図書館委託業務会社・運営と求人の現状と問題点★図書館流通センター(TRC)・紀伊國屋書店・丸善・キャリアパワー・ヴィアックス・アスペクトコア・ナカバヤシ・ウーマンスタッフ他

以前、図書館委託業務を受託(請負)している、民間会社のまとめや個別記事を書いた。内容が古くなった部分もあり、最新情報を一括にした形で記事にすることにした。過去記事と内容が重複する部分もあるが、できる限り更新した。管理人の持つ情報と多方面からの外部情報、求人サイトに掲載される内容を元にして、運営事情、求人傾向、給料の事などを中心に厳しい視点で辛口に書いてみた。文量が多くなってしまい、特にスマホユーザーの方には、何度もスクロールさせてしまう事をご了承頂きたい。

まず、業界全般の実態として、図書館運営のマネジメント能力が低く、ノウハウが乏しかったり、皆無な業者が多く参入している。計画も作戦もない、行きあたりばったりの場当たり運営が常態化し、事業として何処を向いて仕事しているのかわからず、手法に知性が感じられない

表向きには、高い専門性と人材を有していると謳っているものの、それは見栄に過ぎず、ウソを平気で言う始末だ。安心して委託できる会社は、皆無だと断言してよい。待遇、福利厚生、採用、人材育成といった部分に投資せず、モチベーションやポテンシャルが高い人材を採用して教育し、長く定着させる意識が極めて低い業界である。人材を量産的にかき集め、現場に送り込んだ後は放置だけの危うい運営ばかりだ。安月給で働く現場スタッフに負担がかかる構図になっている。

また、近年は扶養範囲内で働ける主婦層をターゲットに募集する傾向が顕著になっている。これは、会社が社会保険を負担する義務がない事や短時間勤務などでコストカットできるメリットがあるからだ。社会保険加入逃れのために期間限定の短時間労働者ばかり雇用し、会社に都合の良い融通の効く人材を上手く活用している。

この業界の構造的な問題として、知的競争ではなく、価格競争をしている事が挙げられる。本来であれば、業務の質を高める努力や人材育成に力点を置き、他社と差別化していくものだが、中途半端な能力しか持たないのに無理やり最安値で入札する業者が増えたため、低価格競争に巻き込まれる業界に成り下がってしまった。経営が厳しい会社も多く、ぎりぎりの人数で動かしている会社も多い。

その弊害も相まって、安い人件費で、資格・経験・即戦力・コミュニケーション能力などを過剰に求める傾向は強まるばかりで、たまったものではない。個人の自己研鑽による自助努力、経験者頼みの運営が生命線だ。雇う側のエゴとしか思えない、都合の良い一方的な要求を押し付けられる。会社は事務的な雇用管理だけして、営業社員が挨拶程度に現場に来るだけである。

人手不足や早期離職も顕著で、運営に必要な人材確保が難しくなっているが、待遇改善や業界を離れている司書の採用・育成への投資に取り組む姿勢など微塵もない。今や人的にゆとりのある会社は少なく、図書館業界の人手不足は、年中無休の風物詩になっている。一年中求人募集をしているところは、ブラック企業、ブラック職場の可能性が高いといえる。

このように、様々な面で構造的に弱い欠陥だらけの業界が進む末路は見えている。

▼それでは、業界各社の特徴と受託先をわかる範囲で紹介したい。まずは、業界大手・中堅各社から。

※情報は、2018年8月20日現在のものです。状況は常に変わるので、各サイトで最新情報を確認して頂きたい。主な契約先は、現時点および過去に契約経験があるものを記載。

【図書館流通センター・TRC】
図書館に関わる者なら誰もが知る、図書館支援の最大手企業で、書籍納品、装備、書誌データ(TRC MARC)作成、図書館運営などを手掛けている。丸善雄松堂との共同持株会社「丸善CHIホールディングス」の傘下企業で、親会社は大日本印刷である。公共図書館の委託、指定管理者、PFIなどの事業をどこよりも早く手掛け、圧倒的なシェアを誇り全国展開している。先行者利益の恩恵を受け、他社を大幅に引き離す存在である。入札でもプレゼンの点数が高く、コツを掴んでいるようだ。収益性が極めて低い入札には手を出さない事が多く、賢明な選択をしている。

受託業務は、公共図書館の閲覧業務が圧倒的に多く、目録や装備などの整理業務は見ない。大学図書館の受託は、極めて少なくネックとなっており、この分野は他社より劣る。研修・教育システムは、それなりのレベルを維持している。

