「スター・ウォーズ」出演のアジア系女優、差別について語る
『スター・ウォーズ』の最新作に出演したアジア系米国人女優ケリー・マリー・トランさんが、自身が受けた性差別・人種差別被害について初めて口を開いた。
トランさんはベトナム難民の両親を持つ。『スター・ウォーズ」シリーズで主要キャラクターを演じた初めての非白人女性。ソーシャルメディア上での差別被害を受け、6月に自分の投稿を削除した。
21日付のニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したトランさんは、ソーシャルメディア上での差別被害は、自分が子どものころに体験した気持ちを思い出させたと語った。
寄稿には文化的な恥や人種によるステレオタイプ、狭い美の定義しかない社会について、彼女の気持ちがつづられている。
トランさんは「彼らの言葉は、私が人生でずっと聞かされてきた考え方、彼らに似ていないというだけで私は「他人」で、ここに帰属せず、劣っているという考え方を補強するものだった」と話した。
「一種類の人間、一種類の性別、一種類の肌の色、一種類の存在が権力を維持できるよう、社会が巧妙に作り上げたこれらの言葉や物語を私は信じていた」
また、両親と自分が米国に渡ってきたとき、米国人が発音しやすいように名前を変えていたことを明らかにした。
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トランさんは昨年公開された「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」で、レジスタンスのエンジニア、ローズ・ティコを演じた後、激しい攻撃を受けた。
トランさんはこの体験について、攻撃のメッセージで「心の奥底にしまっていた、おそらく子どもの頃に持っていた気持ちを思い出した。9歳の時、他の子供たちが私の真似をするのが嫌になってベトナム語を話すのを止めた時と同じ気持ちだった」と述べている。
しかし、トランさんは自分が洗脳されていたことに気付いたと語り、未来への希望についても話した。
「私は有色人種の子供たちが白人になりたいと願いながら思春期を過ごすことのない世界に生きたい。女性が容姿や言動、ただそこにいることについて吟味されない世界に生きたい。全ての人種や宗教、社会・経済的階級、性指向、性自認、能力について、みんながありのまま、人間として受け入れられる世界に生きたい」
寄稿は、「私はケリーとしてみんなに知られているが、私の本当の名前はロアンだ。私はまだ始めたばかりだ」
トランさんの寄稿は、米国で人種の多様性が反映されるべきだという議論が再び盛んになるなかで発表された。
先に公開された、アジア系俳優を多数起用した「クレイジー・リッチ!」が興行収入で1位になったほか、米ネットフリックスの映画「To All the Boys I've Loved Before」は、原作小説そのままにアジア系米国人を主人公にしたことで絶賛されている。
トランさんが寄稿で見せた率直さは、インターネット上のファンに温かく迎えられている。
あるソーシャルメディア利用者は、「全てにケリー・トランを起用して!!! 彼女の本名を使って!!!」とつづった。
別のユーザーは、「未熟で女性嫌いの男性ファンがどんなに頑張ってもスター・ウォーズを汚すことはできない」と話した。
インターネット上で誹謗中傷を浴びた「スター・ウォーズ」出演者はトランさんだけではない。
2016年の「スター・ウォーズ フォースの覚醒」から主人公のレイを演じているデイジー・リドリーさんも、オンライン上での侮辱を受けて一時期インスタグラムを削除していた。
同作品のライアン・ジョンソン監督はトランさんを擁護。こうしたファンを「子どもじみた大人たち」と呼んだ。
女性キャラクターを排除した「男性限定」版をファンが作った際には、共演者のマーク・ハミルさんやジョン・ボイエガさんが揶揄(やゆ)した。
ボイエガさんはツイッターで出演俳優を攻撃しないよう呼びかけ、「スター・ウォーズや登場人物が気に入らないなら、意思決定者がいることを理解するべきで、俳優を侮辱しても何も起こらない」と述べた。
「あなたの態度が無礼なら、誠実に対応される権利はない。チケットを買っていても!」