■明治通りは「本線」ではなかった
池袋から渋谷までの明治通りの大部分は、東京都が都市計画道路として定めた「環状第5の1号線」に当たる。
[左]東京都が都市計画道路として定めた「環状第5の1号線」の概要。2004年12月時点の資料から抜粋した。大部分は明治通りとして既に開通している。点線は事業中の区間で、拡幅工事などが進められている(資料:東京都)
[右]新宿駅周辺の明治通りと御苑通りの位置(資料:東京都などの資料を基にケンプラッツが作成)
ただし、明治通りのうち新宿3丁目交差点や新宿4丁目交差点を通る新宿駅周辺の区間は、環状第5の1号線の本線ではなく「支線」として位置付けられている。都市計画上の「本線」となっているのは、新宿駅の北東で明治通りから東側に分岐して南下する御苑通りだ。
御苑通りは4~8車線の広い道路だが、交通量は支線である明治通りほど多くない。本線にもかかわらず、途中で行き止まりになっているからだ。
明治通りから分岐して御苑通りを南下すると、新宿区内藤町にある新宿御苑そばの交差点で右折か左折を求められ、トンネルに入った甲州街道の脇にある地上部の側道などに進むしかない。直進方向の行く手は工事用のフェンスに阻まれる。
フェンスのそばから中をのぞくと、真っすぐに続く空き地と、その先にトンネルが見える。空き地をたどると、渋谷区内にある明治通りの千駄ヶ谷5丁目交差点付近に行き当たる。
内藤町の交差点から南方向に進んで、千駄ヶ谷5丁目交差点付近まで至る約800mの区間が、長らく未開通となっていた環状第5の1号線の本線だ。完成すれば、既にある御苑通りと一体で、新宿駅付近で混雑する明治通りを迂回するバイパスとなる。
■半世紀以上待たされた2つの理由
東京都が環状第5の1号線を都市計画決定したのは、戦後間もない1946年3月のことだ。東京の骨格を担う幹線道路として4車線を確保することとし、拡幅工事などを進めてきた。
しかし、内藤町の交差点から千駄ヶ谷5丁目交差点付近までの約800mは唯一、細い道路さえ存在しない区間として残されてきた。
主な理由は2つある。1つは、新宿御苑の敷地を通過する道路だったからだ。
新宿御苑は、環境省が皇居外苑や京都御苑と並んで所管する国民公園だ。毎年春には、総理大臣主催の「桜を見る会」などが開かれることでも知られる。