だが、茨城県守谷市立図書館の指定管理業務では、初年度(2016年)から館長、副館長、約10人のスタッフが早期に連鎖退職するトラブルが発生。更に契約規定にある、司書資格保有者配置の目標割合がクリアできていない事態が発生し、社長が謝罪と事情説明で教育委員会に呼び出される事態となった。結果として、2019年以降は直営に戻されることになってしまった。こうした内部の黒い部分も見え隠れする。全てが完璧とは言えないようだ。

受託館が多いせいもあるが、年中無休で求人募集や登録を促す情報が、求人サイトや公式ページに出続けている。つまり人手不足だ。また、正社員登用制度もあるが、新卒総合職入社の生え抜きプロパー社員より、出世や待遇は格下とみるべきだろう。

給料はシビアでケチだが、以前よりは少しマシになった。法定の最低時給ギリギリではなく、100円程度上積みされている。ただ、司書資格の有無による時給差額が30円程度なのは情けない。月給制の責任者やリーダーの待遇は他社よりマシだが、それでも手取り18万程度だ。図書館勤務経験がない、初心者向けの会社なので、とりあえず試験的に程々に働いてみて、相性が合わないなら他社を考えるのもいいだろう。公共図書館で働きたければ、この会社からアプローチするのが受託数も多く有利だ。

◎主要受託(過去も含む): 全国の公共図書館、首都圏公立小中学校の学校図書館、拓殖大、NHK放送技術研究所、東京都美術館

【丸善雄松堂】
私立大学図書館の受託がメインで、紀伊國屋書店とキャリアパワーとの3強争いを演じている。数は少ないが、公共図書館や学校図書館の受託もある。受託業務は閲覧業務が中心で、たまに、目録・分類などの整理業務がある。時給は受託先によってバラつきがあるが、やはり低水準であることに変わりない。交通費支給上限が大方、20000円で固定設定されているのが痛い。また、求人には「契約社員になるにあたり、試用期間中の勤務態度、スキル等に加え、昇格試験があります。」などと書かれているが、契約社員ごときに昇格試験があるなんて笑えない話であり、ふざけ過ぎにも程がある。

書店系に言えることだが、近年の経営環境悪化や業績低迷の煽りを受け、給料や福利厚生、人事制度がシビアに設定されている。これは、アウトソーシング系や派遣会社系の会社よりも鮮明になっている。書店店舗の業績が極めて悪く、2011年に正社員180名の希望退職者を募集する大リストラを断行。大日本印刷の傘下企業になったことで、かろうじて生き残った。だが、店舗運営の業績は未だに悪いままだ。こうした事情もあり、図書館部門にも待遇や福利厚生の面でシビアさが垣間見える。

図書館運営面においては、2013年3月、受託したくせに期限まで人材を集められなかった、国立新美術館図書室の契約破棄は大問題となった。その際、ペナルティーとして納品契約がある国立大学と4ヶ月間取引停止という処分を受けた。最近は、店舗運営での話だが、丸善キャンパスショップ立教大学池袋店で、本部社員と現場ベテラン従業員と間で亀裂やトラブルが起き、退職者が続出する事案が発生している。書店としての歴史がある会社だが、マネジメント能力には疑問符がつく。会社体質も健全とは言い難い。

公式サイトの図書館業務を紹介したコンテンツは、わかりやすく作成されており、完成度が高い。

公共図書館求人は、求人数と給料面がショボイものばかりなので、おすすめできない。東京都内の公共図書館は、TRCやヴィアックスとの競争に敗れ、多くを失ってしまった。大学図書館の求人が多いので、その分野で働きたい方がアプローチする会社と言える。近年は人手不足の兆候がみられ、明治、東京都市、東京経済、二松学舎、清泉女子、神奈川、茨城県立医療の各大学の求人が、ほぼ年中無休で掲載されている。その他も似たような傾向がある。だが、人を呼び込むために時給を上げるなどの会社努力をしている気配はない。求人を探す際は、同じく大学図書館の求人が多い、紀伊國屋書店の求人と比較検討すると良い。

ある人の外部情報によると、図書館求人に応募し面接をしたが、特に希望もしていない、遠方の人手が足りない図書館に勤務できないかと、頭を下げられて頼まれたそうだ。交通費が上限金額を超えるので、超えた分も支給してくれるかと聞いたら、自己負担と言われたそう。不愉快になり、辞退したそうだ。

