鈴木さんのプロデューサー論に関しては、なかなかその真髄を話してくれる機会がなく、資料も少なかったのだが、ひとつこれはクリティカルなものだと思い、引用する。ドワンゴ川上さんとの対談なのでちょっと読みづらいが。
川上
「普通の人って、仕事とプライベートってわけるじゃないですか。で、「鈴木さんは、公私混同っていうのがポリシーな人なんですけど。もう仕事も人生も一緒っていう。」
「だから、何をつくるかっていうのも、仕事として儲かるのに一番いいのが何かっていうんじゃなくって。
なんか、要するに。自分の人生、ジブリの今置かれている立場で何をつくるべきかっていう考え方なんですよね。
それで、それに合わせて、これぐらいお金かかるから、これぐらい儲けようみたいなね。」
「発想が逆なんですよ。これは本当普通のビジネスではありえない話ですね。」
鈴木「けどね、それって、なんていうんだろう。昔の人がね。みんなそうやってませんかね。」
川上「だから、そうなんですよね。鈴木さんはそう言うんですよね。」
「別の映画事業やっている人にとにかく映画事業再建しなきゃいけない、と。うちの映画は何がいけないっていったら、5億円かかったら5億円回収するビジネスモデルを立てる、と。」
「順序が逆だろうと。企画があって、2億円しか収入が得られないんだったら、1億円で映画を作らなきゃいけないんだ、っていう。そうやって、この映画事業を再建するんだっていうことを言ってる人がいて。」
鈴木「そりゃ失敗しますよ。」
これ、今のアニメプロデューサーにほとんどあてはまる。
いや、日本のビジネス全体に当てはまるのではないだろうか?
損しないためにはどうするか?原価を下げればいいじゃん!
この発想が巷に実に多い。
しかし、原価を下げればどうなるか?
粗悪なものが生まれる。
それが売れるか?儲けを出せるか?
答えは明白だ。
今のアニメの粗品濫造、そして日本経済全体のデフレスパイラルをこれだけ如実に説明できる論はない。
もちろん余計な出費は避ければいい。
しかし作品の質に関わる予算は削ってはならない。
それが解らないプロデューサーや出資者が、恐ろしく増えた。
まず低予算ありき。それで売れる物が作れるのか?
その理論は彼らにはない。現場に投げっぱなしだ。
その時点で彼らのメソッドは崩壊している。
しまいにはグチャグチャに作って観客が悲鳴を上げ、爆死させた上に、「俺はリテイクの予算を確保しておいた!予算の上手い使い方を知っている!」
と、気の狂ったことを言う監督が出る始末。
そう、狂っている。
繰り返し言っているが、「そんなに損したくなければ金を出さなければいい。事業をやめればいい」だけの話なのだ。
今この業界は、本末転倒の発想に自縄自縛している。
しかし頭が悪すぎるので、改善の見込みはないだろう。
こんな簡単な理屈を、今の日本のアニメで理解しているプロデューサーは、鈴木さん含めごくごく僅かだ。
本当に「マトモな」プロデューサーの育成が急務だ。