海外旅行保険事故データ
ジェイアイ傷害火災保険から、「2017 年度 海外旅行保険事故データ」が公開された。
ジェイアイ傷害火災 トラブルデータ(html)
2017年度 海外旅行保険事故データ(pdf)
ここでは、海外旅行保険における「事故発生確率」など統計情報がまとまっている。
ジェイアイ傷害火災保険はJTBとAIGの合弁会社で、海外旅行保険の大手であるらしい。
統計情報のサマリーは以下。
1. 事故発生率は 3.42%(29 人に 1 人)
2. 補償項目別の事故件数 1 位は「治療・救援費用」、2 位は「携行品損害」、3 位は「旅行事故緊急費用」
3. 世界各地で高額医療費用事故※が発生 治療・救援費用の保険金支払最高額は、3,588 万円
4. シニア層(65 歳以上)の高額事故発生率は、昨年度と同様に 65 歳未満の約 4 倍
事故発生確率は、3.42%。
29人に1人ときくと、なかなかの確率だなぁと。
不安になってくるが・・・
この数値、本当だろうか。
なんか変な数字のトリックとか、入ってないだろうか。
以降、他に参照する数値との兼ね合いで、2016年度版の数字をちぇけちぇけ。
(ちなみに2016年も2017年も、数字は大して変わらない)
2016年度 海外旅行保険事故データ(pdf)
事故発生確率は3.4%?
2016年度でいうと、事故発生確率は3.4% (29人に1人)。
確率は、ジェイアイ傷害火災保険の「保険金支払件数/保険加入者数」から算出されている。
「腕にギブスをしている人」のアイコンで「29人に1人はケガをしてるのか?」という印象をうけるが、そういうことでもない。
調査結果の内訳には、荷物の盗難=「携行品損害」や、飛行機の遅延=「旅行事故緊急費用」を含んでいる。
「治療・救援費用」として保険の恩恵を受けたのは、51%。
さきほどの「事故発生確率=3.4%」の半分、1.7%が「治療・救援費用」の補償を受けている。
海外旅行保険に入っていた人の内、1.7%が「治療・救援費用」の補償を受けた。
海外旅行って、1.7%の確率で治療・救援のお世話になる可能性があるのね・・・
ただし、300万円以上の支払いが発生した「高額医療費用事故」の半数がシニア(65歳以上)であることを考えると、低額を含む「治療・救援費用」全体の半分くらいもシニア(65歳以上)なんじゃないかという気がするけど。
「治療・救援費用」の高額医療費用事故のうち、半数弱がシニア層(65 歳以上)
いずれにしろ、保険が効かない海外で病院のお世話になる場合、高額な治療費が発生する場合もある。
ジェイアイ傷害火災保険の過去最高額でいうと、9,335 万円(2014年度)。
2014年度 海外旅行保険事故データ(pdf)
過去最高の治療・救援費用保険金支払 9,335 万円の事故が発生
さて。
「事故発生確率=3.4%」だとか、「29人に1人」だとか、確率の数字は出ている。
しかし規模感はどうなんだろうか。
支払件数と契約者数
ジェイアイ傷害火災保険の「海外旅行保険」における「支払件数」は、別資料に数字がでてくる。
2016年度の支払件数は、42118件。おおよそ4万件。
ジェイアイ傷害火災保険 ディスクロージャー資料(pdf)
P42.品質向上への取組みについて
ちなみに申請が却下されて保険金がおりなかった「お支払対象とならなかった件数」は、約2千件。
おおよそ5%は、却下されてる感じか。
※ただしファーストコンタクトの電話とかで「対象外ですねぇ」という感じになるパターンは、ここに含まれてないかも
支払件数は4万件=事故発生確率の3.4%。
逆算すると、ジェイアイの契約数は120万件くらいか。
ジェイアイの年間契約数は「年間100万人を超える」らしいので、だいたい合ってそう。
ジェイアイの収入保険料の約8割は旅行保険。
年間100万人を超える海外旅行保険の販売実績があります。
https://tabiho.jp/overseas/merit/about.html
この契約者数と支払件数でみても、事故発生確率3.4% (治療・救援は1.7%)というのは大体合致する。
(100万人超≒120万人のうち、4万人に支払い→3.4%)
3.4%というのは、本当だったか。
そう考えると、事故発生確率、意外と高いよなぁ・・・。
しかし、もうちょい見てみる。
再びの「事故発生確率」
海外旅行保険の、業界全体では「事故発生確率」はどうだろうか。
「損害保険料率算出機構」の統計資料をチェック。
https://www.giroj.or.jp/publication/statistics/statistics_2016_5.pdf
「第8表 海外旅行傷害保険 統計表 2016」。
2016年の契約数は、350万件。
(そう考えると契約数120万件のジェイアイは、全体の1/3くらいを持ってるのか?)
ちなみに被保険者数は430万人。
(1契約で複数の被保険者がいるからと思われる)
治療等が発生した「被害者数」は、14万人。
人数で割ると、業界全体での事故発生確率は3.2%。
んー。
やっぱジェイアイの「事故発生確率3.4%」 (治療・救援は1.7%)というのは、合ってるのか。
まぁ、半分はシニア(65歳以上)なんだろうけど。
そのほか
ちなみにジェイアイの「海外旅行保険事故データ」、確認できた「最も古い資料」は以下。
ジェイアイ傷害火災 トラベルデータ
1999年~2000年では、事故発生確率は1%台だった。
その後徐々に増えて、現在は3%台。
3%台まで増えた理由は知らない。
(2001年に1%を超えた理由は記載があり、「同時テロの影響で航空機遅延が大量に発生したため」)
ジェイアイによる訴求ポイントで面白かったのは、「クレカの保険じゃ足りない場合もあります」。
2016年度は治療・救援費用保険金支払額1,000万円以上の高額医療費用事故が7件発生しております。
例えば、これがクレジットカードの保険のみ(ゴールドカードでも治療費用・救援費用ともに200~300万円程度)であった場合は、多額の自己負担が発生する可能性がありました。支払いが難しい場合は、必要な医療サービスの提供が受けられないことにつながり、命に関わる場合もあります。
海外旅行保険は、加入の有無だけでなく、加入しているプランの補償内容も重要だといえます。
https://www.jihoken.co.jp/data/trouble.html
なるほど。
そうかもしれない。
とはいえ、高額治療費が発生する確率はかなり低い。
同資料によると、300万円以上の治療費が発生したケースは70件。
契約者数を120万人とすると、70件=0.0003%。
ま、当たれば痛いのは、変わらないけど。。。
そのための保険だしね。
自分も、ちょっと旅行保険を見直してみるのもいいかもな、と思った。
クレカか、有償保険か。。。
できればクレカで済ませたいんだけど。
どうだろうな。
そんな感じ。