◎主要受託(過去も含む): 明治大、二松学舎大、日本女子大、清泉女子大、杉野服飾大、東京農業大、東京都市大、東京経済大、國學院大學、大東文化大、立教女学院短大、帝京平成大、創価大、神奈川大、青山学院大、玉川大、東京電機大、獨協大、神田外語大、麗澤大、千葉工業大、和洋女子大、千葉商科大、明治薬科大、流通経済大、北里大、桐朋学園短大、法政大学、専修大、茨城県立医療大、名城大、愛知工業大、名古屋学院大、東海学園大、岐阜聖徳大、帝塚山大、京都工芸繊維大、京都教育大、京都造形芸術大、京都文教大、京都薬科大、近畿大、阪南大、大阪経済大、大阪大谷大、大手前大、桃山学院大、兵庫県立大、神戸学院大、神戸海星女学院大、神戸親和女子大、県立広島大、広島工業大、下関市立大、香川大、加計学園岡山理科大獣医学部、北九州市立大、福岡県立大、西南女学院大、特別区自治情報・交流センター、東京アニメセンター、静嘉堂文庫美術館、新国立劇場、労働政策研究研修機構、目黒区立図書館の一部、杉並区立図書館の一部、聖心女子学院

【紀伊國屋書店】
大学図書館がメインだが、公共図書館もそこそこ受託している。大学図書館市場においては、丸善とキャリアパワーとの3強だが、一歩リードしている。大学図書館の多くは、この会社から納品しているため、古くからパイプがあり、書店最大手ということで営業的には有利だ。受託は閲覧業務が多く、目録などの整理業務は少ない。全国展開しているので、都市部だけでなく、地方都市でも比較的求人はある。新宿区立図書館の指定管理館は、ヴィアックスとの共同事業体として運営している。大学図書館などに納品する新刊書などは、目録・分類・装備を複数の下請け業者に落として処理しているケースが多い。今は廃業した日販図書館サービスとは、太いパイプがあった。

給料・福利厚生に関しては、丸善同様に書店系の宿命のごとくシビアで低水準である。時給950円~1100円の相場ばかりで、比較的高度な業務でも同様だ。また、責任者(リーダー)の求人も待遇が悪いものが多く、月給ではなく時給ベースになっている。こうした立場で働いても、損することばかりなので注意したい。

店舗部門では、新宿南口店が閉店するなど厳しい経営環境である。都心の一等地大型店ですら業績が上がらない状況だと、会社自体の経営が危機的状態だと言える。図書館部門へも少なからず影響してくるだろう。

公式サイトを見る限り、業務内容や研修制度についての情報開示が皆無で事業の実態がわからない。求人情報もトップページの一番下の目立たない箇所に小さい文字でリンクが張られているだけで見つけにくい。応募側の視点でサイトが作成されていない。何も情報が公開されないのは、後ろめたい事情でもあるのか?今時、どんな小さな会社でも事業内容程度は公開している。この体たらくぶりは、何なのだろう。

求人の傾向は、公共図書館は少ないが、大学図書館は首都圏や関西圏を中心に結構ある。最近は、上智、学習院、大正、目白、東洋英和、国士舘などの求人が多く出るが、人材不足で募集が集まらないのか、再募集が目立つ。目録・分類などの整理業務でも、時給1100円程度でセコく募集されているが、即戦力でいけるなら、強気に極限の時給まで上げるよう、粘って交渉してもいいと思う。求人を探す際は、丸善の求人と比較してみると良い。

◎主要受託(過去も含む): 首都圏エリアの公共図書館、上智大、上智短大、学習院大、学習院女子大、東京女子大、跡見学園女子大、大正大、東京理科大、明星大、芝浦工大、星薬科大学、国士舘大、女子栄養大、東京工芸大、目白大、実践女子大、多摩美術大、武蔵野大、武蔵野美術大、東京家政大、東京家政学院大、津田塾大学総合政策学部(千駄ヶ谷)、東洋英和女学院大、江戸川大学、桐朋音楽大、上野学園大、東北学院大、愛知淑徳大、同志社大、大阪府立大、関西大、武庫川女子大

【日本アスペクトコア】
事務系アウトソーシングの流れを受け継ぐ業者。主要取引先の富士ゼロックスとパイプが強固で、その実質的な下請け業者。図書館業界との関わりは、紀伊國屋書店との取引関係を発端にしている。ほぼ、関東の私立大学図書館と専門図書館の求人だ。2015年頃までは、多くの求人が出ていたが、その後は求人数が減り、あまり見かけなくなった。どちらかというと、落ち目な気配がある。

