『未来のミライ』 血族関係にこだわるのは細田守作品すべてに通じるのだが、その不快さがこれほどあからさまになったことはない (柳下毅一郎)
→公式サイトより
『未来のミライ』
監督・原作・脚本 細田守
主題歌 山下達郎
出演 上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治
これがどういう映画かというと、横浜市磯子区に住む一家の物語である。父親(星野源)は建築家、母(麻生久美子)は編集者。一人息子のくんちゃん(上白石萌歌)の下に、新たにミライちゃんという妹が生まれる。
この家、建築家が建てた家だからなのかなんなのか、住む人のことをあまりに考えてなさすぎのなかなかどうして不思議な作りになっている。家は斜面の上に、そのまま平屋で建てられている。一階から四階までまっすぐ通した階段があって、玄関あがって一階が子供部屋。その上、二階が中庭になっていて、三階部分がLDK。そしてそのさらに上に夫婦の寝室があるらしい。なんでこんな変な間取りなのか。バリアフリーでもなんでもないので、手伝いにきてくれた祖母からも「建築家と結婚すると、変な家に住まなきゃならないんかね」なんて言われてるていたらく。それにしても毎日三階までの階段を登り降りするのがデフォルトって、使いにくいにも程があるんじゃなかろうか。
さて、そんな不便な家に赤ん坊がやってきた。実はくんちゃんのときには母親が産休をとって子育てに全力を投じていた。だが、今回は父親が建築事務所を退社してフリーランスになったので、母は早々に仕事に復帰し、家にいる父親がメインで育児をやることになった。育児素人の父親、母親からは「これまで全然興味もってなかったでしょ!」と事あるごとに嫌味を言われるのだが、それも当然のおっかなびっくり育児である。自然赤ん坊にかかりっきりになるので、放置されるくんちゃんは不満だ。しまいに嫉妬のあまりミライちゃんを愛用のプラレールで殴ったりする。激怒する母。
「新幹線は赤ちゃんをぶつものじゃありません!」
「新幹線じゃないもん、新特急あずさだもん」
まあそういうわけで鬱憤をためて一人遊びしていたくんちゃんの前に女子高生のミライ(黒木華)が忽然とあらわれる。ひょっとして、未来のミライちゃん?
「ねーねー、節句を過ぎても雛人形出しとくと婚期遅れるんだって。あんた、手伝って片付けてよ」
というわけで「くんちゃんがこの家に来る前にはプリンスだった」という人間の姿になった愛犬と、ミライちゃん、くんちゃんの三人がお父さんに見られぬようにそーっと雛人形の片付けをするという一大サスペンスがはじまる……ってこれどういう映画なんですか?
(残り 1048文字/全文: 2156文字)
この記事の続きは会員限定です
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
タグマ!アカウントでログイン
外部サービスアカウントでログイン
既にタグマ!アカウントをお持ちの場合、「タグマ!アカウントでログイン」からログインをお願いします。
(Facebook、Twitterアカウントで会員登録された方は「Facebookでログインする」「Twitterでログインする」をご利用ください)
tags: 上白石萌歌 吉原光夫 宮崎美子 山下達夫 役所広司 星野源 福山雅治 細田守 麻生久美子 黒木華