確定申告だマイナンバーだと「お上」が宣伝したいことはしつこく広報されるが、役所に行って申請するだけで受けられる補助・助成の数々はあまり知らされていない。知れば得する制度を総ざらい!
「税金」と言えば、「払うもの」。そう思うのが、ごく自然な反応だろう。だが、世の中には税金が「戻ってくる」場面も実は、多々ある。
「とくに、いま、制度が目まぐるしく変わっているもののひとつが、『空き家』の取り扱いです」
ファイナンシャル・プランナーの横川由理氏はこう指摘する。少子高齢化の進む現在、国内の空き家率は13.5%とされ、10軒に1軒以上が空き家になっている。
しかも、年間約6・4万戸が新たに空き家となっており、20年後には日本の空き家率は40%に達するという試算もある。
「古く耐震性の低い空き家は防災上も問題ですし、治安の観点からも不安視され、社会問題となっていますが、増加の一途をたどってきた一因は固定資産税の仕組みでした。
空き家であっても建物が建っていれば、土地を更地で所有しているよりも、固定資産税が6分の1に減免され、大幅に安くなるのです。
それが今年から制度が変更され、管理が悪く倒壊の恐れがあるなどと自治体が認定すると、この減免が受けられなくなりました」(横川氏)
使っていない家屋に改修費はかけられないからと放置すると、自治体に「特定空家等」と認定され、固定資産税が一気に6倍になる可能性もある。
ここまでは、報道で知って、慌てたという人も多いだろう。だが、8月27日、国土交通省が、空き家に関する新しい「控除制度」を打ち出したことは、まだあまり知られていない。
2016年度の税制改正要望で同省は、「相続後、一定期間以内に相続した住宅('81年以前に建築)の耐震改修・除却(=解体)を行った場合、標準的な費用の10%(最大250万円×10%=25万円)を所得税から控除する」という税制措置を盛り込んだ。
要するに、空き家になりそうな住宅を改修、または処分したことを申告すると、費用の一部が、所得税から控除される、つまり「お金が戻ってくる」仕組みなのだ。成立すれば、早ければ来年度中には、実際に控除が始まる見込みだ。
ことほど左様に、払ってきた税金を「取り返す」ためには、私たち国民は、自ら制度を知り、役所などに申請に行かなければならない。
身の回りには、税金を取り戻すチャンスが驚くほど眠っている。病気をした、孫が生まれた、自宅を改修した、親族に不幸があった……。多様な場面で、私たちは行政に税金を納め、業者に代金を払い、病院に医療費を払っている。
だが、「どうせ払わなければいけない」こうしたお金でも、制度をうまく利用し、自ら申告を行えば、割り引きを受けられたり、一部のお金が戻ってきたりする。
長年、税金を払い続けてきた国や自治体から、少しでも、お金を取り返したいなら、遠慮をせずどんどん相談し、申請をしていくしかない(最終ページに、「申請すれば戻ってくるお金」の主なものの一覧をまとめています)。
これらの「お金が戻ってくる」制度について、国や地方自治体は取り立てて喧伝しているわけではない。
知らない間に制度が新設されたり、変更されたりして、あとになって、「え、じゃあ、あのとき役所に申請していれば、○○万円も還ってきたの?」などと後悔させられた人も、少なからずいるはずだ。
ここからは、さまざまな分野での「取り戻せるお金」を探っていこう。
「住宅」に関する制度は、そもそもリフォーム業者などに支払う金額が大きいだけに、戻ってくる金額も大きくなる。
たとえば、リフォームで省エネやバリアフリーの基準を満たす工事を行うと、それぞれ標準的な工事費用の10%が所得税から控除される。
「介護保険からも、介護を目的としたリフォームへの支給があります。手すりの設置、床段差の解消、すべり防止のための床材変更や、和式便器を洋式に交換するなどの項目は、その費用が各20万円までなら、9割(=18万円)が支給されます」(介護保険制度に詳しい一般社団法人「後見の杜」代表・宮内康二氏)
介護保険によるリフォームへの支給は、前出のリフォームの際の所得控除の制度とも併用できる。
他にも、住宅については多くの自治体で、生ゴミ処理機や、太陽光発電に対応した家庭用蓄電池の設置費用など、主にエコにかかわる設備への助成金制度が設けられているのだ。庭木を植えたい、生け垣を作りたいといった際に、最大20万円程度の助成金が受けられる自治体もある。
マンションやビルの多い東京・品川区ではベランダに置くプランターも対象となるが、いずれにしろ、自分で市区町村に申請しなければ、助成金は受けられない。