閲覧とILL業務がメインで目録などの整理業務は極めて少ない。求人内容を見ると、担当職務を絞らず横断的にやられるような書き方をしているので、負担が大きいかもしれない。だからといって、時給が高いわけでもないので注意である。

時給は960円~が基本で、東京都の最低時給水準でやらせようという意図が見える。交通費を全額支給してくれることはありがたい。勤務時間と曜日が不規則の上、夜間までのローテーションがある求人が多いので、9時-17時を希望なら条件が合わないものが多い。その点では、他業者よりも働きづらいかもしれない。

ある人の外部情報によると、契約時に聞かされていない業務まで、やらされたそうだ。また、全面委託や広範囲に業務を受託している大学図書館は、激務で負担が多いそうだ。それで、時給1000円程度。全面委託の図書館求人への応募は辞めるべきとのこと。

◎主要受託(過去も含む): 青山学院大、東洋学園大、法政大、日本体育大、白百合女子大、自治大学校、神奈川工科大、武蔵野大、武蔵野美術大、埼玉県立大、淑徳大、城西大、女子栄養大、江戸川大、TBSビジョン映像ライブラリー、東京国立博物館、理化学研究所、国立情報学研究所、京都国際マンガミュージアム

【キャリアパワー】
近年、関東と関西の私立大学図書館の受託数を伸ばしてしている事務系派遣会社である。派遣は、必要な期間だけ必要なスキルをもった人材を配置し、需要が無くなれば契約終了となるので、安定性が委託契約より劣る事を理解しておきたい。世間一般では、時給が高めに設定され、職種によっては短期的に稼ぎやすい場合もある。たが、この会社は派遣でも時給が高くないので、メリットもなくアホらしいと思う。これだけ急激に受託案件を増やした理由は、安い受託料で請け負っているからである。当然、そのしわ寄せは、現場の社員の給料に影響する。

受託業務は閲覧業務ばかりだが、高度なレファレンス業務がたまにある。派遣求人だけでなく、委託求人も混在しているので、違いを確認しておく必要がある。時給が900円~1000円程度でも、正職員並の激務をする内容の求人も散見されるので要注意。担当業務だけでなく、ついでにあれこれ色々な仕事をやらせるような感じなので図々しさが見える。トレーナーと呼ばれる、安月給で働く実務経験のある教育係がおり、現場スタッフのコーチのような役割を担っている。零細業者だと、こうした人材は置かれていないので、その点では評価できる。

公式サイトは多少ゴチャゴチャしているが、内容が充実して良くできており、事業内容が詳細に書かれている。それに反して、求人広告の募集文句は、煽る様な大げさなもの、またはチャラいものばかりでバカっぽさが伝わってくる。

求人サイト図書館ジョブには、常に大量の求人で埋め尽くされている。一見すると多くの求人があるように見えるが、同じ求人ばかりが再募集されているものが多く、スムーズに人材が集まり確保している様子は見られない。近年は早稲田、明治学院、東洋、立命館の求人を多く見かける。

◎主要受託(過去も含む): 慶應義塾大、早稲田大、学習院大、中央大、明治学院大、成城大、東洋大、立正大、聖路加看護大、東京未来大、工学院大、日本大・薬学部、神奈川大、関東学院大、国士舘大、和光大、桜美林大、文京学院大、昭和女子大、相模女子大、日本赤十字看護大、産業能率大、女子美術大、北里大、政策研究大学院大、愛知学院大、愛知淑徳大、南山大、中京大、椙山女学園大、京都大、京都市立芸術大、京都産業大、京都橘大、京都学園大、立命館大、龍谷大、同志社大、関西大、大阪工業大、大阪成蹊大、追手門学院大、金沢星陵大

【ヴィアックス】
東京23区内および埼玉県・千葉県の公共図書館をメインに委託業務や指定管理業務を受託している、事務系ダイレクトマーケティング、アウトソーシング会社である。この10年位の間に図書館業界へ勢力を拡大してきた。委託より指定管理館が多いのが特徴である。その中には、紀伊國屋書店との協同運営をしている指定管理館もある。地方への進出も一部進んでいるが、メインは東京23区内および周辺自治体の公共図書館に特化しており、今のところ地域限定の事業といえる。このエリアは、TRC、ヴィアックスの2強と言える。

