山形大学×EV飯豊研究センターで、センター長の男性教授が職員に対してパワハラを繰り返していた問題は、今年1月に掲載した『学生がアカハラ受け自殺か…ある国立大学で起こった裁判の行方』(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54181)で触れた。
その後、事態は大きく動いた。山形大学ではパワハラの実態について調査する特別対策委員会が立ち上がり、その後第三者も加えて設立された調査委員会が、今年6月、センター長によるパワハラを認定したのだ。
これで一件落着、かと思いきや、その処分内容に、大学内部は揺れているという。パワハラに対する処分としては、あまりに軽すぎるのだ。根本的な問題はなにも解決していないうえ、喉元過ぎれば熱さを忘れるとでも言わんばかりの、軽すぎる処分。山形大学でなにが起こったのか。関係者に話を聞いた。
「平均賃金1日分の2分の1を減給」
これが、山形大学×EV飯豊研究センターのセンター長の教授に対して、山形大学が7月23日に決定した懲戒処分だ。持って回った言い方をしているが、減給される金額は、約1万円だ。パワハラが認定された教授の処分としては、あまりにも軽すぎるとして、大学の内外から驚きと批判の声が上がった。
まず、調査委員会は、センター長のパワハラを次のように明確に認定していた。
これだけのパワハラが認定されて、なぜ減給約1万円なのか。
原因の一つは、山形大学の懲戒処分の基準には、パワハラについての規定がなく、セクハラの規定を準用することになっている。
それでもセクハラの規定(ア)には、職場による上司・部下等の関係に基づく影響力を用いた行為は、懲戒解雇、諭旨解雇または停職と定められている。今回のケースは、調査委員会の認定通りに考えれば、停職以上の処分になるはずだ。
ところが大学の処分理由は、「大学教員として著しく品格と適正を欠いたハラスメント行為」と、パワハラから単なるハラスメント行為にすり替わっていたのだ。その上で、「相手の意に反する行為を行った場合は停職、出勤停止又は減給」と定める規定(イ)を採用。その中でも、最も軽い減給、それも約1万円の減給という処分が選ばれたのだった。
8月2日に行われた定例記者会見で、小山清人学長は処分の根拠について問われたが、「うまく説明するのは難しい」と明言を避けた。(ア)を適用しなかった理由については、「パワハラの言葉自体に上下関係が含まれるため」と発言したと報じられている。
これに対して、パワハラ問題を追及してきた山形大学職員組合の仁科辰夫執行委員長は、「小山学長の発言と大学の処分は卑劣な行為」だと指摘する。
「学長は教授をパワハラで処分するわけにいかなかったことを、自ら白状しているようなものです。職員Aさんは、16年9月に被害を大学に相談したことで、不自然に雇い止めされています。4年間も働いていたにもかかわらず、です。パワハラも雇い止めもなかったことにしようという、卑劣で、姑息で、いかがわしい態度が如実に表れた処分です」