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.国際  投稿日:2018/8/21

中国スパイ 韓国で日本を糾弾


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視 」

【まとめ】

・米有力上院議員補佐官が中国のスパイと指摘された。

・補佐官解雇後も財団事務局長として米韓で反日活動を展開。

・慰安婦問題利用した米国内での反日活動の主役は中国共産党。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=41629でお読みください。】

 

中国政府のスパイとされた元アメリカ議員補佐官がアメリカの代表として、韓国を訪れ、慰安婦問題で日本を糾弾し、安倍政権に説教をする———

どうみても奇異で不当な情景である。だがそんなグロテスクな事態が実際に起きていたのだ。日本にとって教訓の多い出来事でもあった。

アメリカ民間組織の「社会正義教育財団」(サンフランシスコ市在)の事務局長ラッセル・ロウ氏は2017年10月、韓国のソウルをマイク・ホンダ下院議員とともに訪れた。

▲写真 マイク・ホンダ前米下院議員 出典:マイク・ホンダ氏Twitter

数年前に設立されたこの財団は、慰安婦問題で日本側を追及し、この問題をアメリカの子供の教育に盛り込むことを活動目的とする組織である。ホンダ氏はカリフォルニア州選出の民主党下院議員として長年、慰安婦問題での日本批判を続け、2007年には下院での日本糾弾決議採択の主役となった。2016年の選挙では同じ民主党の新人候補に敗れている。

さてその二人が韓国でリベラル系とされる主要新聞「ハンギョレ」のソウルの本社に招かれ、慰安婦問題について記者のインタビューに答えて、見解を語った。その内容をハンギョレ日本語版サイトの2017年10月24日付の記事(※リンクはWEB版)から紹介しよう。

「安倍政権の政策ないし安倍首相の発言自体が、反知性の証拠だと考える。(強制連行の立証)資料がないと言っているが、日本政府が体系的に女性を動員し誘拐したという資料が明確にあるので、日本政府が責任を負わなければならない。だから河野談話まで出たのではないか。証拠が不十分なのではなく、現在の日本政府に道徳的指導力がないためではないか。日本軍『慰安婦』動員に強制性はなかったという安倍晋三首相と日本政府の主張は話にもならない

以上の言葉はハンギョレの記事によると、ホンダ氏が発したとされるが、ロウ氏もすぐにまったく同意したとされている。そのうえで同記事はロウ氏自身の発言として以下の内容を載せていた。

「資料がないということは事実でない。問題の一つは、その資料が中国語、日本語、韓国語で書かれているため米国社会にきちんと知らせられずにいるということだ。だから私たちの財団では、『慰安婦』関連事実を米国社会にきちんと知らせることを教育活動として優先している」

「慰安婦問題に対する日本政府の誤った対処は、1980年代から本格化した。その時から日本政府は数百万ドルを米国の学者、研究者相手のロビー活動に注ぎ込んだ。大多数の白人はその事実をよく知らないので、事実に基づいた研究の成果と日本政府の主張の間で混乱を来している。慰安婦問題に関する真実を米国民に知らせる努力を妨害しようとする日本政府のばらまきとロビー工作にどのように効果的に対処するか、それが問題だ」

さて以上のような「発言」には事実のまちがいが多々ある。そんなまちがいやゆがみに基づくこの新聞の記事には全体として以下のような見出しが並んでいた。

「慰安婦の真実を知らせる、それが正義だから」

「マイク・ホンダ前米下院議員-ラッセル・ロウ社会正義教育財団事務局長」「立証資料が不十分という安倍政権 それ自身が道徳的指導力の不在を証明」

「米国社会にきちんと知らせることに注力 カリフォルニアで講義始め成果」

「長期にわたり日本政府のロビーに振り回された米国」

「韓国人の怒りがよくわかっていなかった」

こうした記事を読めば、アメリカ人の代表がアメリカという立場から韓国で慰安婦問題について日本を糾弾している、と思うのが一般の反応だろう。その発言の内容が事実に即していないとしても、アメリカ側の一部にある意見だと思うことになろう。

ところがこのいかにもアメリカを代表するかのようなラッセル・ロウという人物が実は長年、中国政府のスパイだったという指摘がいま当のアメリカ側で明らかになったのだ。控えめにみても、アメリカ側の慰安婦問題追及には中国政府の意図や工作が浸透していたことの証左といえそうである。