受託は閲覧業務に特化され、目録などの整理業務は一切ない。また、公共図書館オンリーで大学図書館の受託はない。東京23区か周辺の公共図書館を希望する方が対象となる地域限定業者である。

首都圏の時給求人の場合は、1020円ベースだが、研修期間は960円である。中には、この時給でスタッフ教育や自主事業の企画・立案といった仕事をさせられる厄介ものがあるので避けたいところだ。月給制(177,500円~)求人もあるが、仕事内容が時給制求人とほぼ同じなので曖昧だ。司書資格の有無による時給差は、たった20円で悲しい。給料面は期待しない方が良い。

求人サイト図書館ジョブへ膨大に掲載されている、人手不足と思われる求人が再掲載され続けている。受託できても、肝心の人が集まらない状態が慢性化している。

◎主要受託(過去も含む): 東京23区の公共図書館、立川市、所沢市、入間市、千葉市・市川市、仙台市、浜松市、名古屋市、都城市の公共図書館

【ナカバヤシ】・【ウーマンスタッフ】
ナカバヤシは、製本とアルバム販売を主力とする老舗企業だ。2009年に派遣会社のウーマンスタッフを買収しグループ子会社にした。この会社の募集方法は他社と違い、ある特徴がある。まず、入札や受託契約はナカバヤシが行い、人材募集はウーマンスタッフが行う。その後は、2つのパターンがあり、ウーマンスタッフの派遣社員として雇用され、ナカバヤシに派遣される形態で受託図書館に勤務するもの。もう一つは、ウーマンスタッフから紹介という流れでナカバヤシに直接雇用されるものがある。前者はウーマンスタッフとの派遣契約、後者はナカバヤシとの直接雇用契約となる。それぞれ、契約に関する適用法律が異なるので注意したい。

派遣契約された場合は、3ヶ月の短期間更新を繰り返し、1年以上の仕事が見込めるような求人でも同様である。これは、何かあれば、すぐに切れるようにしておく準備だろう。せこいというか悪意が透けて見える。ちなみに、他社は1年契約更新が多いので、いかに不利な条件を提示されているかがわかる。雇用形態や契約期間において、他社より複雑で条件が悪いので要注意である。

図書館業務の受託開始は、2004年頃から始まった。当初は、大学図書館総合目録(NACSIS-CAT)のデタラメな書誌を作成しまくり、悪評が高かった会社である。その頃、国立大学で目録を担当した職員は記憶にあるかもしれない。

近年は、求人の質と数ともに底辺レベルで他社に比べ凋落ぶりが甚だしい。2012年頃までは受託数が多く、国立大学の目録遡及入力事業の入札も獲得していて勢いがあった。今では、細々と国立大学の夜間時間帯カウンター業務、公立図書館の委託業務、都立高校図書室の委託業務、国会図書館の利用者カード発行業務、装備・搬送業務など、利益の低い地味な仕事の受注に特化し活路を見出している。どちらかというと、単発の受注が多く、長期間契約の受託が少ない。

募集内容を見ても、チンケなものばかりだ。例えば、時給900円台で交通費なしの求人、夜間開館勤務のみの求人、土日と平日1日の週3日勤務の求人、週1日勤務の求人など、どこのどいつがこんなものに応募するのかと思わせるような求人が結構ある。最近は求人が固定化され、板橋区立図書館、さいたま市立図書館、千葉県四街道市立図書館、都立高校図書室ばかりで、ほぼ年中無休で掲載されている。人手不足もいいところである。以前は、私立大学の閲覧業務や整理業務の求人が掲載されたが、最近は見かけなくなった。

給与体系は、地域最低時給のレベルまで下げた、レモンの汁を絞り切るような徹底振りである。また、時給900円代で交通費込という、法律上の最低時給以下になる求人が存在する。フルタイム勤務より、扶養範囲内の短時間の募集が多い。単発仕事が多い事もあるが、社会保険負担を回避するために、あえて適用されない雇用形態で採用していると言える。また、改正労働者派遣法では、同一派遣先での勤務は3年が限度となる。こうした中小零細派遣会社は、別の派遣先を用意できるだけの契約数はない。

複雑で不可解な雇用契約方法、付加価値が低い仕事ばかり、低時給、3年後の契約更新問題など不安材料が多い。色々な意味でタチが悪い曲者業者。応募は警戒して行うか、もしくは辞めた方が良いと思う。

