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【社説】

教室にエアコン 子どもを猛暑から守れ

 猛暑のたびに熱中症の危険性がいわれる。命を守るための適切な室温調整は今や常識だ。だが、小中学校の教室のエアコン導入はまだ不十分で、自治体間の設置率の差も大きい。早急に改善したい。

 先月十七日、愛知県豊田市で、校外活動に参加した市立小学校一年生の男子児童が重い熱中症で死亡した。体調不良を訴え、学校に戻った男児が休息をとった教室にはエアコンはなかった。

 午前中だったが、市内の気温は既に三〇度を超えていた。

 この事故がきっかけになったといえよう。保護者や専門家から、学校の教室にエアコン設置を求める声が広まった。

 文部科学省の二〇一七年度の都道府県別調査では、全国の公立小中学校の普通教室のエアコン設置率は、平均で49・6%だった。

 北海道(0・3%)など涼しいとされる地域も含む値だが、実際に都道府県の格差は大きい。公立小中学校の設置者である市町村の設置率の差も同様だ。

 たとえば、男児の事故が起きた豊田市がある愛知県の設置率は全国平均を下回る35・7%。このうち当の豊田市の市立小中学校の設置率は、一部を除いてほぼ0%。

 愛知県に隣接する静岡県は相当低く7・9%。岐阜県は55・2%だが、“暑い町”としてよく知られ、今年も四〇度超えなど猛暑続きの多治見市は0%である。

 ただ豊田、多治見両市ともに、エアコン導入の方針や計画を今春までに既に決めている。

 設置率の高い自治体としては、たとえば東京都が99・9%。一〇年の猛暑を機に、国の補助金に上乗せして都が財政支援した。愛知県内でも名古屋市が一三~一五年度にかけ、全校に配備した。

 気象庁が今年七月の天候を「異常気象」と総括し、あえて地球温暖化にも触れ、高温傾向などは今後も増えると警鐘を鳴らす中、設置率が半分に満たない状況は何とか改善しなければなるまい。

 教育現場の一部にはなお、部活動中に過度に走らせるなど高温の危険性を甘く見るケースもあるようだ。「我慢は美徳」という精神論は、この異常な猛暑の前ではナンセンスと言うほかない。そんな空気が空調整備の障害になっているなら、あらためたい。

 文科省はエアコン設置費の三分の一を補助しているが、自治体から引き上げの要望もある。やはり格差解消を進めるには、補助率アップなど現行制度の見直しに踏み切ることも必要ではないか。

 

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