バハルス帝国でしょう……」

 

「バハルス帝国……聞いたことのない国ね。どのあたりにあるのかしら?」とアルベドは少し思案した後、デミウルゴスに尋ねた。

 

「私にもバハルス帝国の詳細は分かりません。何処にあるかもです。至高の御方々がどのように世界を征服されるご計画なのか、それも私たちは理解する必要があります。ですが、モモンガ様が私たちを導こうとしてくださっているということは間違いがありません! 皆さん、可笑しいと思いませんか? 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で簡単にモモンガ様の御姿を見ることなどできるでしょうか? モモンガ様なら、阻害魔法など容易のはずです。しかし、我々はモモンガ様の御姿を見ることができる。つまり、モモンガ様は、我々に後を追ってこいと命じているのです!」<input name="nid" value="91825" type="hidden"><input name="volume" value="40" type="hidden"><input name="mode" value="correct_end" type="hidden">




デミウルゴスの頭が良すぎて、伏線を上手く作者が纏められない件……。







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