◎主要受託(過去も含む): 板橋区、さいたま市、四街道市、堺市の公共図書館、都立高校図書室、国立国会図書館、首都大学東京、東京大、東京工業大、東京外国語大、埼玉大、放送大、法政大、北里大、文京学院大、帝京大、東邦大、東京医科大、新渡戸文化短大、川村学園女子大、国立歴史民俗博物館、国立民族学博物館

▼次は、小規模な零細企業を紹介する。受託数も少なく単発仕事も多い。書くネタもそんなになので、書ける範囲で書いていこうと思う。

【埼玉福祉会】
1978年から、目録・分類・装備などの整理業務を中心に受託している。閲覧業務もそこそこある。長期契約の仕事が少なく単発仕事が多いので、継続勤務を希望する人には、適した求人は少ないかもしれない。

経営も株式会社ではなく、社会福祉法人である。社会福祉法人の本来の目的とは矛盾し、営利目的の図書館事業を展開している事に違和感がある。障害者と健常者の雇用比率を上手く使い分け、補助金や減税の恩恵を導き出す手法を利用しているとも見れる。社会福祉法人のため法人税が軽減されるが、同じ土俵で競う他の株式会社の業者は、たまったものではないだろう。

国立大学図書館の目録遡及事業が盛んだった頃は、数多く受託していた実績もある。入札価格を極限まで下げ価格破壊を起こし、他社をコケ下ろしていた。2016年頃から求人を見かけることが少なくなり、凋落傾向が見られる。東京都が運営する図書館の整理業務の入札に参加する事が多いが、競争が激しくなった昨今は、落札率が低い。今は、国立新美術館アートライブラリーが大きな受託先となっている。たまに地方の仕事もあるが、数日から1カ月程度のものが多く稼げそうもない。

公式サイトに書かれている主な得意先には、既に取引が終わっている機関が未だに書かれていたり、法人の事業売上高記載も平成20年3月のまま更新されていない。古い情報がいつまでも公開されている法人は、信用性に欠けるので注意したい。

◎主要受託(過去も含む): 国立新美術館アートライブラリー、大東文化大、尚美学園大、大正大、中央大、日本社会事業大、桜美林大、日本大、東京家政大、文化女子大、実践女子大、拓殖大、芝浦工業大、首都大東京、東京大、横浜国立大、埼玉大、名古屋大、和歌山大、大阪大、広島大、国立国会図書館、国立情報学研究所、東京国立博物館、国立スポーツ科学センター、宇宙航空研究開発機構、国立民族学博物館、国際日本文化研究センター、日本近代音楽館、防災科学技術研究所

【日本データベース開発】
データコンテンツ作成事業が主力で1990年から図書館運営受託も行っている。どちらかというと、目録作成などの整理業務が得意分野だ。主要受託先は立教大学図書館である。トーハンともパイプがある。求人は少なく、特定の図書館に偏っている。最近は、年に数回程度しか募集がないので、多く受託してないのだろう。ちなみに本社は、IAAL(大学図書館支援機構)と同じ住所である。
◎主要受託: 立教大、立教女学院短大、東京音楽大、青山学院大、東京芸術大、国立情報学研究所、アジア経済研究所

【システムズデザイン】
情報処理サービス会社でシステム開発事業が主力。図書館事業も手掛け、2010年頃までは、横浜市立大学など関東の大学図書館を中心に求人が見られたが、近年は上智大学図書館や関西の大学図書館の求人しか見ない。以前より求人が激減し凋落してしまった。しかも、公式サイトには、図書館事業をしているような記述が見られない。現状は、休業状態に近い。
◎主要受託(過去も含む): 上智大、関西の私立大

【日本レコードマネジメント】
官公庁や企業の文書管理サービスを事業としている。閲覧と目録業務の受託実績があるが、近年は激減し求人を見なくなった。たまに日大の求人が出るが、何度も出るので、条件が悪すぎ敬遠されているのだろう。公式サイトには、提供できる業務が一般的な閲覧、整理業務だけでなく、NII登録や特殊資料の目録作成といった、専門性の高い業務まで多岐に渡り網羅的に書かれている。だが、そんな求人は見たことがない。実際は、極めて受託数も乏しいだろうし、受託可能な多岐に渡る業務をこなせる人材など雇用していないことは容易にわかる。現状は、休業状態といえる。
◎主要受託(過去も含む): 日大

