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 以前、私が執筆した解説記事が間違っているとSNSに書かれたことがある。ある問題が起こっていることを取り上げた記事に対して、その問題は既に解決されており、現在は存在しないと指摘された。

 私や編集部に宛てたものではなく、あくまで個人的な書き込みである。ただ、そのアカウントは日頃から有用な情報を発信しているので、私が事実関係を間違っている可能性は高いと考えた。記事に誤りがあれば、訂正しなければならない。そこで、もう一度念入りに確認した。

 ところが、どうやってもその問題が解決されていることを確認できない。OSのバージョンが異なる複数のパソコンでも確認したが、状況は同じだ。指摘した人の検証環境では問題が起こらなかったのだろうが、よく調べてみると、この人が勘違いをしている可能性が高いようだった。

 本来は、その人に連絡を取って確認すべきだったのかもしれない。しかし、私や編集部に直接、連絡が来たわけではなく、あくまでSNSの個人的な書き込みに過ぎない。こちらから下手に連絡すると「誤りを頑なに認めようとしない記者が言いがかりをつけてきた」と受け取られて炎上する可能性がある。

 私の仕事は読者に正しい情報を提供することだ。記事の誤りを確認できない以上、できることはない。この件にはこれ以上深入りしなかった。

 念のために言っておくと、記事を読んだ人が誤りを指摘すること自体には何の問題もない。むしろ、誤りがあるなら積極的に教えてほしいと考えている。誤りが放置されていると、読者に誤った情報を伝えていることになるからだ。

 気になったのは、このアカウントの指摘を無条件に正しいと信じる人が多いように見えたことだ。このときの指摘自体は、このアカウントがまわりに正しい情報を伝えようと意図したものであり、デマとは呼べない。しかし、メディアへの不信を悪用されて事実無根のデマを流されることもある。

「広告主の言いなり」というデマ

 同僚の記者が書いた記事がネットで炎上したことがあった。ある企業の取り組みがおかしいと批判されている件を取り上げた記事だ。記事の中では、その企業の姿勢に問題があることもきちんと指摘しており、個人的には冷静な解説記事だという印象だった。実際、この記事を書いた記者は、その企業の担当者からクレームめいた連絡を受けたという。