実物を確認せずに中古スマートフォンを買い取るサービスを開始したが、詐欺が横行。売り物である「ネットで査定し直ちに入金する」仕組みを返上する事態に陥った。買い取ったはずのスマホが届かないケースが想定以上に多かったのが要因という。
(日経ビジネス2018年6月11日号より転載)
麻生輝明氏
1992年生まれ。2011年一橋大学商学部入学。在学中に買い取り価格比較サイト「ヒカカク!」を開設。14年合同会社ヒカカク創業。15年ジラフに組織変更。17年一橋大学卒業。スマートフォンの高価買い取りサイト「スママDASH」も運営。
スマホ買い取り方法変更の概要
スマートフォン特化のフリマサイト内のスマホ即時買い取りサービス「スママDASH」からの撤退を4月26日に発表した。中古スマホをウェブ上で査定し、実物を確認しないまま直ちに買い取り金額を入金する仕組み。だが即時入金よりも高額買い取りを望む消費者が多いことから、スマホが送付された後に入金する方式に変更した。
スマートフォンを買い取って即時入金するサービス「スママDASH」を1月に開始しましたが、売り物である「ネットで査定し商品を送っていただく前に入金する」仕組みを3カ月で返上しました。今後は、商品が届いてから入金する形にします。「即時入金」の仕組みは、多くのお客様が支持してくださっていたので、残念です。
目玉のサービスの内容を変更せざるを得なかったのは、査定後に入金したのにもかかわらず、買い取ったはずの商品が届かないケースが想定より多かったことです。
私たちが提供していたサービスはまず、ウェブサイト上でスマートフォンの査定を受け付けます。商品の状態を写真撮影するなどして申告してもらい即座に査定し、当日のうちに査定額を入金させていただくというものでした。私自身は「我々が先に入金するのだから、商品を送ってくれるだろう」と考えていましたが、残念なことに虚偽の申し込みをしてお金だけ手に入れる詐欺行為が少なくありませんでした。見通しが甘かったと思っています。
このサービスを始めるうえでは、CASHという同様のサービスを参考にしました。CASHはスマートフォンに限らず、様々な商品を瞬時に査定し、査定額を振り込むものでした。このCASHの運営企業が開示していた情報などを見ると、「こちらが入金したのに顧客から買い取った商品が届かなかった」という事例が相当少なかった。
そういった事例を参考にしながら試算する限り、採算が合うと思ったので事業の検討を始めました。同時期にメルカリさんが「メルカリNOW」という同様のサービスを始められたこともあって、1月に事業を開始する決断に踏み切りました。
1日のうち8割が詐欺の場合も
いざサービスを始めてみるとかなり注目され、当初、事業は順調に推移するかに見えました。サービス開始後の2日間は、買い取り総額が連続で100万円以上になり、社内も盛り上がりました。
ただ、すぐに問題が発生しました。買い取ったはずのスマートフォンが弊社になかなか届かないのです。数字は申し上げられませんがかなりの量でした。1日の買い取り件数のうち、8割が詐欺だったという日もありました。
買い取りの際には、一般的な中古品業者と同じように、身分証明書の提示を義務付け、買い取り商品の写真を送ってもらうルールにしていました。
それでも問題が発生しました。例えば、提出された証明資料がそもそもインターネットから流用した画像であったりしました。我々も審査の際に、提出されたのが流用されたものではないかチェックを強化しましたが、防ぎ切れませんでした。
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