ロウ氏をめぐる最近の新事実の展開は次のようだった。アメリカ連邦議会上院の民主党有力メンバーのダイアン・ファインスタイン議員(カリフォルニア州選出)は8月5日に声明を出し「5年前の2013年に当議員事務所に20年ほど議員補佐官として勤務してきた人物が中国のスパイだということをFBI(連邦捜査局)から通告され、党事務所としての独自の調査をしたうえ、(その通告を受け入れ)その人物を即時、解雇した」と発表した。

▲写真 ダイアン・ファインスタイン米上院議員 出典:ダイアン・ファインスタイン氏オフィシャル・ホームページ

同議員のこの動きはアメリカのメディアが「ファインスタイン議員の補佐官が中国の対外諜報機関の国家安全部に秘密裡に協力して、種々の情報を中国側に提供するスパイ活動を長年、続けてきた」と報道したことへの対応だった。他のメディアがすぐにこの補佐官がラッセル・ロウ氏だと報道した。

ファインスタイン議員もFBIもこの「ロウ氏が中国のスパイ」という指摘を否定しなかったため、この情報は全米に広がった。トランプ大統領も「上院の情報委員会の委員長まで務め、いま『ロシア疑惑』を追及するファインスタイン議員が自分の補佐官に中国スパイを使っていたことは偽善だ」とまで述べた。

ファインスタイン議員といえば、全米でも最も知名度の高い女性政治家の一人である。サンフランシスコ市長を務め、連邦議会の上院議員はもう25年もの経歴となる。この間、上院では情報委員会の委員長のほか外交委員会の枢要メンバーなども務めてきた。いまも民主党リベラル派としてトランプ政権には対決姿勢をとり、とくにトランプ陣営とロシア政府機関とのつながりをめぐる「ロシア疑惑」でも活発な大統領批判を展開している。

さらに複数のアメリカのメディアはロウ氏が中国政府の国家安全部にいつ、どのように徴募されたかを報じ、同氏が長年、サンフランシスコの中国総領事館を通じて、同安全部に情報、諜報を流していた実態なども明らかにした。ただしロウ氏は逮捕や起訴はされておらず、その理由は「中国への協力が政治情報提供だけだと訴追が難しい」と説明されている。

米側での各メディアの報道を総合すると、ロウ氏はファインスタイン議員事務所では所長として地元カリフォルニアでのアジア系、とくに中国系有権者との連携を任され、その間には中国当局との秘密の連絡も定期的に保ってきた。

▲写真 ラッセル・ロウ氏が事務局長を務める「社会正義教育財団」は慰安婦問題を前面に打ち出している 出典:社会正義教育財団ホームページ

アメリカ国内での慰安婦問題を調査してきた米人ジャーナリストのマイケル・ヨン氏によると、ロウ氏はとくに歴史問題で日本糾弾を続ける中国系反日組織「世界抗日戦争史実維護連合会」や韓国系政治団体「韓国系米人フォーラム」と議会を結びつける役割を果たしてきた。ホンダ議員ともロウ氏は長年、緊密な協力関係を保って、アメリカ議会での慰安婦問題糾弾のキャンペーンを続けてきたという。

2013年末までにはファインスタイン議員事務所を解雇されたロウ氏は現在は「社会正義教育財団」の事務局長として活発に活動し、グレンデール市の慰安婦像設置などにも関与したことが多数の報道により明らかにされた。

同財団は、学校教育の改善という標語を掲げながら、実際には慰安婦問題に関する日本糾弾が活動の主目標であることが財団の紹介サイトにも明記されている。同サイトは「日本は軍の命令でアジア各国の女性約20万人を組織的に強制連行し、性奴隷とした」という事実無根の主張も掲げている。ロウ氏のホンダ氏との訪韓もそうした慰安婦関連の活動の一環だったわけだ。

こういう人物が実は中国の長年のスパイだったとアメリカ側で断じられたことは、日本の慰安婦問題にも中国当局がこうした工作員を投入して、政治操作を続けてきたという実態を改めて物語るともいえそうだ。

▲写真 マイケル・ヨン氏 出典:マイケル・ヨン氏Facebook

前述のヨン記者は「アメリカ国内での慰安婦問題を使っての反日活動は表面上、韓国系勢力が主体であるかのようにみえ、そのように認識する向きも多いが、主役はあくまで中国共産党なのだ。長年、アメリカ議会の意向を反映するような形で慰安婦問題を追及してきたロウ氏が実は中国政府のスパイだったという事実はこの中国の役割を証明したといえる」と解説していた。

トップ画像:ラッセル・ロウ氏 ダイアン・ファインスタイン米上院議員事務局長(当時)写真左 2011年9月11日 出典 facebook CSUEB


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

古森義久

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