【図書館スタッフ】
株式会社サイリスという、廃棄物処理や省エネ事業を展開する会社の子会社で、丸善とも協業関係がある。図書館運営に関わる各種アウトソーシング業務を展開しているが、閲覧業務の求人が大半だ。大学、専門学校、企業の受託がメイン。時給も地域最低時給がベースで低い傾向。公式サイトには、スタッフ育成のモデルがしっかり書かれている。この規模の業者では珍しく、専門的な教育プログラムもあるが、それを活かせる求人は見たことがない。現実は、普通のカウンター業務の求人ばかりだ。
◎主要受託(過去も含む): 東京電機大、文教大、日大、千葉工業大、立正大、目白大、獨協大、法政大

【リブネット】
三重県伊勢市に本社を置く、2002年設立の新興企業。学校図書館運営を主力とし、公共図書館の受託もしている。また、図書館用品販売や図書館システム開発なども手掛けている。東京都、三重県、滋賀県の小中学校の学校図書室運営の受託件数が急速に増えている。今や図書館流通センターを脅かす存在だ。学校図書館の分野では、いずれトップに立つかもしれない。
◎主要受託(過去も含む): 東京都・埼玉県・三重県の公共図書館および学校図書館、防衛大学校

【リブレスク】
有限会社である。受託業務は、閲覧業務から整理業務まで多岐に渡るが、求人を見たことがない。公式サイトには常時、正社員・パート・アルバイトの全てにおいて「現在は募集していません」と書かれている。事業が動いているのかさえわからない、謎の多い会社。
◎主要受託(過去も含む): 慶應義塾大

【図書館資料整備センター】
かつては、目録・分類・装備などの整理業務の受注を多く手掛けていた、最古参の老舗企業。実力とノウハウはあると思う。だが、新規参入業者との価格競争の波にのまれ受注を減らし、近年は求人を見ることがなくなってしまった。入札対象にならない小さな受注を受けながら、何とか細々やっている。公式サイトには、会社の売上高が書かれているが、何と平成18年のデータを記載しているのには理解できない。これでは、本当に事業をしているのかと疑いたくなる。
◎主要受託(過去も含む): 不明

【マイトベーシックサービス】
システム開発や情報サービス事業が主力で、図書館業務の受託開始は1986年と老舗の類に入る。書誌データ関連の業務が得意分野。だが、近年は求人を見たことがない。東京都立図書館のデータ整理関連の仕事を落札しているが、それ以外は不明。公式サイトは、サイズと文字が小さく極めて見づらい。
◎主要受託(過去も含む): 東京都

【フィルムルックス】
図書館用品販売や装備を専門とする会社。求人は、装備業務に限られている。求人は、数年前に一度見たきりである。
◎主要受託(過去も含む): 不明

【日本カタロゴス】
紀伊國屋書店と太いパイプを持ち、その下請な仕事が多い。目録・分類・装備がメインである。下請な立場は、経営や利害関係などで不利な事が多い。同じ様な仕事をしたいなら、求人数も多い、紀伊國屋書店の仕事を探した方がいいと思う。
◎主要受託(過去も含む): 日大理工学部

▼次は、エンターテイメント会社や中堅書店を紹介する。

【CCC カルチャーコンビニエンスクラブ・ツタヤ】
レンタル・書店・出版事業を手掛ける、エンターテイメント会社。今、図書館界で最も注目を集めている会社かもしれない。図書館業界進出の皮切りとなった、佐賀県武雄市立図書館の指定管理運営では、良くも悪くも脚光を集めた。その後は、海老名市立図書館、多賀城市立図書館など地方都市への進出が進んでいる。各自治体の市長・議会・教育委員会が誘致したい意図が見え隠れし、出来レースのような見方もあるような、ないような。不適切な選書、わかりにくい分類、個人情報管理などの件で物議を醸したが、過渡期なので、今後の展開を見守りたい。
◎主要受託(過去も含む): 武雄市立図書館、海老名市立図書館、多賀城市立図書館、高梁市立図書館、周南市立徳山駅前図書館、延岡駅前複合施設「エンクロス」

【有隣堂】
神奈川県を本拠地に展開する書店である。主に神奈川県内の公共図書館の閲覧業務を受託し、横浜市立山内図書館は指定管理館となっている。大学図書館にも進出し、横浜市立大学図書館を受託している。地域密着型の業者といえる。
◎主要受託(過去も含む): 横浜市立図書館、横浜市立大学

