長期金利の「上昇容認」は政策の修正か
自民党総裁選が9月7日告示、20日投開票で行われる。すでに石破茂元幹事長が出馬を表明しており、現職で3期目を目指す安倍晋三総裁(首相)と一騎打ちになる見通しだ。
安倍氏は会合で、「6年前は谷垣禎一総裁の出馬断念があったが、今回はよーいドンで新しく総裁を選ぶのとは違う。現職がいるのに総裁選に出るというのは、現職に辞めろと迫るのと同じだ」と対抗馬を恫喝まがいに牽制した。派閥の多くは早々に安倍総裁支持を打ち出し、立候補が予想されていた岸田文雄政調会長も出馬を断念した。石破氏支持を打ち出すかにみえた竹下派も事実上自主投票となり、半数以上の議員が安倍氏に投票する見込みだ。安倍氏はすでに議員票の3分の2は固めたとされる。
問題は6年前に石破氏が半数以上の票をさらった地方票の行方。しかし「安倍氏では選挙を戦えない」という声があった6年前と今とではまったく様子が異なる。安倍首相が先導してきたアベノミクスに国民の一定の支持があるからだ。
安倍氏もアベノミクスの成果を強くアピールしている。8月12日に山口県下関市で安倍首相が行った講演では、こんな発言をしている。
「5年前に日本を覆っていた重く暗い空気は、アベノミクスによって完全に一掃することができた。20年近く続いたデフレからの完全脱却に向け、今日本は確実に前進している」
確かに、デフレに喘いでいた5年前と比べれば、空気はだいぶ明るくなったのは事実だ。だが、「着実に前進している」のかどうかについては、異論も多い。野党だけでなく、金融界の専門家の間からも「アベノミクスは失敗した」という声が上がっている。
そうした声が一段と強まったのが今年7月31日。日本銀行が金融政策決定会合を開いて、金融緩和策の修正を決めた時だった。長期金利の上昇を「0.2%程度」まで容認するという政策を巡って、アベノミクスで推進してきた大規模な金融緩和策の修正と捉える専門家が少なくない。黒田東彦総裁は「金融緩和の持続性を強化するため」として、長期金利を「0%程度」としてきたこれまでの政策の大枠は維持する姿勢を強調したが、政策の成果が上がらないため、修正に踏み切ったとみる見方もある。
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