【スポーツ】[高校野球]東北悲願の甲子園制覇へ 吉田王手 「絶対に優勝旗持って帰る」2018年8月21日 紙面から
◇<準決勝>金足農2-1日大三みちのくのドクターKが歴史的な決勝進出を決めた。金足農(秋田)が2-1で日大三(西東京)を破り、春夏を通じて初の決勝に進出。エースの吉田輝星(こうせい)投手(3年)は5試合連続2桁奪三振を逃したものの、1失点完投で過去2度優勝の強豪を退けた。決勝の相手は史上初の2度目の春夏連覇に王手をかけた大阪桐蔭(北大阪)。秋田県勢としては1915年の第1回大会の秋田中(現秋田)以来、103年ぶりとなる決勝を舞台に、怪腕が史上初のみちのくVで節目の第100回大会を締めくくる。 ◇ 歴史の重い扉をこじ開けた。今秋ドラフト1位候補の金足農・吉田が1点差を守り切り、チームは県勢103年ぶりの決勝進出。初出場で4強入りし、桑田真澄と清原和博のKKコンビを擁する全盛期のPL学園に準決勝で敗れた1984年の実績を超え、東北勢悲願の甲子園制覇に王手をかけた。 「みんなが焦っても落ち着いてプレーできた。甲子園に来ていいチームと当たって成長させてもらっている」 注目の奪三振は「7」。大会史上初の5試合連続2桁奪三振はならなかったが、その代わりに新境地を開いた。カットボールなど、直球の軌道から打者の手元で動く変化球を駆使。毎回のように走者を許しながらも、打たせて取る投球で最少失点に抑えた。何事にも動じない姿勢は試合前からあった。1、6、9回の守備時に中堅手の大友と同時に刀を抜くしぐさをする「侍ポーズ」は、大会本部から注意を受け控えめバージョンに。「大友がどうしても、と言うので適当にポイっと。自分は別になくてもいいんですけど」。必勝ルーティンが小ぶりになっても、投球が崩れることはなかった。 19日の昼食時に、34年前の先輩が敗れたPL学園戦の映像を見た。「金農旋風」と呼ばれた躍進を逆転2ランで止めた桑田さんが、この試合の始球式を務めた。「あの場で一発を打ってしまうのがすごい。きょうの投球もかなり強いボールで会場の雰囲気も変わった。しびれましたね」。レジェンドの姿にも触発され、闘志をかき立てた。 秋田大会から控え選手の出場がなく、9人で戦い続けてきた。5試合通算の投球数は749球。それでも、マウンドを譲るつもりはない。「秋田だけじゃなく、東北初の優勝旗への期待を背負っている。県勢が第1回大会以来の決勝というのは何かの縁。この100回大会で絶対に東北へ優勝旗を持って帰ります」 これまで、夏の甲子園では太田幸司(青森・三沢、のち近鉄など)やダルビッシュ有(宮城・東北、現カブス)らが東北勢初の優勝旗を目前にしながら涙をのんできた。ついに、歴史は塗り替えられるのか。夏の聖地を熱狂させている旋風の中心に、覚悟を抱くエースがいる。 (平野梓)
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