▼次は、大学出資の会社を社名だけ書いておく。大学出資の会社は、基本的に系列大学図書館での勤務となる。ただ、職場が合わなければ他の大学図書館への配属ができないため、退職しかなくなるので注意したい。勤務先については、柔軟性がない事を理解しておきたい。

【早稲田大学アカデミックソリューション】
【明大サポート】
【立教オフィスマネジメント】
【明治学院サービス】
【アイビーシーエス・青山学院大学】
【KUサポート・駒澤大学】
【ウィズケイ・共立女子大学】
タマガワイーサポート・玉川大学
【クレオテック・立命館大学】

▼次は、図書館業界に参入している異業種会社を紹介する。ノウハウが乏しいかゼロに等しい。中には、社員から訴訟を起こされ敗訴した会社もある。契約数も少なく、受託契約が切れれば他への配属が困難になるケースに遭遇する不安要素がある。こうした、図書館業界への参入に100年早いような会社もあるので警戒したい。業界と社名だけ記載しておく。

○アウトソーシング業
【シダックス大新東ヒューマンサービス】
【ケー・デー・シー】
【日経サービス】
【湘南コミュニティー・東急グループ】
【テルウェル東日本・NTT東日本グループ】
【NTTデータマネジメントサービス】
【アグレックス】

○派遣業
【リクルートスタッフィング】
【マイナビスタッフ】
【パソナヒューマンソリューションズ】
【アデコ】
【スタッフサービス・オー人事net】
【テンプスタッフ】
【マンパワーグループ】
【日本コンベンションサービス】
【キャリアセンター】
【JR東日本パーソネルサービス】
【パーソナル パナソニック】
バックスグループ
ロジスティック・プランニング・スタッフサービス
【旭化成アミダス】
ザ・アール
【アソウ・ヒューマニーセンター】

○運送業
【日本通運】

▼最後は、更に更に異業種な会社である。ビル・マンション管理、金属加工、機械販売、自動車販売、清掃、消毒、害虫駆除といった、意味不明なジャンルばかりだ。近年は、東京都立図書館、東京都立高校、足立区立図書館などの入札へ積極的に参加している。今や、これらの図書館の受託は、以下の業者で多くを埋め尽くされてしまった。

○ビル・マンション管理
【秀光】
【光官財】
【オーディーエー】
【エースシステム】
【サービスエース】

○不動産
【エイト】

○金属プレス加工・金型設計製作
【トミテック】

○機械部品販売
【グランディオサービス】

○自動車販売・整備
【ヤオキン商事】

○清掃・浄化・消毒・害虫駆除
【クリーン工房】
環境テクノ

○スイミングクラブ
【ティーエムエンタープライズ】

○不明業種
【彩の国協同組合】
【フィット協同組合】
【光商会】


以上が、現在の図書館業界に大なり小なり参入している企業群である。

どこも、経営環境が厳しいこともあり、継続して一つの会社に勤めることは難しく、人材の流動化は避け難い状況だ。短い勤続年数でキャリアが断絶した転職を繰り返す可能性も高く、キャリアアップどころか、収入増にもつながらず貧困に陥りやすい。失業なき労働移動が難しい。この業界の構造は、貧困を生み出しているとも言える。

安い労働力でしか成立しないビジネスは不要であり、近年の人手不足な状態では、事業そのものを考え直す必要があるだろう。人手不足になる背景には、契約形態、待遇、労働環境、会社の方針や経営手法に何らかの欠陥があるからだ。

会社の規模も中小零細企業ばかりで経営が思わしくなく、正社員ですら先行きが見えない。将来の目標が明確で繋ぎの場として勤務したり、扶養範囲での勤務を希望する方ならともかく、他に行く当てもなく、何となく惰性でダラダラと年齢を重ねることは、できるかぎり避けるべきだ。何年も時間が止まったかのように、日々同じ環境で同じような仕事を繰り返し、世間知らずで社外に出てしまったら、かなり痛々しい結果になるだろう。

近年は、契約社員の5年縛りや派遣社員の派遣切りなどの問題が多く噴出している。雇用側も財政的に厳しいだろうが、貢献度の高い人材には長期雇用を維持し、能力・キャリア・責任範囲に見合う待遇にしていくべきである。図書館で勤務する非正規雇用の方々が長く定着できるような環境を整備し、生活できるだけの給料が支給されることを願うばかりである。

この記事へのコメント

  • tomi

    ナカバヤシは、2018年7月から大阪市立図書館の窓口業務も受託しています。
    2018年08月21日 04:18